年明けにこんな話題がありました。

「退職代行サービスが好調」。

退職代行サービスとは、労働者の代わりに会社に退職の意思を伝えるサービスで、退職日や有給休暇の消化、未払い給与の請求、などの交渉も依頼が可能です。

退職代行サービス「モームリ」によると、1月の依頼件数が過去最高を更新。今月は2000件を超える見通しとのこと。こういった需要の増加とともに、退職代行サービスを提供する会社も増えています。

また、転職を支援する「転職エージェント」の分野にも多くの会社が参入し、まさに群雄割拠となっています。

そこで、この時間は、「世界の退職・転職事情」と題して、2つの国の番組通信員の方にお話を伺います。

⚫︎イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん

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Q1 日本では、会社を辞めることについて「うしろめたい」など、ネガティブに捉える向きがありますが、イギリスではどうでしょうか?

A1 欧米では専門性の高いジョブ型採用、つまり会社でなく特定の仕事に就職するのが一般的です。そのため、キャリアアップのために転職するケースが多く、転職は通常、ポジティブなイメージです。個人、職種、国などにより状況は異なると思いますが、イギリスでは平均5年に一回は転職すると言われ、逆に長く働いていると、「えーまだいるの?」と言われることもあります。もちろん、何十年も長く勤務され会社に貢献し高く評価されている方も沢山いらっしゃいます。

Q2 日本では退職を代行するサービスや、転職を支援するビジネスが増えている印象ですが、イギリスではいかがですか?

A2 基本的に本人・自ら、会社にNotice(文書での正式な退職届)を出すケースが大半です。転職が普通のイギリスでは、最終的には会社も個人の意思を尊重する傾向が多いと思います。

Q3 会社を辞める際の慣習で、日本と違うところはありますか?

A3 役職、契約内容により、次の会社で活動開始できる日が異なります。管理職ですと通常、2ヶ月前にNotice(退職届)を出す必要があり、その下の職級ですと1ヶ月前、パートタイムですと1週間前という例が多いようです。ちなみに、同業の競合に転職する場合は、ガーデンリーブ(Garden leave)と呼ばれる退職の際に一定期間、労務を免除したうえで給与を支給する代わりに、その期間につき競業避止義務を負わせる契約があり、3か月間、転職するまで時間がかかることがあります。

Q4 イギリスでは次の務め先が、前の職場の人事や上司にコンタクトすることがあるそうですが、どのようなことを調べるのでしょうか。

A4 面接では面接官が職務経歴に基づき、前職の仕事内容などをインタビューします。正式な契約の前に次の雇用主が、話した内容が正しい(虚偽がないのか)のか、リファレンスという確認作業を、前の職場にコンタクトし実施しています。このリファレンスを書くのは通常、人事(HR)ですが、時には、前の上司が書く例もあります。また、人物像については主観的な部分もあり、エージェントを通じ、付き合いのありそうな業界関係者にコンタクトし、評判をヒアリングすることもあるようです。海外ではこのような転職・リファレンス文化があるため、Linkedinという仕事に特化したソーシャルネットワークが2003年に誕生し、現在、36言語、約10億人のユーザーが登録されています。面接官もlinkedinで、インタビュー前に下調べすることもあり、自分のLinkedinのプロフィールを輝かせ、アピールするかも、希望する仕事をゲットできるかの重要なポイントとなることも多々あるようです。

Q5 最後に、辞める方を送り出す「送別会」などはありますか?

A5 はい、転職されるケースが多いので頻繁にあるイメージです。日本のように所属した部のメンバーといく送別会もあります。また、イギリスならではかもしれませんが、金融機関などでは退職する本人自身が送別会(Fairwell party)を企画し、お世話になった同僚・お客さんを招いてパブなどで転職パーティを開くことが多く、その場合、ドリンク代は自腹で払う慣習があります。

韓国・ソウル / オム・キフンさん

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Q1 会社を辞める時のことですが、韓国ならではの慣習やしきたりなどありますか?

A1 韓国では一般的に、退社の意思を最低でも1か月前に通知することが礼儀とされています。これは、会社が新しい従業員を採用し、引き継ぎを準備する時間を与えるためです。もちろん、会社のポリシーや契約条件によって異なる場合がありますので、具体的な事項は会社の人事担当者と相談をします。韓国でも基本的に退社の時でもマナーを守ることが大切です。例えば、退社理由をちゃんと説明して最後まで誠実に業務を遂行して同僚たちと良い関係を維持することが望ましいです。

Q2 先ほどのイギリスのレポートでは、数年単位でどんどん転職するのが当たり前、といったお話しがありましたが、日本では転職が多いと、ちょっと問題がある人なんじゃないか?と勘繰ってしまうような見方をされてしまうこともまだまだあるようです。韓国ではそのあたり、どうですか?

A2 韓国でも最近は数年で転職をする人が多いです。面接官もその事は分かってはいるんですが、転職をした理由がハッキリしないとやはりイメージは良くないです。なので職場での人間関係、残業に対する考えなど色んな質問をして検証をします。もちろん業界によって多少違いはあるんですが、昔より転職がよくある時代だとしてもやはり同じ会社に長年誠実に勤めてる人材が信頼されます。

Q3韓国にも「退職代行サービス」ってあるのでしょうか?

A3 上司に直接退社意思を明らかにすることが出来ないという声が最近若者達から出ているのは事実です。韓国にはまだそんなに多くはないんですが、退職代行サービスを行っている会社は一応あります。 例えば3年ほど前に出来た「バイバイ」という名の会社があるんですが、退職相談、書類を代理で提出したり、精算など退社と関連したすべての手続きを日本円で1万円ちょっとの料金で代わりにやってくれます。

Q4 Bye Bye! とてもヒキの有る会社名!印象レベルで結構ですが、韓国では円満退社が多いイメージですか?退職にまつわるトラブルなどもよく聞きますか?

A4 もちろん、円満に退社をする場合もありますが、無断で退社したり、上司のパワハラ、部下の逆パワハラ、退職金問題があったりと色々あるようです。よく聞く話は、退社するというメッセージをいきなり携帯のSMSで送ってしまうという事です。このような事はけっこうよくあるみたいで、直接対面で話すのが苦手だという若者が増えてるという事だと思います。

Q5 会社を辞める方を送り出す送別会は、韓国でもありますか?

A5 コロナの影響で減ったりはしましたが、最近はそんなに気にしなくなったので何かしら特に問題がない限り送別会は行われます。基本サラリーマンは飲み会が好きなので本人の好きなメニューを選んで行われます。ある会社では退職する同僚に内緒でサプライズパーティを準備してプレゼントを渡したり、退職するものが全体メールで"私の代わりになる担当者は気の毒ですね"などと冗談のメッセージを送ったりと、けっこう明るくお別れをする慣習が韓国にはあります。