きょう6月9日は「ロックの日」ということで、ロックの楽曲多めでお届けしていますが・・・このコーナーでも、ちょっとロックにひっかけたテーマにしてみました。「アマチュアバンド事情」です。プロを目指す、もしくは趣味で活動するアマチュアバンドのみなさん、どんな風に音楽活動をしているのでしょうか?2つの国の番組通信員の方に回線をつないでお話しを伺います。

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●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん

Q1 ニューヨークではプロも多いですが、アマチュアバンドも多いですよね?

A1 はい。多いですね。アメリカで生活して意識の違いにびっくりしたのが、音楽に関するアマチュアとプロの境界線の曖昧さです。うまい下手は関係ない。ステージや公衆の面前で演奏ができれば(小中学校の学芸会は別として) musicianとして見られます。学校の部活でバンドやっていなくっても、音大出てなくても、親が音楽家でなくても、路上ライブでチップ箱を置けば道行く人が何の抵抗もなくお金を入れてくれます。これが、アメリカンエンターテインメントの原点だなと思います。つまり、誰でも音楽をやっていい。いいなと思ったらチップをあげていい、という感覚です。こんな状況ですから、プロアマ問わず、バンドやミュージシャンは山ほどいます。

Q2 ロックに限らず、ニューヨークのアマチュア界ではどんな音楽ジャンルが盛り上がっているのでしょうか?

A2 よく言われる通り、ニューヨークは人種のサラダボール。世界中の国から移民が押し寄せ、彼らがほぼ全員自国の音楽を背負ってきますから、各国の民族バンドがあります。目立つのは中南米です。大別するとマリアッチに代表されるメキシコ系、フォルクローレに代表されるアンデス山岳系音楽、そしてレゲェやカリプソなどカリブ海諸国系の3カテゴリーですね。そのほか、ジャズやR&Bのバンドは山ほどあります。ポップスのアマチュアバンドは、プロとの境が曖昧で、名曲のコピーを専門にするトリビュートバンドやダンスミュージックを得意とする結婚式専門バンドなどセミプロに成長するパターンが少なくないです。

Q3 ストリートミュージシャンも多いということですが、音合わせできるリハーサルスタジオやライブハウスとった場所はたくさんあるのでしょうか?

A3 もちろんあります。マンハッタンやブルックリンのビルの中で人知れず練習しているバンドは多いです。レンタル料は安いところでだいたい1時間25ドルくらい(現在のレートで日本円でおよそ3500円)から。ただ、アメリカは家が広いので一戸建て居住者なら自宅のガレージや地下室でリハすることが多いと思います。ニューヨークのアパートでも古いところは壁が厚いのでそんなに音量を必要としないジャンルならアパートでも練習できます。ちなみにストリートミュージシャンは、ストリートが練習の場なので、わざわざ家で練習して来ないと思います。かえってストリートの方が思いっきり音出せますしね。日本でいうと河川敷の楽器練習みたいな感じでもあります。

Q4 ライブでは自主制作のCDを手売りするといった文化はニューヨークにはまだあるのでしょうか?さすがに配信やYouTube誘導?

A4 ありますよ。ただ、アメリカは日本ほどCD愛がないのか、ライブで売っているCDはパッケージも安っぽくあまりバリューがあるとは思えません。一番多いのは、(ストリートなどでは)歌っている傍にQRコード置いてネットのストアに繋がるようにセットされているパターンです。ネットといえばストリート系のチップも最近ではアップルPAYやVemmoなどアプリを使った支払いが興隆しています。

Q5 ちなみに中村さんご自身も演奏をされるとのことで、しかも、いままさにライブ直前とのことですが、どんなライブを予定されているのでしょうか?

A5 お恥ずかしい!そうなんです。音楽演奏は、昔からちょぼちょぼやっていたのですが、還暦を超えた頃からちょっと本気を出してみようかなと(^_^;)せっかくのニューヨークですしね。残念ながらロックではなくジャズ系ですが、実は、偶然にもこのレポートのすぐ後に一つライブがあるんです。アート展のオープニングパーティで、ピアノとボーカルのデュオです。歌ってくれるのは日本で活躍するジャズシンガーの飯島陽子さん。場所はミッドタウンの自然派スパサロン。既存のギャラリーやライブハウスではなくレストランや店舗で行うパフォーマンスがコロナ明け以降とても盛んです。

●イタリア・フィレンツェ在住 小泉 真樹さん

Q1 イタリアにもアマチュアバンド、多いのでしょうか?

A1 イタリアの私の友人達は、皆若い頃何かしら楽器をやっていたり、バンドをやっていたりという人が多いです。もちろんセミプロっぽくなった人もいますが、趣味でそのままバンドを続けている人も割といます。テレビなどを見ていても、まだまだ現役で活動しているシニアのミュージシャンが沢山いるイタリア、そしてヨーロッパですので、バンドは若者文化というより、あまり年齢は関係ないように思います。

Q2 イタリアでアマチュアバンドというと、ジャンルはやはりロックが多い印象でしょうか?

A2 バンド、となるとアマチュアもプロも、イタリアではやはりロックなのだそうです。カテゴリー的にはポップ色が強いのですが、イタリアではロックのカテゴリーに入るNegroamaroという人気バンドがあり、マネスキンが出てくるまではイタリアの中心的存在だったようです。マネスキンは最近の若者にはかなりインパクトがあったようで若者たちのバンドをやりたいムーブメントは前よりかなり強いとのこと。ただ、イタリアは基本的にバンドをやっているのは中年が中心らしいです。

Q3 ちなみに、イタリアの街にはバンドの練習ができるリハーサルスタジオはたくさんあるのでしょうか?

A3 リハーサルスタジオは割と沢山あるようで、アマチュアですと自宅で練習したりという人も多いようですが、問題はドラムを叩ける場所があるかどうかなので、ドラムセットなどの設備があるsala provaと言われるスタジオを借りることが殆どのようです。料金は1人の場合は1時間5ユーロ(日本円でおよそ750円)くらいからと安いのですが、バンドとなると1時間12~15ユーロ(日本円でおよそ1800円~2200円)が相場のようです。

Q4 では、アマチュアでもライブができるライブハウスはどうでしょう?

A4 ライブハウスという、ライブやイベントをすることが中心のホールというのは、あまり見かけたことがなく、どちらかというとライブクラブとかライブバーみたいな感じかと思います。来ているお客さんも年齢は様々で、お店によっても様子は違うと思うのですが、料金を入口で払って飲み物はカウンターで買うか、テーブルのあるお店は注文を取りに来たりという感じで、ライブといっても後ろの方で友達と飲みながら喋っていたり踊っている人がいたり、色々です。

Q5 ライブでCDを手売り、なんて文化はイタリアにはまだありますか?

A5 若者たちは、もはやCDプレーヤーすら持っていないかも?で、今はやはり配信の時代みたいですね。