令和7年分の確定申告の提出期間は、3日後の3月16日まで。期限が迫っています。
日本で確定申告が必要な方は、おもに個人事業主やフリーランスの方です。一方、会社員などの給与所得者の場合、通常は年末調整によってその年の所得税の精算が行われます。
ただし、年収が2000万円を超える方や、副業など給与以外の所得が20万円を超える場合などは、確定申告が必要になります。
さて、この確定申告、海外では対象となる範囲や仕組みが大きく違います。そこで、この時間は「世界の確定申告事情」と題して、2つの国・街の番組通信員の方に、お話を伺います。
⚫︎エストニアの首都・タリンにお住いの橋村 明実さん
Q1 「エストニアでは確定申告の必要がない」、と言われているようですが、どういうことでしょう?!
A1 確定申告が全く必要ないかというと少し語弊があって、実際はエストニアでも収入に関して申告をすること自体は必要なのですが、そこで日本の確定申告のような「複雑な手続きをする必要がない」システムがエストニアにはある、ということになります。
Q2 では、どのようなシステムなのでしょうか?
A2 具体的には、国民一人一人と長期滞在している外国人はエストニアでの個人番号を持つことができて、その個人番号に紐づいて会社からのお給料や支払った税金の金額などが公的情報として政府のデータベースに蓄積されています。そのことによって、日本の確定申告の場合に個人が 計算しなければならない所得の合計や保険やふるさと納税といった控除の対象となるものなどが、エストニアではデータベース上に自動で収集されて計算まで自動でしてくれるので、確定申告のための個人の負担がほとんどないようになっています。
ちなみに、2002年からエストニア全土でのオンラインでの確定申告システムが始まったとのことです。
Q3 なるほど、エストニアは「確定申告にまつわる複雑な作業がない」、ということですね。では、個人では何をすればいいのでしょうか?
A3 個人がやることは、自分の個人番号から確定申告用のサイトにログインして、そこにすでに計算されている収入や納税額などが表示されるので、それを「承認しました」と最終的な確定申告としてボタンをポチポチ押していくだけになります。私も前年度分の確定申告をちょうど最近行いましたが、かかる時間は数分で本当に簡単でした。
Q4 素晴らしいシステムですね!でも、国に預金残高まで把握されている、ということで、当初、国民のみなさんの反発などはなかったのでしょうか?
A4 日本のマイナンバー制度導入の際にあった懸念のような大きな心配はエストニアの場合は少なかったみたいです。理由としては、歴史的に1991年に旧ソ連の支配下から独立をして、エストニアの政府というものは、国民を監視するためものではなく、エストニアが一つの国家として国民の自由を確立するためのものであるという認識が国民にも強くあったから、というのが大きいようです。
Q5 このシステムのせいで、エストニアは「税理士や会計士がいなくなってしまった国」なんて言われているそうですが、実際のところはどうなんでしょうか?
A5 これはキャッチーな見出しとしてよく使われているみたいなのですが、正直なところ少し言い過ぎで、税理士や会計士の職業は今でもしっかり存在しています。
ただ、「確定申告代行」のような業務がオンラインシステムのおかげで必要なくなったため、日本で個人としてよくお世話になる税理士さんや会計士さんの業務はエストニアでは ほとんどないみたい、というのが実際です。
税理士・会計士さんの業務は確定申告に関わることだけではないので、例えば、エストニアで会社を設立した場合など、会社として行う必要がある会計や納税に関わる業務のために企業は税理士・会計士さんをしっかり雇っています。
⚫︎アメリカ・シカゴ在住 / 川平謙慈さん
Q1 まず、アメリカの確定申告に関して、日本と大きく違う点がありますよね?
A1 はい。一番の違いは、アメリカでは、どんな人であっても、一定以上の収入がある人は「全員」が自分で申告(Tax Return)を連邦政府に行う義務があります。
なんと、これは米国市民であれば、全世界どこに住んでいても申告義務があります。州のレベルではちょっと事情が違い、41の州とワシントンD.C.で所得の申告義務があります。ほかの州は、所得税では無く、ほかの形で税収をまかなっています。日本では会社員の場合、年末調整で会社が計算してくれますが、アメリカでは「自分のお金と税金は自分で管理する」というスタンスが徹底されています。 ですから、会社に対して「月いくら源泉徴収をしてください」という申請をすることになっています。
Q2 たとえばアメリカ国内の企業にお勤めの方の場合、税理士さんや公認会計士さんにお願いせず、自分で申告される方が多いのでしょうか?
A2 圧倒的にオンライン申告(e-file)が主流です。「今や、9割以上(約93%)の人がオンラインで申告を済ませています。紙の申告書を郵送する人は今や10人に1人もいません。さらにそのオンライン申告のうち半分近く(約44%)の人は、会計士に頼まず自分で専用のソフトを使って、自宅のパソコンやスマホからポチッと申告を完了させているんです。ただ、複雑なケースや高所得者の場合は、CPA(公認会計士)や日本の税理士に近い「登録エージェント」に依頼する人も多いですね。
Q3 でも、申告する方の環境や属性によって税率が変わってくるなど、かなり複雑なんですよね?
A3 単に「いくら稼いだか」だけでなく、「居住ステータス(居住者・非居住者)」や「申告区分(独身・夫婦合算・世帯主など)」によって、適用される税率や控除額が変わります。特に共働き夫婦の場合、「一緒に申告するか、別々にするか」で納税額が変わる可能性があるため、パズルを解くような複雑さがあります。この多様な背景に対応するために、申告書の種類も非常に細かく分かれています。
Q4 申告する項目や控除の項目などで、大きな特徴はありますか?
A4 アメリカの税制は「政策的な意図」が反映されていて、色んな控除の項目があります。まず代表的なのが「住宅ローン利息控除」です。日本では「ローンの残高」に応じて税金が安くなりますが、アメリカでは「払った利息」そのものを所得から差し引けます。つまり、マイホームを持つことを国が強力にバックアップしています。また、慈善活動や特定の非営利団体への貢献も控除の対象になります。寄付金はもちろんですが、ボランティア活動のために 自分の車を出した場合のガソリン代(走行距離)なども控除出来ます 。
Q5 ほかにも特徴的な控除の項目はありますか?
A5 今まさに熱いのが「EV(電気自動車)の税額控除」です。条件を満たす新車を買うと、なんと最大で7,500ドル(約110万円以上)も税金が直接安くなります。しかも、これまでは申告時期まで待つ必要がありましたが、今は「買ったその場で」ディーラーで値引きとして受け取れるようになり、普及を猛烈にプッシュしています。「こんなのありなの!」の代表例がギャンブルの負けです。驚かれるかもしれませんが、勝った金額を上限に、賭け事などで「負けた金額」を控除として申告できるんです 。