6月14日は「映倫発足の日」です。映倫とは、「映画倫理機構」の略。日本国内で劇場公開される映画作品の内容を審査し、レイティング設定を行う一般社団法人で、1949年の6月14日に設立されました。
さて、このように、映画の内容を審査し、年齢の制限を設ける団体は世界各国にもあるようですが、レイティングの基準は国によってだいぶ違うようです。
そこで、この時間は「世界の映画倫理事情」と題して、2つの国・街の番組通信員の方に、お話を伺います。
⚫︎南アフリカ・ケープタウン在住:相原純子さんです。
Q1 南アフリカで映画作品の内容を審査するのはどういう団体なのでしょうか?
A1 FPB(Film and Publication Board)という政府系の独立機関です。管轄範囲は映画、DVD、配信だけでなく、ゲーム、書籍、雑誌、デジタルプラットフォーム上のコンテンツまで幅広く網羅しています。
Q2 南アフリカの映画のレイティング、かなり厳しく分類されているとか?
A2 かつての国家による理不尽なアパルトヘイト、人種隔離政策を維持するために『思想検閲』が行われ、その反省から「表現の自由』をベースに据えつつも、歴史的な人種問題、社会的な暴力性、未成年の保護に対しては、かなり厳しく緻密で厳格なレイティングを行っています。たとえば・・・13/16/18:
これらが指定された映画は、その年齢未満の子どもが視聴することは法的に禁止されています。
PG(parental guidance:保護者による指導):7歳未満の子供には、必ず大人の同伴、指導が必要です。
Q3 年齢制限以外にも特徴があるそうですね?
A3 南アフリカのレイティングシステムは、世界的にみても『何が理由でその年齢制限になったのか』が極めて細かく可視化されているのが特徴です。年齢の数字の横にアルファベットが必ず併記されます。例えば、『16LVD』とレイティングされていたら、16歳未満禁止で、理由はLanguage=言葉の乱れ、Violence=暴力、Drugs=薬物描写があるためと正確に把握できるようになっています。
Q4 ハリウッド映画などの外国映画を含め、特定のシーンがカットされるなどのケースも多いのでしょうか?
A4 現在の南アフリカでは、特定のシーンを強制的にカットされるケースは昔に比べると大幅に減りました。基本的にはカットするのではなく、年齢制限を課すことで対処します。ただ、文化的・宗教的・人権的な観点から上映禁止や自主的なカットに発展した事例もあります。「The Wound」(2017年):南アフリカのコサ族に伝わる伝統的な成人儀礼とその中で生きる男性同士の同性愛を描いた南アフリカ国際共同制作映画です。公開直後、伝統文化の擁護派や保守団体から映画で描かれる儀式が国をはずかしめている、同性愛の描写が不適切だと猛烈な批判が起き、一般の映画館から排除、事実上の上映禁止状態にされました。
⚫︎インドネシア・ジャカルタ在住:ミュージシャンや俳優など幅広くご活躍の、加藤ひろあきさん
Q1 インドネシアで映画の内容を審査しているのはどんな団体なのでしょうか?
A1 インドネシアで映画倫理を審査しているのは「インドネシア映画検閲委員会(LSF)」という機関です。オランダ植民地時代に、前身となる機関が、植民地政府の利益に反する思想の普及を防ぎ、情報をコントロールする目的で設立されました。その後、政府から独立してからは、映画を「国民教育」の一部として捉え、管理する委員会として何度か形を変えながら現行の「LSF」になっています。
Q2 レイティングの年齢制限の区分はどうなっていますか?
A2 レイティングは4つの区分が定められています。少し抜粋すると・・・R13(Remaja 13+ / 13歳以上):子供から思春期への移行期に適した内容。危険な行為の模倣や、過度な交際描写は制限されます。D17(Dewasa 17+ / 17歳以上):17歳以上の大人向け。性や暴力の描写が、教育的かつプロポーショナル(過度ではない範囲)で含まれることがあります。
Q3 性的描写に関する規制が強いように感じますね?
A3 以前は性的描写などにはかなり厳しく、有名なところで言えば少し前になりますが2012年、「スポンジボブ」というアニメに出てくるサンディーというリスが擬人化されたキャラクターがいるのですが、そのサンディーがビキニを着ているシーンにモザイクがかかって大きな話題になりました(笑)日本のアニメだとドラえもんのしずかちゃん、ドラゴンボールのブルマ、ONE PIECEのナミなどはモザイクがかかるシーンがありました。現在はアニメに関してはその辺りの規制は理解が進んでいますが、映画などになるとレイティングに沿った形で細かく審査をされます。イスラム系の登場人物の恋愛ものですとキスシーンなどはまずないので、その辺りは特徴としてあるかなと思います。
Q4 国民のおよそ9割がムスリムのインドネシア、宗教に関する内容で、いわゆる洋画、ハリウッド作品に対して、カットや公開が禁止になったりしたケースはあるのでしょうか?
A4 2014年、「ノアの箱舟」について描かれたラッセル・クロウ主演のハリウッド映画「NOAH 約束の舟」は公開禁止になりました。イスラム教において「預言者」とされる人物の姿を直接描いていること、またストーリーが宗教的な教えから逸脱しているとして、LSFは国内での上映を一切認めませんでした。インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱える国でもあるため、一神教の教えや信仰心、預言者の描き方に対して非常に厳格な基準があります。この映画は同じようにマレーシアや中東諸国でも公開禁止となっていました。
Q5 インドネシアで俳優としても活動する加藤さんが感じるインドネシアの映画倫理事情は?
A5 映画館で公開される映画に関してはインドネシア映画検閲委員会がしっかりと審査を行っていますが、最近では動画配信サービスそれぞれのプラットフォーム内でオリジナル作品が公開されたりしており、その部分では特に性的描写や暴力シーンにおいて映画よりも規制がかなり甘めに設定されている印象を受けます。映画館のように公の場で公開されるものではなく、あくまで個人的に楽しむものだという点とそれぞれのプラットフォーム内で制作されて、公開されているものということで映画ほど厳しく取り締まれないという事情もあります。僕も実際に性的描写や暴力シーンで際どいものを演じたことがあるので、撮影しながら「これ、大丈夫なのか?!」と思ったりしていました!