
あす、10月4日は「証券投資の日」です。10(とう)4(し)の語呂合わせで、1996年に「日本証券業協会」が制定した記念日です。
2022年、成年年齢が18歳に引き下げられ、金融トラブルのリスクが高まったことや、金融リテラシーの向上、そして将来にわたるライフプランの設計に金融知識が不可欠であること、など背景に、この年の4月から高校で金融教育が必修化されました。
授業では、収入と支出の管理、貯蓄・投資、保険の活用、ローンの仕組み、社会保障制度、経済の動きなど、金融リテラシーを幅広く学んでいるとのこと。
さて、金融教育、海外ではどうなっているのでしょうか?
●GDP=国内総生産が世界第1位の経済大国アメリカから、シカゴ在住 / 川平謙慈さんです。(実弟です!)
Q1 アメリカの金融教育は、いつ頃から充実してきたのでしょうか?
A1 かなり早い時期から金融リテラシー教育は始まった様です。 金融教育の後押し団体として、経済教育協議会 (Council for Economic Education) が1949年に設立されています。 この団体は、主に金融機関からの寄付金で運営されていて、小中高の教員と生徒向けに授業支援教材を提供するとともに、教育者向けの無料研修プログラム、ウェビナー、教育標準と評価ツール、そして教育活動の推進や啓発活動のための支援情報も提供しています。
Q2 金融リテラシーといっても、家計管理や金融トラブル回避といった「守り」から、株の投資や資産運用といったリスクをともなう「攻め」まで幅広いですが、金融教育が必修化されている州の高校では、どんな金融リテラシーを学んでいるのでしょうか?
A2 まずは基本を教える必要があるので、お金に対する意識と 行動の基本が主です。最初に支出と貯蓄に対する考え方、感情やマーケティングが行動に及ぼす影響、お金に関する価値観を教えます。
次に予算管理と支出です。内容は予算作成、支出の管理、必要経費と不要経費の区別、キャッシュフローです。『貯蓄と投資:貯蓄口座の種類、 投資商品(株式、債券、投資信託、退職年金など)、 複利計算の考え方も教えられています。
Q3 金融教育の中で、アメリカらしいプログラムなんてあるのでしょうか?
A3 アメリカの場合、国民全員が確定申告をする義務があるので、税金に関する内容もあります。例えば各種税の種類、所得税や源泉所得税などの申告方法です。また、クレジットカードでの支払いが一般的な国なので、その正しい使い方も重要は項目の一つです。使い方に気を付けないとあっという間に残高が大変なことになりますから。
Q4そのほか、授業外でも金融について学ぶ活動があるとか?
A4 ごく一部ですが、高校でのクラブ活動として投資クラブがあります。生徒たちは株式、債券、投資信託、ETFといった金融商品に加え、インデックスファンド等について学びます。その活動は、教師が担当する場合もあれば、卒業生で銀行員や金融アドバイザーといった専門家がボランティアとして指導を行う場合もあります。実際のお金を投資することはまれで、シミュレーションというか仮想投資として計算上の投資効果を狙います。
競争の大会もあり、ペンシルバニア大学のビジネススクールが毎年Global High School Investment Competitionを開催しています。去年は66か国から1818チームの参加があったそうです。
⚫︎アジアを代表する国際金融センター、シンガポールです!「現地在住日本人ライターが案内する 大人のシンガポール旅」というグルメを中心としたガイドブックを出版されている芳野 郷子さんです。
Q1 シンガポールの金融教育、いつ頃から充実してきた印象でしょうか?
A1 金融のハブとして発展してきたシンガポールですが、公的な金融教育はそんなに早い時期から始まったわけではなく、「Moneysense」というナショナル金融教育プログラムが設立された2003年ごろから、少しずつ充実してきたと言えます。このプログラムは金融知識の普及と啓発が中心。庶民が自己資金を管理して自分で運用の判断ができるようにすることが目的。
Q2 シンガポールの学校では金融教育は必修化されているのでしょうか?
A2 ポリテクニックという高等専門学校とITEという職業訓練学校の1年目で、金融教育モジュールが必修となったのは2019年からです。日本の高校2~3年生くらいの年齢で習うわけです。小学校、中学校などでは必修科目ではなく、社会学などの中に金融リテラシーの概念の学習を取り入れています。
Q3 では、シンガポールの金融教育では、具体的にどんなことを学んでいるのでしょうか?
A3 消費の優先順位を考えさせる、とか将来の計画を立てて節約し貯蓄する重要性を考えさせる、また支払方法の理解、つまりクレジットカードの使い方やオンライン決済の仕組みを学習させています。さらに割引やセール、宣伝のトリックなど消費者としての必要な知識を教えているそうです。
さらに利子の概念、年金制度などの包括的な制度についての学習。詐欺の手口、詐欺広告などのリスクについて。パスワードの管理など実用的なことが多いです。また、シンガポールでも最近スキャム被害、投資詐欺が社会問題となっていて、若いうちから意識向上をはかろうとする動きがあります。学校教育だけでなく、地域全体で、単なる知識にとどまらず、どのように判断して行動するか、というところに重きを置いています。
Q4 そのほか、金融教育の中で、シンガポールらしいプログラムなんてあるのでしょうか?
A4 シンガポール人、永住権保持者などが持っているCPF(中央積立基金)についての学習が挙げられます。CPFそのものがシンガポール独自のシステムで、お給料から天引きされる分と雇用者が入金するものを合わせて貯めてゆく、銀行口座のようなものですが、キャッシュで引き出すことは基本的にはできないんです。教育ローン、家のローン、医療費、年金などに使うことはできます。その仕組みとよりよい使い方などを学ばせています。
Q5 芳野さんは、シンガポールの人々のお金に対する考えなど、どうご覧になっていますか?
A4 もともとお金の話しを子供にもよく話すお国柄ですから、子供たちもお金や金融のことに早くから目覚めて興味を持っている印象があります。お金に興味を持てば、自然と金融に関心が向いていくのではないでしょうか?