秋は 文化 への造詣を深めるのにぴったりの季節。忙しい日々の中で、敢えてゆっくりと時間や手間をかけて、ひとつのことに向き合う、そんな「アナログな時間を楽しもう」をテーマに、アナログレコードを始めとして、手紙や本など様々なアナログに楽しめる、こと・もの・場所をお届けしています。お聞きのアナタはどうでしょう?

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アナログレコード、カセットテープなどのアナログメディアに触れる機会、増えていますか?「電子書籍より紙の本」など、敢えてアナログなものを選択したりしていますか?そこで、この時間は「アナログ事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方に回線をつないでお話を伺います。

●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん

Q1 2年前、アメリカではアナログレコードの売り上げがCDを上回ったことが話題になりましたよね?

A1 アメリカでのレコードの売り上げは2006年が最低で、およそ100万枚。そこから年々売り上げを伸ばして2020年には2300万枚を売り上げ、この年はレコードの売り上げが CDの 売り上げを上回りました。さらにこのレコード人気は伸び続けていて、昨年2021年は約4200万枚となっています。(前の年と比べて51%の増加となっています!)

Q2 どの世代がアナログレコードを買っているのでしょうか?

A2 35歳以下のミレニアル世代とZ世代が中心で、2021年のレコード売り上げの約72%を占めています。そして現在18歳から29歳の約60%がレコードプレーヤーを持っているそうです。

Q3 西海岸というと、老舗のCDショップ「アメーバミュージック」が有名ですが、店舗販売についてはどうでしょうか?

A3 「アメーバミュージック」のスタッフに聞いてみたところ、去年の4月1日にハリウッドに移転して、オープン当日はお店の周りに長蛇の列が出来て5~6時間待ったという人もいたそうです。その人気は今も変わりなく、現在も週末金・土・日曜日はかなり混雑しているそうです。客層を尋ねてみると、すべての年齢層の人たちが来るそうで、若い人たちはカニエ・ウェストやビヨンセなど若いミュージシャン、年配の方はオールドミュージックのレコードを買っているそうです。売り上げはオンライン販売よりも店舗での売り上げの方が上回っているという事でした。

Q4 ちなみに、カセットテープについてはどうですか?

A4 それなりの売り上げはありますが、レコードに比べるとそこまでの伸びはないようで、買って行く年齢層は少し高めだという事でした。 

Q5 音楽に限らず、紙の本や手紙など、アナログなものに触れる習慣が見直されているという実感はありますか?

A5 あります。今ちょうど年末に向けてホリデーグリーティングカードを作る時期で、一時期、emailやテキスト、SNSなどで挨拶を済ませる傾向にあったんですが、昨年2021年のホリデーカードの売り上げは、2年前の2019年と比べて14%伸びています。この現象について、ホリデーカードなどを扱う会社Paper Sourceのチーフは、ミレニアル世代の購入者が増えていて、彼らの間に流れるアンチデジタルの風潮が、心のこもった『リアル』を求めていると分析しています。

●インドネシア・ジャカルタ在住で、ミュージシャン・タレント・俳優・MC・翻訳・通訳と幅広く活動されている、加藤 ひろあきさん

Q1 インドネシアでは、アナログレコードやカセットテープなど、アナログメディアが再評価されているというような動きはあるのでしょうか?

A1 アナログレコードやカセットテープはこれらを収集しているコレクターが昔から今まで一定数確実に存在しています。ですが、ここ5年ほどアナログレコード熱が非常に高まっており、毎年3月9日の「National Music Day」や4月15日の「Indonesia Record Store Day」など様々な場所でアナログレコードが販売されるイベントが行われており、来場者数や売り上げもかなりあります。

Q2 ジャカルタにはアナログレコードやカセットテープを扱うお店、けっこうありますか?

A2 一定数アナログレコードを扱っている店があります。ジャカルタに「ブロックMスクエア」というモールがあるのですが、そこの地下一階は所狭しとレコード屋やカセット・CD屋が並んでいますし、数年前に若者が集う場所だった「パサールサンタ」にも同じように複数のアナログレコード屋がありました。ネット通販ももちろんあり、現在ではお洒落なアナログレコードのジャケット写真が載せてあるInstagramも多数あり、そこから購入することもできます。

Q3 若い方を中心にアナログメディアが見直されているんですね。ちなみに、レコードやカセットで購入されている音楽では、どんなものが多いのでしょうか?

A3 昔の洋楽アーティストのアナログレコードが多く目につきますが、同じくらい日本のレコードも販売されています。邦楽は70年代、80年代のレコードが多く、90年代のものもちらほらという感じです。やはりシティポップ大ヒットの影響は大きく、山下達郎、竹内まりや、松原みき、大貫妙子、角松敏生のようなアーティスト、さらにインドネシアで絶大な人気と知名度を誇るカシオペアのアナログレコードもよく見かけます。現代のインドネシアのアーティストの一部も積極的にアナログレコードを発売しており、主にインディーシーンで顕著です。インディーシーンを引っ張るバンドMoccaなどは毎作アナログレコードを発売しており、発売のたびに即完という状況です。

Q4 日本のフュージョンバンド、カシオペアが大人気なんですか!音楽に限らず、アナログなものに触れる習慣が見直されているとインドネシアで感じることはありますか?

A4 全体的な流れはもちろんデジタルにかなり傾倒していますが、それ故にアナログの大切さや温かさが見直されている側面はあると思います。インドネシアはデジタル化への関心が高く、その運用や適応もかなり早い印象ですが、アナログで運用されている部分もまだまだ多いのが現実で、その共存が社会の様々なところで垣間見えてそれが面白く、興味深いです。