「FIFAワールドカップ カタール 2022」も、いよいよ決勝を残すのみとなりました。36年ぶりの優勝を狙うアルゼンチンと、2大会連続の優勝を狙うフランスが、日本時間の日曜24時に激突します。

さて、この時間はそのアルゼンチンと、惜しくもフランスに敗れてしまったもののアフリカ勢初の準決勝進出という快挙となった、モロッコの番組通信員の方にお話を伺います!

モロッコの首都・ラバト在住 / 千代島 諒平さん

Q1 アフリカ勢初の準決勝進出という快挙を成し遂げたモロッコ代表、これまでの戦い、現地モロッコではどう報道されていますか?

A1 グループステージ2戦目のベルギー戦勝利からは連日のように取り上げられていました。3戦目のカナダ戦の勝利から、メディア露出が一気に増え、決勝トーナメント初戦スペイン戦の勝利の時はまさにモロッコのワールドカップの歴史が変わった瞬間だったので、それはお祭り騒ぎでした。そして準々決勝のポルトガル戦の完封勝利です。報道もそうですが、街はすでに優勝したかのような雰囲気でした。

Q2 モロッコ代表の選手で活躍が称されている選手は?

A2 やはり、ポルトガル戦の超高打点のヘディングで決勝ゴールを決めたユセフ・エンネシリ選手が評価されていました。この選手はそれまで決定力不足かつ足元にボールが収まらないということで、「左足が二本生えている」などと揶揄されていましたが、ポルトガル戦で結果を出して、評価がガラッと変わりましたね。今度は「利き足は頭だ」なんて言われていましたが。あとは、パリ・サンジェルマンのアクラフ・ハキミやチェルシーのハキム・ツィエクの活躍はもちろんですが、守備陣営の活躍も注目されています。あと、選手ではないですが、レグラギ監督がすごく評価されています。実は少し前まで元日本代表監督のハリルホジッチ氏がモロッコ代表を率いていましたが、ワールドカップ前に電撃解任され、モロッコ国内リーグで指揮を執っていたレグラギ監督が就任しました。選手との信頼関係をすぐに構築し、ディフェンスチームを作り、結果を出したことで、モロッコではすでに英雄扱いをされています。

Q2 準決勝、フランスとの試合は、残念ながら0-2で負けてしましましたが、こちらについてはどうご覧になっていましたか?

A2 前半早々、フランスが先制しました。これには堅守速攻のモロッコもリスクを背負って攻めざるを得なくなりました。恐らく途中からモロッコは戦術変更したのだと思います。そしたら、今までの試合でポゼッションは捨てていたモロッコがプレスの強度を上げ、パスを繋ぎ、ビルドアップし、相手を崩しにかかるような強者のサッカーをするようになりました。これには驚きましたね。選手一人一人がボールロストを恐れず、自信をもってプレーしていたように思います。後半は、モロッコが押していましたよね。モロッコ側にも決定機が多くありましたし、スタッツを見るとポゼッションやパス成功率がモロッコの方が上回ってました。

ただ、課題だった決定力不足が結果に出てしまいました。結果、負けてしまいましたが、ナイスゲームだったと思います。ちなみに準決勝はフランスに負けてしまいましたが、街ではなぜかまたお祭り騒ぎ。深夜4時くらいまで外がうるさくて、寝られませんでした。

Q3 モロッコはフランスに統治されていた歴史もあり、因縁の関係なんですよね。このあたり、モロッコの立場からはどうだったんでしょうか?

A3 まさに歴史的にも政治的な意味でも大きな意味を持つ一戦でした。モロッコ側には一泡吹かせてやろうという気持ちがあったように思います。特に試合前のメディアの舌戦は面白かったです。モロッコ代表は国外で生まれ育ち、国外でプレーしている選手中心で「リアル国連チーム」などとの報道に対し、フランス代表はアフリカにルーツを持つ選手中心で、「モロッコはアフリカ連合と戦う」とモロッコ国内で報道されていました。

Q4 モロッコは3位決定戦でクロアチアと対戦しますが、こちらについてはどうでしょうか?

A4 クロアチアとはすでにグループステージで戦ってスコアレスドローでした。クロアチアが中盤を支配したものの、モロッコの的確なプレスと堅守速攻の徹底した戦術で両者とも決定機を多く作れずに終わりました。せっかくの大舞台、フランス戦で見せてくれたような強者のサッカーを見せてほしいと思います。

アルゼンチン・ブエノスアイレス在住 右下 量三さん

Q1 準決勝のクロアチア戦では3-0の圧勝でしたね!この結果、現地ではどうご覧になっていましたか?

A1 アルゼンチン代表、今大会で最高の出来と言える内容でした。前半の前半はともに様子見で、ポゼッションはクロアチアが圧倒も、突如、FWフリアン・アルバレス(マンC)の中央突破からPK獲得、これをメッシが決めて先制。さらに続けざまにフリアンが独力で中央突破で2点目。後半は、メッシが右サイドを一人で引き裂き、最後は中央で待ち構えるフリアンにラストパス、これを決めて3-0。フリアンは得点王争い(現在4得点)にも躍り出てきました。終盤アルゼンチンは、これまで未出場の選手全員を投入する余裕を見せました(日本でもおなじみのディバーラも今大会初出場)。逆にクロアチアはどうしたのか、これまで日本戦、ブラジル戦で見せた粘りのパフォーマンスを出せませんでしたね。。。

Q2 ブエノスアイレスの街の様子はどうだったんでしょうか?

A2 試合後、国中で代表のユニホームを着た国民が街に繰り出し大騒ぎ、首都ブエノスアイレスでも街のシンボルのオベリスコ周辺に大群衆が終結して祝いました。僕もちょうど帰宅途中の地下鉄の車内で、応援歌を歌いながら踊り跳ねる大集団に遭遇、しかも車内を叩いたりするので、電車が揺れる揺れる、こわかったです。だいたいいつもそうですが、準決勝、決勝あたりのカードになると、試合後の群衆の騒ぎ方も、こちらが身の危険を感じるレベルまでになってきます。また、こういう機会に便乗してどさくさに無意味に暴れまわる連中もいるので、気を付けたほうがいいのは事実です。まあ、文字通り国が狂喜乱舞しています。

Q2 いよいよ決勝でフランスと対戦、アルゼンチンは36年ぶりの優勝をかけた一戦となりますね!どんなところが課題と見られていますか?

A2 待ちかねた決勝のカードは、前回ロシア大会ベスト16で敗退(3-4)させられた宿敵・フランスとなりました。しかしその実力は今大会もナンバー1といえる破壊力と、当地の人も認めています。フランスでなくモロッコとやりたい、なんて声も聞かれるぐらい、恐れられていましたが、アルゼンチンにとっては前回の雪辱のチャンス、しかも新旧のスター、ンバッペVSメッシの、W杯決勝での対決となりました。準決勝のフランス・モロッコ戦を見ましたが、前半終わりから後半アタマにモロッコも何度か決定機を作っていましたね、とくにサイドから。決めきれませんでしたが、そのへんに攻略のヒントはあるのでは。アルゼンチンはンバッペ(5得点)を誰が止めるのか、止められるのか。で右サイドバックの人選が早くも議論されています。

Q3 そして、やはり気になるのはメッシの活躍ですよね。

A3 メッシはクロアチア戦で左太もも後ろを何度もさすっていましたが、試合前日に運動療法士のチェックを受けるという情報もあります。クロアチア戦翌日の14日は代表選手達はフリーとなり、日曜日の決勝を控え、家族と最後の団らんの時間を持てたようです。神童と言われ13歳からバルセロナに入団、あらゆるタイトルを取りつくし、個人としてもバロンドール7回、文字通り世界のサッカー界にはかり知れない貢献をしてきたメッシ。しかしアルゼンチン代表としては2005年から17年間にわたりプレーしながら、昨年のコパ・アメリカを取るまでタイトルに見放され、苦闘を続けてきた彼に、今、ついにサッカーの神様がほほえむ時がやってきたのかも?知れません。そして僕らはこの日曜日、その「時代の目撃者」になるのかも知れません。。。