今週、韓国のアイドルグループBTSは、3年ぶりに7人での生配信をおこない、来年の春にニューアルバムをリリース、そして大規模なワールドツアーを実施することを発表しました。グッドニュースが舞い込んで、ARMYのみなさんは大変お喜びでしょう!

BTSはメンバー全員が兵役義務に就いていたのですが、昨年の夏以降、順次除隊が続き、最後となったSUGAさんも、6月に兵役義務を終えていました。韓国のように「徴兵制」を導入している国は、世界で60か国以上もあります。そして、それぞれに対象となる年齢や性別、従事する仕事内容も異なるようです。

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そこで、この時間は「世界の兵役事情」と題して、2つの国・街の番組通信員の方にお話を伺います。

⚫︎スウェーデン・マルメ在住 / 丹呉 由紀子さん

Q1  2010年、スウェーデンは、もともとあった徴兵制を廃止しましたが、 20017年に再開。しかも、女性も対象になりました。この動き、国民のみなさんはどう受け入れているのでしょうか?

A1  はい、この再開の背景には、ウクライナ危機やロシアの軍事的な拡張に対する懸念が影響したと言われています。世論調査では、徴兵制の再導入に対して50~60%程の国民が支持を示す結果が出ており、これは安全保障への不安が背景にあります。 「全員が国の防衛に責任を持つべき」という市民意識が強く、特にスウェーデン社会は平等主義意識が強いため、女性も対象とする点はむしろ公平と受け止められている傾向があります。 否定的な声としては、「キャリアの中断」「自由の制限」、また、「選抜方式」であるため、選ばれる・選ばれないことに対する不公平感やストレスを訴える人もいるようです。

Q2 では現行の徴兵制の期間やおもな活動内容について教えてください。

A2  対象年齢は、18歳から45歳のスウェーデンの国籍をもっている者、 基礎訓練徴兵期間は6ヶ月から15ヶ月で、期間は配置される分野や部署によって異なります。主な活動内容は、基本的な軍事訓練、銃の使い方や野外でのサバイバル技術を学ぶ、戦術的な動きや偵察、歩兵としての戦い方の習得、戦場での応急手当や医療技術を学ぶなど、専門訓練としては、通信兵や工兵、軍事警察、衛生兵などの専門技術を学ぶことや、最新の装備やITシステムの使い方を習得することなどが挙げられます。

また、再訓練や招集訓練が、数年に一回程度、数日から数週間、軍事スキルの維持と部隊の即応性を保つためにあるようです。

Q4 では、学校や職場など、兵役でお休みする人への対応は、整っているのでしょうか?

A4  法的、制度的に整っているようです。学生の場合、入隊の時期を調整することが可能だったり、兵役後、学業に復帰する場合は、再入学や単位取得のためのサポートが提供されるようです。職場では、兵役終了後には基本的に元の職場に復帰できる権利があります。

Q6  長年スウェーデン暮らす丹呉さんは、スウェーデンの兵役、どうご覧になっていますか?

A6  今現在のところ、徴兵制度によって、直接戦争に送られるという意識は少なく、 兵役は「国を守るための市民としての責任」として、教育の一環として捉えられているようです。実際、徴兵を終えた若者たち(男性も女性も)は、大規模な危機への対応と生存方法を習得し、規律や集団生活を学び、次のステップである大学生活や就職への良い経験になっていることが多いと感じます。

⚫︎タイ・バンコク在住 / 木下 麻衣子さん

Q1 タイでは、男性のみに徴兵制度があるそうですが、国民のみなさんは兵役についてどう受け止めているのでしょうか?

A1 タイでは徴兵制度は「当たり前」として存在していますが、受け止め方は人によって異なります。伝統、義務として受け入れている人もいれば、回避したいと思っている人(進学・就職などを優先)もいます。特に都心部では「時間の無駄」と感じる若者も多く、徴兵回避の方法を探す人も少なくありません。一方で、農村部では軍隊に入ることで安定した生活を得る手段とする人もいます。

Q2 では、タイで兵役の対象となる年齢や期間、おもな活動内容について教えてください。

A2 対象年齢:原則として21歳のタイ人男性(登録は18歳から)期間については基本的におよそ2年間自ら志願した場合や学歴等により、6か月~1年程度で済む場合もあるようです。

主な活動内容については

  • 基礎軍事訓練
  • 軍施設の警備
  • 一部は国王関連の行事や災害救助に参加することもあるそうです

Q3 そして、タイでは、くじ引きで兵役が決まるんですって?!

A3 その通りです!徴兵対象者はまず身体検査を受けて、健康であると判断された者の中で本人による「くじ引き」によって徴兵が決まります。赤いくじを引くと「兵役決定」、黒いくじを引くと「免除」。人数が足りていれば赤いくじ自体が少なくなるため、毎年の運要素も強いです。徴兵検査の日はお祭りのような盛り上がりです。毎年の徴兵検査は、地域によっては大勢の人が見に来るイベントのような雰囲気になります。地元メディアも注目し、有名人やトランスジェンダー女性の登場がニュースになることも多いです。ちなみに、海外留学中や病気や入院中、災害や葬儀などの場合は翌年に延期となることがあるようです。

Q4 それは、悲喜こもごもあるでしょうね・・・たとえば有名人とかスポーツ選手とか、くじを引かずに兵役が免除されたりすることはあるのでしょうか?

A4 大学に通っている学生は、在学中は猶予される制度があります。また、予備役訓練(ROTC)を高校・大学で受けた者は徴兵を免除されます。有名人やスポーツ選手も、上記の制度を利用して兵役を回避・免除するケースが多いです。ただし、著名人であっても何の対策もせずに21歳を迎えれば、くじ引き対象となるみたいですね。

Q5 会社勤めの場合、休職や復職の制度などは整備されているのでしょうか?

A5 兵役は国家の義務であり、雇用主はこれを理由に解雇したり不利益を与えることは法律で禁じられています。復職の権利も保障されているそうです。

Q6正当な理由なく、兵役を免れることは難しいのですね?

A6 徴兵逃れは罰則があるようです。正当な理由なく逃れると罰金や禁錮刑の可能性、あとは将来的に公務員になれない、パスポートが発行できないなどの制限を受けることもあるみたいです。