6月18日は「海外移住の日」でした。1908年=明治41年のこの日、本格的な海外移住の第一陣、781人を乗せた船が、ブラジルのサントス港に到着したことにちなんで、「国際協力機構JICA」が、1966年に制定した記念日です。

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外務省が発表している「海外在留邦人数調査統計」のデータによると、2024年10月時点で海外に在留している日本人は129万3097人。地域別の割合は、「北米」が全体の37.9%を占めトップ、次いで、「アジア」(26.9%)、「西ヨーロッパ」(16.7%)の順となっていて、この3地域が全体の8割強を占めています。

国によって違うと思いますが、移住のためのビザの種類や条件など、どのようなハードルがあるのでしょうか?そこで、この時間は「海外移住事情」と題して、2つの国・街の番組通信員の方にお話を伺いました。

⚫︎2024年10月時点の在留邦人数が1万656人、国別ランキング20位のオランダです。アイントホーフェン在住 / 山本 直子さん

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Q1  オランダといえば、江戸時代から日本との交流がありますが、やはり、移住のハードルは低い印象でしょうか?また、その歴史の影響で他の国々と違った日本人の移住や滞在の仕組みがあるようですね?

A1  はい、オランダは日本人が起業して移住するのに非常にハードルが低い国と言えます。400年前に結ばれて、1912年に改定された 「日蘭通商航海条約」により、日本人には優遇措置が取られているためです。  また、2020年の法改正により、起業家の家族も追加の許可なしに就労できるようになり、このビザによる移住メリットが増えました。オランダにいる日本人に聞くと、ほかのヨーロッパの国との比較で「オランダはビザが取りやすいから」という理由で移住してきた方が多いです。オランダは治安が比較的よく、国民の9割以上が英語を話せるということもよく選ばれる理由に上がります。

Q2  ほかにはどんなビザの種類があるのでしょうか?

A2  個人事業主ビザ以外にも、さまざまな労働ビザ (知的労働者、スタートアップ従業員ビザ、企業内派遣ビザ、特派員ビザ) があります。あとは、学生ビザ、オランダ居住者と暮らすためのパートナービザ、家族ビザ、ワーキングホリデービザもあります。オランダの家庭にホームステイしながら子供の世話や家事のお手伝いをする 「オーペア」ビザもあります。

Q3  中でも、どういった目的で移住される方が多い印象でしょうか?

A3  私が20年前にオランダに来た当初は、オランダ在住の日本人はオランダ人と結婚している人か、留学生か、企業から数年間派遣された駐在員か...といったところだったのですが、ここ8年ぐらいは「個人事業主ビザ」でこちらにくる方がグッと増えている印象です。あと、2020年からワーキングホリデーのビザも出るようになったので、ワーホリで1年間滞在する若い方も増えています。個人事業主ビザで来られる方は、例えばIT関係の仕事を日本から請け負いながらオランダに住んでいる方とか、こちらでラーメン屋とかお弁当屋さんとか、日本食のお店を開かれる方とか、教育・移住関連のコンサルティング的なことをされている方など、いろいろです。

Q4 ビザ以外で、オランダに移住する際のハードルというと・・・?

A4  移住のハードルは、住宅探しです。最近はオランダに移住する外国人が非常に増えていて、アムステルダムやユトレヒト、アイントホーフェンといった都市では住宅が非常に不足しています。家賃も高くて、アムステルダムの中心部だと40~50平米ぐらいのスタジオタイプの アパートで1500~2000ユーロ(日本円でおよそ24万~32万円)といったところです。留学生はシェアハウスなどに住んでいますが、お部屋探しに苦労されていて、中には部屋が見つからなかったから留学を取り消して帰ってしまう人などもいるようです。家賃以外の物価上昇もはげしいので、こちらで生活を続けるための収入を確保するのも大変です。

⚫︎2024年10月時点の在留邦人数が1万2648人で国別ランキング17位のフィリピンです。マニラ在住 / 澤田 公伸さん

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Q1 日本からフィリピンに移住しているみなさん、どういう方が多い印象でしょうか?

A1 やはり製造業や工業、サービス業などの日系企業で働く日本人駐在員やその帯同家族の皆さんが多いという印象を受けます。あと、フィリピン人と結婚して移住している日本人の方や退職者ビザを取得して退職生活を送っている方が多いでしょうか。

Q2 移住にまつわるビザ、フィリピンではどんな種類がありますか??

A2 大きく分けて、学生ビザ、就労ビザ、退職者ビザ、特別投資家ビザ、結婚ビザなどがあります。

Q3 中でも永住ビザの取得は難しいのでしょうか?

A3 フィリピンではどのビザを取得するにも必要書類の数が結構多く、また申請手続きに通常、時間がかかるので結構大変です。永住ビザなどなおさら時間がかかります。ただ、50歳以上の外国人が取得できる永住ビザの一種である退職者ビザ(特別居住退職者ビザ)は2万ドルのドル建て定期預金を払い込むなどすれば短期間で、比較的簡単に取得できるビザとして知られています。

Q4 留学や教育のために移住する人も多いでしょうか?

A4 はい、英語留学に来られる若い方も最近特に増えています。あと、フィリピンの大学で勉強するために留学される日本人学生やこちらの大学で教えておられる日本人の教員、そして日本語を勉強するフィリピンの若い学生や日本で働くフィリピン人が大変な勢いで増えていますので、彼らに日本語を教える日本語教師の数もかなり増えています。

Q5ビザ以外に移住にあたってのハードルというと、どういうことが挙げられますか?

A5 移住にあたってのハードルとしてはまずフィリピンではいろんな手続きや苦情処理などが日本の基準では考えられないほど時間がかかり、様々な問題が生じるのが普通ですので、普段から忍耐力がいることです。あと、やはり治安が日本より悪いということがありますのであまり目立たないよう普段から質素な生活を心がける必要があるかと思います。そして、医療水準が日本に比べるとどうしても低いですので、体調管理も自分で常に気を付けて、大きな病気やケガをしないよう心掛けることが必要かと思います。

でも、やはりフィリピンの人たちは皆さん大変人懐っこく、にこやかな笑顔で、賑やかに暮らしていますので、あまり疎外感を感じずに生活できると思います。誰かの誕生日などに夜遅くまでカラオケで騒ぐご近所さんもいるかと思いますが、家族で楽しく暮らすことを一番の幸せと考えているこの国の人々に見習って、一緒にカラオケで楽しめるようになると「楽園」のような移住生活が送れるかもしれませんね。