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今週4月29日、アメリカのトランプ大統領が2期目の就任から100日目を迎えました。

この日、ミシガン州で演説を行ったトランプ氏は「この国の歴史上のどの政権よりも最も成功した最初の100日」になったと発言。移民政策や関税が成功していると主張しました。

しかし、強引すぎる手法にアメリカ国内での反発も強まっており、現地の世論調査によると、トランプ氏の就任100日後の支持率は44%で、第2次世界大戦後の大統領で、この期間に支持率が50%を下回ったのはトランプ氏だけだそうです。

そんなトランプ氏の政策で特に世界を巻き込んでいるのが、高い関税です。アメリカ経済が第1・四半期にマイナス成長となったことについて、トランプ氏は、自身の「関税とは無関係」とし、関税が本格的に発動されれば経済は急成長を遂げると主張しました。

この時間は、アメリカ国内外に大きな影響を及ぼしている「トランプ関税」について、2つの国の番組通信員の方に、現地でどんな影響が出ているのかなどを伺います。

⚫︎メキシコ・アグアスカリエンテス在住  府川 祐子さん

Q1 トランプ関税の発表後、メキシコ国内でもかなり混乱があったのでしょうか?

A1 はい、トランプさんの発表があった当初はそのテーマでもちきりでした。

Q2 合成麻薬の流入対策の不備を理由にした25%関税についてメキシコ国内での反発や反トランプ(デモや不買運動など)の動きはありましたか?

A2 アメリカ系のスーパーへの不買運動はありましたが、国中の規模にはなりませんでした。麻薬組織の取り締まりについてはできるならさっさとやれという雰囲気でした。

Q3 4月上旬、メキシコは「相互関税」の対象から外れ、アメリカへの報復関税を見送るなど、交渉がうまくいっているようでしたが、メキシコ初の女性大統領クラウディア・シェインバウム氏の国内での評価はどうだったのでしょうか?

A3 大統領に就任したばかりでメキシコの国民も不安だったようですが、自信たっぷりにメキシコはうまくやれると毎日発表していました。その為、日に日に国民の不安も収まりつつあるということになっています。

Q4 ただ、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を順守していない品目には25%の関税が課されるということで、たとえばどういった品目・業界の影響が懸念されているのでしょうか?

A4 アグアスカリエンテスは自動車産業の街ですから、その会社で働いている人たちは心配しています。

Q5 つい先日、トランプ大統領は、米国内で完成車を組み立てる自動車メーカーを対象に、海外製の自動車部品に課す25%関税を、今後2年にわたって一部免除すると発表。鉄鋼・アルミニウム関税やメキシコの制裁関税は上乗せしないと発表しました。こちらについてはどう報道されていますか?

A5 日本と同様の報道がされています。 メキシコ系の不法移民がターゲットになっている強制送還について

⚫︎中国・北京在住のライター、斎藤 淳子さん

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Q1 トランプ関税ではアメリカから中国への関税が合わせて145%、対抗措置として中国からアメリカへの関税が125%とするなど貿易摩擦が激しくなっていますが、中国国内でも混乱しているのでしょうか?

A1 メディアでの取り上げ方も非常に限られています。事実については報道されていますが、日本での中国での影響に関する報道などに比べるとずっと少なく、ミニマムという感じです。ただでさえ、コロナ以降年々深刻さを増す不景気のところ、輸出業者は大変なはずだが、北京の街中にいる限り、そういう文句や嘆き声は聞こえてこない。私の周囲には製造や輸出業界の関係者がいないのと、まだ実施されてから日が浅いため影響もはっきりでていないゆえかも知れない。

Q2 少なからず影響があるはずですが・・・アメリカによる対中関税のうち、どの品目・業界への影響が出そうでしょうか?

A2 関心の高い人たちの間で話されているのは機械・IT、農業(特に油・飼料用大豆)、医薬品、ミルクです。(本来なら、輸出品である製造分野の話が出て当然なのですが、そこはあまり光を当てていません)

Q3 中国政府は徹底抗戦の強気の姿勢を見せていますが、先日、中国外務省がトランプ関税批判する動画を公開したことが日本でも報じられていますが、この動画は中国のSNSでも拡散されていますか?

A3 これは出ています。本当にタイミングといい、分かりやすいメッセージといい上手ですよね。

Q アメリカサイドは中国と交渉しているとしていますが、中国側はその事実はない、としています。交渉の状況の報道はどうなっているのでしょうか?

A 430も交渉はしていないと外交部が言っています。ゴールデンウィークですし、広くそれが報道されているわけでは無いですね。

Q4 関税を受けて、民間では、どのような動きがありますか?

A4 「リスクはチャンス」ということで、この新しい変化で損を最小限に抑え、いかにうまく商売に繋ぐか、という視点での話題が多いです。具体的に何が値上がりするかということへの関心は高いです。ただ、アメリカ向け製造業者で働くこちらの労働者の問題は北京には伝わってきていません。本来ならそこが一番大きな問題かと思いますが。

Q5 中国のメーカーが製造を委託されているとする高級ブランド品のロゴなし商品を安価で直販!という動画がSNSで出回ったという話もあり、中国のみなさんのたくましさがうかがえますね。トランプ関税に関して、今後、中国ではどんな影響がありそうでしょうか?

A5 輸出は、今までは投資、国内消費と並んで中国経済を支えていた3大要素だったのに、なくなって大変。経済的にはこれまでの相互依存から、デカップリング(分断)が進むとの見方が濃厚です。