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3月25日は「散歩にゴーの日」でした。

日本の生活用品メーカーが、高齢者の転倒時のケガ防止ガードルのPRを目的に制定した記念日だそうです。

ところで、日本には、"おさんぽ"で街を巡るテレビ番組が数多くありますよね。街を歩いて観光スポットや気になるお店、グルメなどを紹介したり、地形や歴史をひも解いたり、街の人と触れ合ったり、ミッションをクリアしていくような、ゲーム性を含んだ番組も多い印象です。

そんな おさんぽ番組、海外にもあるんでしょうか・・・?

そこで、この時間は「世界のおさんぽ番組事情」と題して、2つのの番組通信員の方にお話を伺います。

⚫︎アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん

Q1  アメリカにも日本のような「おさんぽ番組」ありますか?

A1  地上波やケーブルの一般的な番組スケジュール表の中では、「おさんぽ番組」の存在感は、日本ほどありません。理由は、アメリカが極端な車社会で、旅行先でもレンタカー利用が主流。さんぽ(ウォーキング)で街や自然を堪能する習慣が薄いからだと思います。

Q2  アメリカのおさんぽ番組の特徴というと?

A2  一言で言うと「インフォーマティブ」つまり情報満載型です。アメリカのウォーク好きユーザーの特徴として中高年層、比較的富裕層、知識欲旺盛な教育水準の高い層、という3ポイントがあげられます。日本のおさんぽ番組ように、あの手この手を駆使して、あまねく広い層の旅行関心を引きだそうと言う姿勢は、あまり見受けられません。そもそも、アメリカ人が旅行体験で大切にするのは「文化」「歴史」のジャンルが一番大きいです。(2019年じゃらん調査)。なので、おさんぽ番組でも、訪問地の歴史や生活文化の見どころをシェアするという「教育的」要素が非常に重要視されています。必然的にホスト(案内人)にも、タレント性やエンタメ力よりも知識教養経験のほうが求められます。

Q3  では、そんなアメリカで人気の おさんぽ番組 具体的に教えてもらえますか?

A3  例えば、PBS(公共放送)で放送・配信されている 「Curious Traveler」という人気番組があります。 2015年に放送開始して、現在シーズン7。今年の5月からシーズン8に突入。すでに100近いエピソードがあります。

案内人のクリスティーン・ヴァン・ブロックランドは、大学でジャーナリズムの本流を学んだのち、朝のニュース番組の司会を経て現職を掴んだ業界の成功者です。報道の鉄則である5Wと1Hを徹底的に貫く「おさんぽ」を紹介しています。

ただ、訪問先は、ヨーロッパが中心。パリやウィーン、スイスアルプスなどカレンダー写真で定番の、国や街が多いですが、誰もが知った気になっている歴史的事実や建築物、アートの意味を純粋な疑問に立ち返って、子供のようなCuriosity=好奇心で問い直す、学び直す、という姿勢が番組の根幹です。

Q4  ほかに、人気の おさんぽ番組はありますか?

A4  特にネット世代にウケているのが。旅行中のスマホ活用を推奨する「Jefferson Graham's Photowalks TV」です。Youtube他で配信展開。表題のジェファーソン・グレアムは、カリフォルニア在住のテクノロジー専門ジャーナリストで、ITや最先端技術の報道では、各メディアで実績があります。旅行、IT、スマホ写真の3要素を組み合わせたこの番組は、旅行先の文化・歴史への興味はそれほどない視聴者に、自撮りを含めた「映えスポット」、映画ドラマの「聖地巡礼」、現地で人気の地元「B級グルメ」、ジモチーが語る「生活感」、地元特有のストリートな「アートやファッション」、ヒップな「再開発エリア」、スマホ撮影の「隠し技」などを街歩きしながら、披露してくれます。

Q5  その「Jefferson Graham's Photowalks TV」では、 たとえば、どんな場所を紹介しているのでしょうか?

A5  訪問地は、ハリウッドからNY、ノースダコタの田舎町、時には京都など日本の都市、ヨーロッパ各地にまで及び、いずれもお金を使わない楽しみ方が基本にあります。

ジェファーソンさんは、誰とも楽しく語り合える気さくな人柄に加えて、カメラやハイテクの膨大な知識が観ているものに安心感を与えます。さらに彼はギター演奏や作曲もする音楽の才能まで持ち合わせています。

おさんぽ中にストリートピアノで即興演奏したり、案内役の地元女子 (全般的に登場ジモチーは女子が多い)に軽い色目を使ったりで、彼のタレント性はわりと目立ちます。本来は、間違いなくオタクですが、衒学や独りよがりな弁舌によらないため、ネットやSNSの(オタク系)配信番組よりはテレビっぽい親しみやすさがある。しかも撮影と編集が伝統的なテレビの旅番組のセオリー通りなので、大変見やすいです。

⚫︎台湾 / 片倉 佳史さん

Q1  台湾でも日本のような「おさんぽ番組」たくさん放送されていますか?

A1  はい、あります。たくさんあるのですが、台湾はケーブルテレビがとても発達しており、どの家庭も100近いチャンネルを楽しんでいるので、いろいろな局がいろいろな番組を制作している関係で、特別に知られている番組があるわけではなく、 おさんぽ番組ばかりが目立つという印象も薄いです。

Q2  台湾のおさんぽ番組の特徴というと?

A2  日本と同様、台湾の場合もタレントがその土地を訪ねていろいろなものを体験するというタイプが多いのですが、人物に寄った内容が多いというのが印象的です。

たとえば、その土地の著名人物や個性的な人物を取り上げ、そこから土地の魅力を深堀りしていくことが多いです。

一方、食文化への関心が高いので、ほぼ間違いなく、名物料理やご当地グルメ、デザートなどが取り上げられます。私たちもこういった番組を見ながら美味しいお店を探したり、最近の流行を追ったりしています。

Q3  日本のおさんぽ番組にも近い印象がありますね。ただ、日本とはちょっと違う部分もあるんですって?

A3  一つだけ、日本と明らかに異なる点があります。それはこういった番組で紹介されるお店は、住所や電話番号などが出てきません。住所や電話番号どころか、お店の名前すら出てきません。その理由は台湾の法律上、メディアが特定の業者や店舗を紹介してはいけないという決まりがあるためです。これは結構厳しく、視聴者は番組を見て関心を持つと、すぐにスマホやパソコンでそのお店がどこなのかを探し始めます。もちろん、番組制作の側もわかっているので、探しやすいように、引いたカットを多めに使ったり、著名な建物などを入れたりして、番組内にヒントを盛り込みます。私は最初、これを不思議な感じに思っていましたが、慣れてくると、結構楽しくなります。

Q4  そこは日本の公共放送のような感覚でしょうか。そのほか、台湾の"おさんぽ番組"の特徴はありますか?

A4  もう一つ、台湾のおさんぽ番組や旅行番組の特色としては、お酒関係の素材がほとんど出てこないというものがあります。これも法律上の規制があり、お酒関連の商品を取り上げる場合、必ず画面に「飲みすぎると健康を害するので注意してください」という警告文を入れなければなりません。しかも黒字に白文字で目立つように入れなければならないので、番組の中ではアルコールに関する素材がほとんど見られないという状況になります。