3月になりましたが、年度末、そして卒業シーズンですね。卒業されるみなさん、おめでとうございます!保育園、幼稚園、小・中・高・大学とそれぞれの思い出が刻まれるのが「卒業アルバム」です。

集合写真、個人写真、学校行事、クラブ活動の写真などが掲載されていますが、この「卒業アルバム」、海外ではどうなっているのでしょうか?そこで今回は「卒業アルバム事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方にお話を伺います。
●アメリカ・北カリフォルニア在住 / 大西良子さん
Q1 まず、アメリカの卒業シーズンは5月、6月で日本と時期が異なります。そして「アルバム」も卒業時だけでなく毎年作られるんですよね?
A1 はい、「イヤーブック」と言って、毎年学年ごとに出版されます。アメリカの知人友人に「イヤーブックって言ったら何を思う?」と聞いたところ、年齢を問わず、全員が「高校時代!」と言います。大学や中学校でもないわけではないのですが、やっぱり青春時代がぎっしり詰まった4年間の高校のイヤーブックが最も意義あるもののようです。
Q2 毎年発行される「イヤーブック」は、全校生徒が載っているんですよね。
A2 そうです。特に卒業する4年生の写真だけはカラーで、3年生、2年生、1年生のページはモノクロ、という具合に卒業生がやっぱり主役で高校全体がどんな様子だったか、わかるようになっています。それぞれのクラスの個人の写真はもちろん、クラブ活動、課外活動などの写真があるので、だれがどこで何をしていたか、など見るだけで蘇ってくる、というわけです。高校時代に何をしたか、どんな活動をしたかというのが時系列を追って記録されている、しかもその時代にその瞬間を共有した人同士でしかわからない記録なんですね。
Q3 ちなみに、イヤーブックに同級生が寄せ書きする、という風習はありますか?
A3 はい、「友達からの手書きのメッセージ」がハイライト、とみんな口をそろえます。卒業前に「イヤーブック・サイン・デー」というのがあって、製本されたイヤーブックをお互いに交換して、メッセージを手書きで書くのだそうです。写真の上に書いたり、またイヤーブックの後ろの方に特別なページが設けられて、そこにメッセージを書き込むようになっています。イヤーブックの持ち主個人に向けたメッセージなので、まさに世界にひとつのもの。仲良し度がわかるし、言葉遣いもそのまま、という具合です。「当時のコミュニティー」が写真と文字で再現されるようになっているというのが魅力なんだと思います。
Q4 そのあたりは日本と変わらないんですね。なにやら、最近はネット上の「イヤーブック」もあるとか?!
A4 ネットを検索すると、確かにオンラインの「イヤーブック」もありますが、やっぱり手書きのメッセージが書かれた実物のイヤーブックというのは、また別のセンチメンタルな価値があるようで、オンラインに置き換わるというものではなさそうです。ただ最近のオンラインのイヤーブックはどちらかというと「検索」目的で、たとえば、だれがどこの高校を出たかという情報をもとに、そのイヤーブックをオンラインで見る有料サービスもあります。写真の一覧を見れば、たとえばいまは金髪なのに、高校生の時は茶色の髪の毛だったとか、高校のときはチアリーダーだったとか、そういう人物の過去の情報源としての使い方もあるようです。たまに「あの友達の名前なんだっけ」と名前を確かめるために見たり、同窓会のときに見たりするなど、ちょっと毎日の生活から抜けてタイムスリップするときには必須のアイテムのようです。
Q5 大西さんもアメリカの学校をご卒業されているので、イヤーブックをお持ちなんですよね?
A5 私自身は大学院を卒業したとき、「イヤーブック」に載ってみたくて、有料の卒業写真を撮り、イヤーブックを200ドルで買いましたが、あまりにも大きいので、自分が載っているページの写真を撮って、結局捨ててしまいました。いまはカードを送るのもEカードがあり、サインもオンラインでする時代。もしかしたら、卒業アルバムもE時代になる日が来るかもしれません。
●韓国・ソウル / ヤン・ジョンミさん
Q1 韓国の「卒業アルバム」も日本と同じような内容なのでしょうか?
A1 韓国も顔を中心に撮った証明写真などの個人写真とグループ写真、集合写真など、また、学校生活と部活、修学旅行などの写真を載せた卒業アルバムが一般的です。写真が載るのは基本的に卒業生のみになります。ただ、特化した学校、特に芸術高校や衣装・メイク専攻の学生たちは、自分が作ったドレスを着たり、華やかにメイクをしてコスプレをしたりもします。特にクリエイティブな学生たちが集まった学校は、漫画やアニメ、映画に登場するキャラクターに変身し、個性あふれる卒業写真を撮って毎年コンテストを開く学生たちもいます。
Q2 エンタメ感が強いんですね!ところで、韓国では、卒業アルバムの写真を撮る前に整形をする人もいるとか?!
A2 以前は大学の受験が終わって親からのプレゼントで整形をする場合が多く、高校卒業写真を撮る前に整形をするケースが少なかったのですが、美意識が高い母親や、芸能人になりたい小学生や中学生が卒業写真をきれいに撮るために整形をする場合もあります。特にネットが発達した今は、芸能人の過去の卒業写真がユーチューブによく公開されたりもしているだけに、インフルエンサーや有名人になりたい学生は整形した後に卒業写真をきれいに撮っておこうとする傾向も増えています。今でも中古取引サイトで芸能人の昔の卒業アルバムが高く取引されたり、有名になったらまずはYouTubeに過去の写真がBefore・Afterで公開されるのが当然であるため、いつ公開されるかわからない自分の過去??を、整形した後のきれい顔で残しておこうとする目的で、親とうまく協力?することもあります。
Q3 そのほか、韓国の卒業アルバムにまつわる話題はありますか?
A3 最近、韓国の低い出生率のため、生徒数の少ない地方の小都市では費用の問題などで卒業アルバムの発注自体が難しい場合もあります。地方のある中学校では、2014年から写真集のように一人一人の個性を生かした作品として卒業アルバムを製作し、それこそ学生と親に対する「感動的な卒業プレゼント」として渡す伝統ができました。しかし、生徒数が少なくてなかなかアルバムを作ってくれるところが見つからず、撮影から制作費用まで(印刷以外のすべてを)先生や先輩・後輩の支援で卒業アルバムを完成するということで話題を集めたりもしました。