先週からこの時間は、「FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023」に出場する国と回線をつないでお話を伺っています。先週は開催国のオーストラリアとニュージーランドでしたが、今朝は、日本と同じグループCの国です。
●コスタリカ・グレシア在住 / 浅井 真里さん
Q1 まず、日本が準優勝した2015年のカナダ大会以来、2回目の出場となるコスタリカでは女子ワールドカップ、盛り上がっているのでしょうか?
A1 サッカーはコスタリカの国技といえるスポーツであり、女子の競技人口も比較的多いですが、今回の女子ワールドカップは試合開始時間の遅さ(グループステージいずれも深夜23時台や午前1時台の開始)や、今回のチームに対する世間一般の人々の期待値の低さ、有名なベテラン選手が代表選出外となったことなどから、イマイチ盛り上がりに欠けている印象があります。
Q2 コスタリカ代表は初戦、スペインに0-3で負け、二戦目、日本に0-2という結果で、1次リーグ敗退となってしまいましたが、この結果、現地ではどう報道されていますか?
A2 元々、今回のコスタリカ代表チームに対する期待値が相当低かったこともあり、またスペイン代表、日本代表共に自国よりも格上のチームであるとの一般的な見解が存在しているため、両試合における敗戦、一次リーグ敗退に関しても当然の結果として、特に驚きもなく冷静に捉えられています。守備の面ではGKのダニエラ・ソレラ選手が期待以上の活躍を見せたことにより大量失点は免れましたが、チーム全体として攻撃面での戦略などが全く見られず、8年間も同じ監督の元でチーム作りをしてきたとは思えないとのことで、大会開始前から存在した監督への批判、退陣の要求が更に強まっている状況です。
Q3 日本戦をご覧になって、浅井さんご自身の感想はいかがですか?
A3 カタールでの男子のワールドカップの際もそうでしたが、日本にもコスタリカにも縁のある者としては、この2つの国の対戦は、どちらが勝っても喜べるという特典があるので、楽しんで観ていました。ただ、池田監督の元、非常にクリアなビジョンを持って戦っているであろうなでしこジャパンとは対照的に、コスタリカ代表の選手たちは、どこか闇雲に戦わざるを得ないような様子で、試合後のインタビューにて改善点について聞かれた選手が「今は分からない、言い表わす言葉がない」と答えておられたのが印象的でした。日本人としてはやはり晴れてグループステージ突破が決定したことで、少しでも長く、多く、活躍するなでしこジャパンの試合が観られることは大変喜ばしく、遠い国で母国の名を背負って頑張る選手たちを誇りに思いつつ陰ながら応援させて頂いている次第です。
Q4 早々と決勝進出の2チームが決まってしまったグループCですが、コスタリカはザンビアとの試合が残っています。ともに敗退となってしまった国同士ですが、この試合はコスタリカ代表、どう臨むんでしょう??
A4 コスタリカの女子代表のワールドカップ出場は今回が史上2回目であり、まだ過去一度も勝ったことがない状態なので、一次リーグ敗退が決まっているとはいえ、この機会に是非記念すべき初勝利を上げて欲しいですね。進退を掛けて挑むというプレッシャーから解放された今、ザンビア戦では、単純にプレーを楽しむと共に、コスタリカらしいサッカーとは何なのか、これからのコスタリカサッカーの方向性の開拓に繋がるようなサッカーをされるのではないかと思います。コスタリカ代表には若干16歳のシェイカ・スコット選手、そして昨年U-20のキャプテンを務め、U-20のワールドカップの開幕戦で40m超えのフリーキックをネットに沈めたアレクサンドラ・ピネル選手などこれからのコスタリカを引っ張っていけるような次世代の選手たちが居るので、その起用や活躍に期待したいと思います。
Q5 コスタリカ代表は敗退してしまいましたが、コスタリカ国内では、今後の試合のテレビ中継はあるのでしょうか?
A5 コスタリカ対ザンビア戦はもちろんのこと、ノックアウトステージに関してもテレビ中継が行われるとともに、ラジオ中継、アプリを通じた有料ネット配信もあります。
●スペイン・バルセロナ在住 / 山本 美智子さん
Q1 サッカー大国スペインといいつつ、コスタリカと同じ、2015年のカナダ大会でW杯デビュー、前回は日本と同じくベスト16というスペイン、女子ワールドカップは盛り上がっているのでしょうか?
A1 スペインはクラブレベルでは、例えば、FCバルセロナ女子が、2度目のチャンピオンズリーグ優勝を果たすなど活躍をしていますが、代表レベルに関していえば、ユーロ、ワールドカップとも、グループリーグ進出を果たせない状態が続いているため、今回は、「9度目の正直」とも言われ、盛り上がりをみせています。ちなみに、テレビ中継ですが、スペインの場合、女子のワールドカップは、国営放送が基本的に全試合を中継しますが、もし、できないものがあれば、それはFIFATVで放送されることが決まっています。国営放送なので、スペインと同グループの試合は全て無料で放送されます。ちなみに、スペインーザンビア戦は午前9時30分からの中継だったにも関わらず、その時間帯の視聴者の20.6パーセント、51万人が試合を視聴したとのことです。
Q2 スペイン代表は、ホルヘ・ビルダ監督への解任を求めた15人の選手が招集外となる混乱がありましたが、その件はどうなったのでしょう?
A2 アレクシア・プテージャが協会と選手の間に入り、結局、最初に拒否していた15人のうち、7人は代表に戻りましたが、例えば代表の正GKだったサンドラ・パニョス、マピ・レオンなど主力の一部は招集されませんでした。試合の結果だけ見ていると、影響していないように見えますが、「40年の歴史でたった3人しか代表監督がいない。男子サッカーで結果が出なくてもこんなに辛抱するだろうか」と、選手はパフォーマンスの向上を求めています。ビルダ監督にプロチームを率いた経験がないことも関係しているでしょう。一方、地元紙は、ホテルの部屋のドアを夜12時までは開けっぱなしにさせるなど、プライバシーを侵害するような、病的なまでに選手を管理する傾向があることもあげています。
Q3 スペイン代表は初戦、コスタリカに3-0で快勝、二戦目はザンビアに5ー0と素晴らしい結果で決勝進出を決めましたね!こちらの結果についてスペイン国内ではどう受け止められていますか?
A3 まずは悲願のグループリーグ進出が見えたことに、素直に喜びの声があがっています。
Q4 決勝に向けて、スペイン代表の今後の活躍のポイント、注目選手は?
A4 まず、大きな負傷から、回復したばかりでの代表招集となったアレクシア・プテージャス。バロンドール2連覇を達成し、既に、スペイン女子サッカーのレジェンドでもありますが、本調子ではないということで、その起用にホルヘ・ビルダ代表監督も試合前から慎重でした。とはいえ、彼女はチームの精神的支柱でもあり、その存在感は、無視できません。ザンビア戦で431日ぶりの代表戦出場、スタメン出場を果たし、早速先制点を生み出しました。個人的な推しは、コスタリカ戦でゴールを決め、MVPにも選ばれたアイタナ・ボンマティ。攻撃力のみならず、リーダーシップがとれるスペイン代表のスター選手の一人。161センチと小柄ながらアグレッシブなプレースタイルは、中盤の鍵になると思います。また、ザンビア戦で代表100試合目を迎えた代表史上の最多得点(50得点)、ベテランストライカーのジェニファー・エルモソがその記録を更に伸ばしていけるかも、興味深いところです。