きょう、3月15日は「万国博デー」です。1970年のきょう、「日本万国博覧会」、いわゆる大阪万博の一般入場が開始されたことにちなんで制定されました。それから55年後となる、来年2025年には再び大阪で「大阪・関西万博」が開催予定です。しかし、会場建設費の高騰によるパビリオン建設の遅れ、万博予算の度重なる増額などの問題もあがっています。そこで、この時間は、「世界の万博事情」と題して、海外ではどんな万博が開催され、どんな成果があったのか、2つの国の番組通信員の方にお話を伺います。

●2019年に「北京世界園芸博覧会」がおこなわれた中国・北京在住のライター、斎藤 淳子さん

Q1 2019年の「北京世界園芸博覧会」、こちらどんな万博だったのか教えていただけますか?

A1 テーマは「緑色生活(エコな生活)」と「美麗家園(美しい家)」。

場所は北京市西北部で22年の冬季オリンピックも開催された万里の長城のある延慶区。(市内から30キロと離れており、不便)

パビリオンには国際館、中国館、植物館、生活体験館、劇場センター。蝶の羽の屋根の建物は開会式などが行われた劇場センターです。

山、水、林、田、湖、花、草を融合させ、棚田や川なども再現しています。

面積:総面積は960ヘクタール、うち園区面積は503ヘクタールととにかく大きい。大規模。

Q2 園芸博覧会ですから、やはり自然をフィーチャーした万博だったんですね。どのくらいの国が参加されたのか、お客さんの数など、教えていただけますか?

A2 参加:866カ国、24国際組織と中国の31省・区・市と香港台湾マカオ。

参観者数:1600万人(2019年時の予測。実際どれだけ来たかは不明。)ちなみに、日本は「日本庭園」と「日本展示館」を出展。「日本庭園」は伝統的な造園技術を駆使した石組みや植栽により、日本の自然風景を表現し、池には錦鯉が泳ぎ、来場者を魅了、国際屋外出展コンテストで「大賞」を受賞したようですね。

Q3 「北京世界園芸博覧会」に、どのくらいの予算が投入されたのか、お分かりになりますか?

A3 実際にかかった 総数は公式には発表されていません。2017年の計画時の園内の建設費は156億元(およそ3120億円)となっていますが、このほかに8本の道路(35億元、およそ700億円)や園内外の地下整備(10億元、およそ200億円)かかっているとのことで、実際には兆(円)単位のはずです。

Q4 来年の「大阪・関西万博」も、インフラ整備も含めると10兆円ほどになるんじゃないかと言われていますからね。北京のみなさんにとって「北京世界園芸博覧会」は成功だったんでしょうか?

A4 もう5年前ということもありますが、北京に長く住んでいる周りの人に聞いてみましたが、行っていないという人ばかりでした。残念ながら存在感はそれほどない感じですね。当時は花博専用の高速道レーンがあったのだけを覚えているという駐在員の方もいました。何となく、そんな感じです。ただ、開催後にこの公園に行った人は、大きくて綺麗だったとのこと。ゆっくり回ると2日もかかると言っていました。

Q5 ちなみに、北京世界園芸博覧会の跡地はどのように活用されているのでしょうか?

A5 跡地はメインパビリオン、演芸センター、室外展示場に緑地などが残されていて、「北京(世界園芸の)世園公園」として運営されています。入場料は60元(およそ1200円)です。今年は春節からきょうまで「ランタンフェスティバル」を実施。ライトアップをして、屋台やイベントを実施中。また、中国でもアウトドアがはやっているので、夏にはキャンプ場にもなるそうです。

●2019年の北京から、さらにさかのぼって、2015年に「ミラノ国際博覧会」が開催されたイタリア・ミラノ在住 / 田中 美貴さん

Q1 2015年の「ミラノ国際博覧会」こちらどんな万博だったのか教えていただけますか?

A1 テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを(Feeding The Planet, Energy For Life)」で、145ヵ国が参加。一国パビリオンを持つところもあれば、米、小麦のような感じで共通の食材をテーマにパビリオンをシェアする国もありました。「食料の安全、保全、品質のための科学技術」「農業食物サプライチェーンの革新」「食育」「より良い生活様式のための食」「食と文化」「食の協力と開発」という7つのサブテーマがあり、世界中の人々に安全で健康的な食糧を持続的に供給するための解決策を各国が提案しました。

Q2 この「ミラノ国際博覧会」の目玉は何だったのでしょうか?

A2 来場客のお楽しみは、パビリオンに併設されているレストランや屋台で、イタリアでは普段あまり味わえない世界の料理を食べることだったようです。イタリア人は自国の料理に絶大な自信を持つ国民であり、味にはコンサバなため、イタリアにはあまり外国料理店がないので・・・。(が、ミラノに関しては、それも万博をきっかけに随分変わったような気がします)来場者も予想をうわまわるおよそ2100万人でした。「食」という誰にでも親しみやすいテーマだったこともあり、みんなが楽しめる万博だったと思います。そして、これをきっかけに郊外の都市開発がどんどん進んでおり、また「グリーンな万博」というイメージから、その後のミラノに環境に重視した街という好印象を植え付けました。

Q3 この万博で田中さんが印象に残っているのはどんなことでしょうか?

A3 日本館が大盛況で、10時間待ちの列までできていたのが印象的でした。自分の国だからという部分もありますが、実際に日本館は展示デザイン部門金賞を受賞しており、民間アンケートでも評価が高かったようです。そしてこのころから特にイタリアでの日本食ブームが過熱したように思います。

Q4 イタリアのみなさんの食文化に影響があった万博でもあったんですね。その「ミラノ国際博覧会」、どのくらいの予算が投入されたんでしょうか?

A4 使われた費用は市内設備やインフラ関係を含めますと、180億ユーロ(今の為替だとおよそ2兆9700億円)になるようです。もちろん税金の無駄遣いと言う声もありましたが、ミラノはビジネスの街なので、万博に期待する人も多かったようです。それよりも、万博後に跡地の開発が一向に進まないことへの批判や、万博後にすぐ壊すような施設をわざわざ市内に色々作ったことへの批判が結構あったような気がします。また、ミラノの人は諦めていて批判する気にもならないようですが、万博までに整備されるはずのインフラ設備は、結局実現しないまま終わったものもあります。例えば、地下鉄もリナーテ空港から市内を繋ぐM4ラインが完成する予定だったのが、いまだに全開通はできていない状態です。

Q5 ちなみに、ミラノ国際博覧会の跡地はどのように活用されているのでしょうか?

A5 病院の研究機関と国立ミラノ大学、科学研究センター、そしてMindというオフィスビル、商業施設やホテル、住宅などによる新エリアができる予定で、病院は昨年から稼働、大学は2015年にはスタートする予定だそうです。