先日、こんなニュースが話題になりました。「全国の公立中学校で水泳の実技授業を廃止する動きが広がりつつある」というもの・・・。文部科学省の「学習指導要領」では、小学1年から中学2年まで水泳が必修となっていますが、プールの老朽化や指導教員の負担、熱中症への警戒などにより、水泳の実技を座学に切り替える動きが進んでいるんだとか。

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また、コロナ禍で水泳の実技授業が長期にわたって中止になったことも影響し、泳げない子供が増加している、というデータもあるようです。さて、海外では水泳の授業って、どうなっているのでしょうか?また、習い事のスイミングについても気になります。

今日は「世界の水泳事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方に伺います。

⚫︎ハンガリー・ブダペスト在住 / 梅村 欣世子さん

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Q1  世界初の五輪水泳競技での金メダルは、ハンガリーのアルフレード・ハヨシュが獲得しているんですね。2種目、100m自由形と1200m自由形!(1896年)そして水球男子の世界ランクが2位の強豪国!内陸国でありながら水泳や水球がさかんな大きな理由は何でしょうか?

A1  温泉があるからなのか、温水プールが多数あり、水泳は一年を通して気軽に楽しめるスポーツだからだと思います。

Q2  学校にはプールがあるのでしょうか?

A2  日本とは違い、原則的に学校にはプールはありません。地区ごとに公立のプールがあり(屋内プール)、体育の授業の一環としてプールに行きます。学校によっては全員が水泳の授業を受ける場合もありますが、たいていは希望者だけが行きます。(水泳以外のスポーツいくつかの中から選択)

Q3  学校の授業とは別に、スイミングスクールに通う子どもも多いのでしょうか?

A3  はっきりした統計はないのですが、小さいお子さん(幼稚園から小学校低学年)の多くがスイミングスクールに通っている印象があります。泳げるように、というよりは基礎体力をつけさせるために、全身運動の水泳を選ぶ親御さんが多いように思います。

Q4 ハンガリーのスイミングスクールの特徴、日本との違いなどありますか?

A4  プールは屋内が多いです。ハンガリーでは、有名な水泳選手が引退後指導者になり、自分の名前を付けたスイミングスクールを開く例が多いです。よく〇〇(有名な選手の名前)スイミングスクールと大きく書いてある送迎バスを見かけます。私がたまに行く近所のプール(公立)も、時間帯によっては2~3のレーンがスイミングスクール専用に区切られています。

Q5  スイミングスクールの授業料はどのくらいでしょうか?

A5  スイミングスクールはだいたい月に日本円で1万円程度です。送迎付きとか金メダリストの指導となるともう少し高くなるようです。

Q6  水球を習うスクールもあるのでしょうか?

A6  家の近所のプールでスイミングスクールのレッスンの時間帯に重なったことが何度かあります。最初のうちはコースを泳いで、指導者が腕や足の動かし方を注意していました。その後、二組に分かれてプールにボールを使い始めました。多分小学校低学年か中学年だと思いますが、ボールをパスしたり、強く投げてゴールに入れる練習をしたり、こんな小さい時から水球の練習をしているのか!さすが水球王国!と驚きました。

⚫︎メルボルン在住 / 小林純子さん

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水泳の強豪国・オーストラリアです。五輪での水泳金メダル数は76個でアメリカに次ぐ世界2位です!

2006年~メルボルンに滞在の際07年の世界水泳の会場を訪れたことがあり、その施設が市民に解放されて、お世話になった歯科医が大学時代に日体大との遠征試合経験者でオーバー40の水球チームに所属。そのチームの練習試合見学に行ったことあり。練習後には女子の水球チームの練習がすぐ始まって市民に水泳が定着していたと実感しました。

Q1 オーストラリアが水泳の強豪国である背景とは・・・?

A1 その昔からサーフィンや水泳などのビーチ文化が盛んであったことや、ライフセービング(競技としての?)の発祥地でもあったことから、オーストラリアが水泳の強豪国になったことは偶然ではない。また現在のクロール(自由形)は元々オーストラリアで生まれた泳法で、オーストラリアン・クロールとも呼ばれていたことも、いかにオーストラリアが水泳の強豪国であるかを物語っているのではないでしょうか?

ちなみに、The Royal Life Saving Society (RLSS), founded in 1891がイギリスでの宦官などでの人命/難救助発祥のようです。

Q2 オーストラリアの学校にはプールはありますか?

A2 オーストラリアでは私立の幼稚園から高校まであるような一貫校の学校以外、プールがある学校はほとんどありません。そこで、多くの学校では市や町が運営する公共プールで水泳の授業を行うのがほとんどです。

Q3 公共のプールは屋外でしょうか?皮膚がん発生率が高いと言われるオーストラリア、紫外線対策が気になります。

A3 公共プールは、地方の市や町においては屋外プールである場合が殆どです。メルボルン市内など都市部にある公共プールの場合、小さな施設では屋内プールないしは屋外プールのどちらかしかないのが殆どですが、比較的大きな施設の場合、屋内と屋外のプールの両方を有している場合が多いです。その場合には屋内プールは25メートルでレーン数も少なめで、屋外プールは50メートルで10レーンあるのが殆どです。また、公共プールでは日焼け止めを無料で提供する施設もありますが、キオスクなど有料で購入することしか出来ない施設もあります。施設によってまちまちです。

Q4 日本のプールでは日焼け止め禁止のところもあるようですが、オーストラリアは大丈夫なんですね。さて、水泳大国オーストラリア、学校の授業とは別に、スイミングスクールに通うお子さんも多いんでしょうね。

A4 オーストラリアでは0歳から14歳までの子供たちが最も参加しているスポーツは水泳です。水泳が上手になると私立の学校ないしは地域の水泳クラブのスクオッドに所属するよう勧められ、早朝からプールで練習するようになります。定期的な大会出場で好成績を収めると州の水泳チームに所属するようになり、全国レベルの大会や国レベルの大会にも出られるようになる学生も出てきます。

Q5 スイミングのレッスン料はどのくらいでしょうか?

A5 水泳のレッスン代は他のスポーツ、特にサッカーなど他のスポーツに比べるとレッスン料金が比較的に安いと言われています。レッスン代は1回につき20ドルから25ドルほど(日本円で2000~2400円)ですが、1週間分のプール使用権がついてくるのが普通です。

Q6そのほか、オーストラリアならではの水泳事情はありますか?

A6 私立の学校では年に一度のスイミング・カーニバルと呼ばれるスイミング大会を行う学校が多いです。昔は公立の学校を含む多くの学校でスイミング・カーニバルが開かれていたようですが、最近はその数が減っているとのことです。スイミング・カーニバルを行う施設の貸切コストの上昇や、学生および保護者らの水泳への興味の減退が原因と言われています。カーニバルへの出場は強制ではないため、選手でない限りカーニバルを休む学生が多いため、実施しない学校が増えてきているとのことです。