1月19日は「のど自慢の日」でした。1946年=昭和21年のきのう、NHKのラジオで「のど自慢素人音楽会」が開始されたことにちなんで制定されたそうです。現在はテレビで「のど自慢」が放送されていますし、歌の上手な一般の方が参加する歌番組、オーディション番組も数多くあります。そこでこの時間は2つの国の番組通信員の方に「素人参加型番組」について伺います。

●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん

Q1 アメリカでもいわゆる素人の方が参加する歌番組、あの、のど自慢のように全国行脚は無いようですが、オーディション番組の歴史は長いですよね?

A1 アメリカのオーディション番組は歴史が古く、最初の番組は1948年に始まった 『Star Search』。12年に渡って放送されて、各カテゴリーごとに(例えば歌とか、ダンスなど)優勝者がおり、毎週、優勝者が挑戦者と対戦するというスタイルでした。アメリカではオーディション番組の事を『タレントショー』と呼ぶことが多く、とてもポピュラーで人気があります。

Q2 アメリカのオーディション番組、さまざまあると思いますが、いま人気なのは、昨年9月にジャニーズのグループ「Travis Japan」が準決勝ラウンド進出して日本でも話題になった「America's got talent」ですよね?

A2 昨年8月の視聴率調査で18歳~49歳の640万人が視聴したという結果が出ており、幅広い世代に人気。老若男女問わず歌手だけでなく、ダンサー、マジシャン、コメディアンなど様々なジャンルのパフォーマーが賞金100万ドルをかけてオーディションを行うスター発掘番組。

Q3 ご存知の方も多いと思いますが、改めて参加方法などのルールを教えてもらえますか?

A3 参加方法は、

▼全米各地で開催されているオーディンションに参加するためにまずオンラインで応募。自分のパフォーマンスを録画したビデオとプロフィールを送ります。

これにパスすると観客を入れた会場で公開生放送される中、パフォーマンスを披露します。著名な4人の審査員のうち3人に『YES』と判断されると準決勝のステージに進む事が出来ます。さらに『ゴールデンブザー』といって、何が何でも次のラウンドに進んで欲しいという出場者に、審査員が1回だけ押す事が出来るボタンがあり、これが押されると自動的に準決勝ラウンドに進めるというルールもあります。

準決では55組の参加者を5つのフループに分けて、毎週11組がステージに登場します。番組終了後、視聴者からの投票を丸1日受けつけ、上位2組が決勝ラウンドに進む事が出来ます!

そして決勝ラウンドで、残った10組の中から1組だけが選ばれます!(投票方法は準決勝ラウンドと同じ)大規模なオーディション番組ですから、開催は年に1回

Q4 さまざまなジャンルのパフォーマーが参加されていると思いますが、歌の分野で最近活躍した方というと・・・?

A4 歌の分野で注目を集めたのは、2019年のシーズン14で優勝した22歳の盲目で自閉症のシンガーソングライター、コディ・リーさん!彼が出場した際の動画の再生回数は現在4000万回を越えています。

Q5 「ゴット・タレント」は史上最も成功したリアリティー番組フォーマットとしてギネス世界記録を保持、現在は194か国で放映され、2月からは日本にもやってきます。なぜこれだけの人気があるのでしょう?

A5 アメリカ文化に根付いているからだと思います。アメリカでは小学校で毎年1回『タレントショー』というイベントが開催されます。自由参加で、ステージでパフォーマンスを披露するというもの。歌あり、手品あり、楽器の演奏あり。正直、完成度はマチマチですが、自分の意思で立候補して、練習をして、大勢の観客の前でそれを堂々と披露するというのは、まさに『America's got talet』の小学校バージョン。観客は、出演する子供の関係者(家族や祖父母、いとこなどの親戚、ご近所さんまで!)を中心に会場がいっぱいになるほど集まります。こういった環境で育っているので、候補者が後を絶たない、またこういったタレントショーを観る事に興味があるのではと思います。ちなみに、America's got Talentの生放送を観客席で見た事があって、会場はアカデミー賞の授賞式などが行われるハリウッドのドルビーシアターで、キッラキラの舞台照明や華やかなステージに、放送が始まる前から客席は興奮状態でした。

●インドネシア・ジャカルタ在住 ミュージシャン・タレント・俳優・MC・翻訳・通訳と幅広く活動されている、加藤 ひろあきさん

Q1 インドネシアにも「ゴット・タレント」があるんですって?

A1 「Indonesia's Got Talent」としてインドネシアでも非常に人気の番組です。3ヶ月前にシーズン15が大盛況のうちに終わったばかりで、グランドファイナルには韓国の男性アイドルグループSuper Juniorのキュヒョンがスペシャルパフォーマーとして出演したことでも話題になりました。優勝は「Pasheman 90'」というチームで、日本体育大学が披露して世界でもバズった「集団行動」に似たような、大人数の人が一糸乱れぬ形で同じ動作をしていく形の出し物でした。このチームはGarutという地方都市出身のメンバーで構成され、インドネシア独立記念日の際に国旗掲揚の催し物を行う任務を担っている青年組織で、このような組織が優勝したことで大きな話題となりました。

Q2 「インドネシアズ・ゴット・タレント」で歌で活躍し、注目された方は?

A2 この番組からは歌で注目された人はあまり出ておらず、どちらかと言うとパフォーマー向けの番組となっています。2010年にソプラノのオペラ歌手として出場し優勝、2013年にはミスインドネシアに輝き、世界大会にも出場してる「ファニア・ラリッサ」さんが唯一歌手としての優勝者になります。

Q3 「ゴット・タレント」以外にも素人参加型の番組、あるんですか?

A3 歌ということで言うと、こちらも欧米フォーマットのインドネシア版の「The Voice Indonesia」「Indonesian Idol」「X Factor Indonesia」「Rising Star Indonesia」という4つの大きなオーディション番組があり、非常に高い人気を誇っています。この番組でトップ8くらいまでに残った参加者はかなりの確率でその後デビューを果たすことになります。現在では子供版の「Junior」シリーズも行われており、インドネシア各地から年齢問わず才能が集まっています。現在のインドネシア音楽界でもこれらのオーディション番組出身者が多く活躍していますが、なぜか優勝者がその後あまり大きな成功を収められないというジンクスもあり、それが面白いところです。さらにインドネシアオリジナルということで言うと、インドネシアには「ダンドゥット」というポピュラー音楽のジャンルがありますが、その「ダンドゥット歌手限定」のオーディション番組「D'Akademi」があり、非常に人気です。さらにはスタンドアップコメディの文化もかなり根付いていて、スタンドアップコメディアン専用のオーディション番組「SUCI : Stand Up Comedy Indonesia」も毎年行われており大好評。テレビで活躍するコメディアンも多数ここから誕生しています。

Q4 充実していますね!ちなみに、賞金は日本円でどのくらいなのでしょうか?

A4 Indonesia's Got Talent : 150万円+Hyundai STARGAZER (250万円相当)・The Voice:250万円・Indonesian Idol:150万円+Nissan Livina(280万円相当)・SUCI(Standup Comedy Indonesia):50万円+車一台(車種明かされず)+美容バウチャー50万円分

Q5 ところで、日本の「のど自慢」のような、一攫千金やデビューを目的としない素人参加番組というのもあるのでしょうか?

A5 そういったほのぼのしたものはあまり存在していないですね。子供が出ている番組でもオーディション番組であることには変わりなく、審査員から厳しい指摘が飛び交っています。一攫千金がオーディションの醍醐味ということで、テレビ局側もそちらのドラマ作りに注力しているように思います。