さて、きょう2月16日は「全国狩猟禁止の日」です。免許を持った方が、銃などで野生動物を捕獲する「狩猟」。

毎年2月16日から11月15日にかけては、北海道を除く全国で狩猟が禁止となります。ちなみに、日本に生息する鳥獣のうち、狩猟の対象になっているのは、イノシシ・タヌキ・キツネ・ニホンジカ・ヒグマ・ツキノワグマなど48種類にのぼります。日本ではここ数年、市街地にクマが現れるケースが増えていますが、捕獲を担うハンターが減っている、という状況も報道などで伝えられています。さて、この「狩猟」にまつわるルールや状況、海外ではどうなっているのでしょうか?この時間は2つの国の番組通信員の方にお話を伺います。

●カナダ・バンクーバー在住 / 窪田 誠さん

Q1 カナダでは昔から狩猟がさかんですよね?

A1 カナダでは1600年代からヨーロッパから人々がやって来て毛皮交易が盛んだったため、当時は毛皮目的でビーバーのハンティングが盛んでした。そこからおよそ300年間は毛皮貿易のための狩猟でしたが、1980年代以降は毛皮よりも食肉のための狩猟がメインになってきています。私たちが住むブリティッシュコロンビア州では狩猟の対象は鹿類が多く特にムースの狩猟が人気があります。これは最も大型の鹿類で食べて美味しいのが理由だそうです。

Q2 狩猟免許のルールはどうなっていますか?

A2 狩猟免許は初めに講習を受けてライセンスを取得すると車の免許と一緒で永続できます。それにハンティングで必要な銃のライセンスを取ります。銃のライセンスは5年ごとに更新があり非常に厳しいルールに基づいています。もう一つ重要なライセンスがタグと呼ばれる動物ごとの狩猟ライセンスです、これがないと狩猟ができません。タグは動物ごとに金額が異なるのですが、現在では動物保護を目的にタグの発行数が非常に少なく、応募して抽選で当たれば狩猟ができます。ムースなどは本当に当たればラッキーです。小型の鹿などは当たるチャンスがあり、生息数の調査でその年のタグ数が決められているそうです。

Q3 カナダでは害獣駆除と動物保護のバランスはとれているのでしょうか?

A3 カナダでは「コンサベーションオフィサー」と呼ばれる自然動物保護官がハンティングエリアで常に監視取締活動を行っていて、生息数などの調査も行なっています。害獣駆除も友人の住む少し郊外の家で飼い犬がオオカミに襲われることもよく起きているそうで、そうした場合はオオカミのタグの発行数が増えるそうなんです。そのように状況を見ながらタグの数の管理をしているそうです。

Q4 そのほか、狩猟に関して、窪田さんがお話ししたいことはありますか?

A4 さきほど鹿の狩猟は食肉目的とお伝えしましたが、肉を捌いてくれる肉屋に持ち込みする際、必ず鹿の角とタグを提示しないといけないそうです。というのも、メスの鹿は狩猟禁止になっているので、オスであることと、密猟でないことを証明しなければならないそうです。なので狩猟現場からは肉を取ったら、必ずツノは持ち帰らなければいけないそうなんです。

●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん

Q1 イギリスも昔から狩猟がさかんですよね?

A1 イギリスや他のヨーロッパの国々では、狩猟は中世時代から貴族・上流階級のスポーツとして行われてきました。イギリスの狩猟というと皆さんがイメージされるのは、赤や黒のジャケットに身を包んだ紳士淑女が馬に乗り、猟犬を駆使して行う「キツネ狩り」ではないでしょうか。このキツネ狩りは元々、軍事訓練的な要素もありましたが、貴族のスポーツ、さらに社交の場として根付いてきました。ちなみに英語では、狩猟をhuntingとも言いますが、楽しむという意味でgamingとも言うのが、イギリスにおける狩猟の歴史を物語っていると思います。近年では、害獣駆除を目的とする農家の他、ホビーとして楽しむアマチュアハンターも増えています。

Q2 狩猟のための銃のライセンスや狩猟免許の仕組みを教えてください。

A2 イギリスは日本同様、銃火器の所有は厳しく、護身のための所有は認められていません。その為、所有する場合は狩猟やクレーシューティングが主な目的になります。ライフルや散弾銃の保有ライセンスは、18歳以上、犯罪歴等の証明が必要となります。証明書は5年有効で、取得費用は約88ポンド(約16千円)です。「狩猟免許」についてですが、イギリスには日本のような免許制度はありません。それは、狩猟は土地の所有者である貴族が、自分の領地で行うスポーツがルーツなため、獲物を捕る権利は、その土地の所有者にあるという考え方が根本にあります。従いまして、狩猟をする場合は、国や市から免許を取得するのでなく、土地の所有者に対し、お金を払って狩猟する許可を得て行います。

Q3 イギリスで狩猟をする人口は増えている?減っている?

A3 2023年の英国政府統計によると、およそ51万人がショットガンのライセンス保持しているようでして、この人数が狩猟人口と推測され、傾向的には年々減少傾向にあるようです。

Q4 狩猟に関する規制は厳しくなっていたりするのでしょうか。?

A4 冒頭、コメントさせていただきました「キツネ狩り」は一般の狩猟と違い、銃は使用せず、猟犬を駆使しキツネを追いかけ捕獲するため、残酷だと市民や動物愛護団体から非難を受け、2004年に施行された「狩猟法」により禁止されました。しかし、規制にはグレーな部分があり、違法な狩りが続いていると言われ、昨年、より厳しい法律がスコットランドで施行されています。他の狩猟については、そこまでの規制は見られないようです。