あさって、10月15日は「たすけあいの日」です。昭和40年=1965年、社会福祉法人全国社会福祉協議会が日常生活でのたすけあいや、ボランティア活動への参加を呼びかけるために制定したそうです。

たすけあい、ボランティアの1つに「炊き出し」があります。経済的、環境的な事情により食事をすることが困難な人々に対して、一斉に調理した料理を提供する活動のことで、海外でも「スープキッチン」などの名前でおこなわれています。そこで、この時間は2つの国の番組通信員の方に回線をつないで、現地の「たすけあい事情」を伺います。
●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん
Q1 アメリカの炊き出し「Soup Kitchen」について、基本的なことを教えてください。
A1 アメリカでは全米各地でSoup Kitchenが行われています。"Soup Kitchen"という言葉を聞くと、"温かいお料理"を連想させますが、アメリカでは温かいお料理に限らず、食料品、毛布や衣服、生活用品などを無料で提供する活動として行われています。このような活動の背景には、教会や慈善団体の存在があります。中でもSalvation Army=イギリスからやってきた救世軍の活動が大きく影響しています。
Q2 現在、Soup Kitchenでは、どういったものが提供されているのでしょうか?
A2 ポピュラーなのが"Food Bank"、"Food Pantry"、"Free Food"といった名称で、温かい食べ物というよりも、缶詰、パン、スナック、野菜や果物、お米、オートミールなどを配っています。食品は賞味期限が近い物などもありますが、中には有名なドーナツショップやパン屋さんが前日に売れ残った物を提供する事もあります。そして旅行用サイズのシャンプーやボディソープ、歯ブラシや歯磨き粉なども提供されます。茶色い紙袋の中にすでにパックされていたり、自分で選べる場合もあります。
Q3 Soup Kitchenは、どういった場所で提供されているのですか?
A3 この活動が始まった当初からですが、Soup Kitchenは決まった場所や、お店があるわけではなくて、広い駐車場の一角や、公園の一角などで行われる事がほとんどです。事前に"〇月〇日〇時から〇〇でフードが配られる"という情報がウェブサイトに掲載されたり、その場所にフライヤーが貼られて知らせてくれます。食料を積んだトラックやバンがやって来て、その場で食べ物を配っていきます。今は車に乗ったままで並べる場合が多いので、会場のそばに行くと車の長い列を目にする事がよくあります。
Q4 ちなみに、誰でも受け取ることができるそうですね?
A4 貧しい人たちに限らず、誰でももらう事が出来ます。インターネットの検索で『free food near me』とか、『free food』と『自分の街の名前』を入れると、こういったサービスを実施している多くのウェブサイトにヒットします。
Q5 冬が近づいてくると、Soup Kitchenの活動もより重要になってきますよね?
A5 これからの季節、来月11月のサンクスギビングにはターキー、クリスマスには特別な温かい食事が全米各地で配られます。このようなサポートが行われるのはアメリカならではだと思います。
●フィリピン・マニラ在住、澤田 公伸さん
Q1 フィリピンの炊き出しについてですが、そちらではなんと呼ばれているのでしょうか??
A1 普通は「Feeding program」と呼ばれています。あとコロナ禍になってから、特に政府の支援が行き届かないコミュニティーで食品や生活必需品を持ち寄って、物々交換所、つまりコミュニティーのメンバーでシェアし合うという互助活動が広がりましたが、これは「Community Pantry」と呼ばれます。この互助運動が始まると、その活動の一つとして朝食などを無料で炊き出すことも各地で行われています。
Q2 炊き出しはどういった場所で行われているのでしょうか?
A2 一番大規模に行われているのが、政府の教育省と社会福祉開発省が合同で3歳児から12歳児ぐらいまでの保育園や幼稚園、公立小学校に通っている栄養が足りない子どもや生徒たちを対象としたNational Feeding Programで、これは平日ほぼ毎日行われているようです。学校を舞台としたFeeding Programでは提供されているのは、お粥やパン、牛乳などが多いようです。また、特に国内の中でも最も貧しいミンダナオ島の州を含む10州においては、0歳~2歳までの幼児を対象とした栄養提供プログラムも実施されています。また地方自治体ごとに炊き出しも行っており、セブ州当局も来月11月から幼稚園から小学校6年生までの全生徒87万8千人に、平日の5日間にわたり毎日、お粥を提供するプログラムを開始すると報道されています。
Q3 なるほど、小さなお子さんを対象にしたものが多いのですね。ほかにはいかがですか?
A3 次いで大きな規模のものとしては、国内のカトリック教会の社会福祉活動団体が全国で炊き出しを行っています。たとえば首都圏マニラ市ではA J Kalinga Centerという団体がホームレスの人たちを対象に週に4日間ほど、朝・昼・夕食と提供しています。こちらの炊き出しでは白いご飯とおかずを毎食2品用意しています。コロナ禍のひっ迫した状況下の時は1日におよそ1千人のホームレスの人たち(子どもを含む)がここを利用したそうです。こちらではシャワーを浴びたり、希望すれば宿泊することもできます。その他にも各地のNGOや市民団体などが路上生活者や貧困層家族を対象とした炊き出しを特定の地区で行っています。
Q4 炊き出しを提供するのはボランティアの方でしょうか??
A4 資金は学校を舞台とするFeeding Programのように国や自治体の予算から出ている場合と、教会系やNGOの炊き出しのように個人の寄付から出ている場合があるようです。これらの炊き出しで食事を提供するのは、学校の先生やボランティアが多いようです。
Q5 スラム地区でのたすけあいについて、お話ししたいことは?
A5 マニラ市にある大きなスラム街の一つであるトンド地区では、このコロナ禍で始まった青年たちを中心とするCommunity Pantryのグループの一つが、食品や日用品の物々交換所の運営のほかに、トンドの子どもや大人向けに炊き出しや無料の散髪、カラオケ大会を通じたファンドレージング活動などを行って助け合い活動を現在も進めているようです。