さて、昨日、10月20日は「リサイクルの日」でした。1990年に「日本リサイクルネットワーク会議」が制定。この記念日が発展して、毎年10月が「リデュース・リユース・リサイクル推進月間」となりました。最近ではフリマアプリなどで中古品を個人間で売買することが増えたり、大手家電量販店が、中古の家電を整備して販売するリユース事業に本格参入するなど、リサイクルがより身近になっています。そこで、この時間は「世界のリサイクル事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方にお話を伺います。

●スウェーデン・マルメ在住 / 丹呉 由紀子さん
Q1 「リサイクル大国」と言われるスウェーデン、どういったところが進んでいると思われますか?
A1 「リサイクルステーション」という家庭ゴミの回収拠点があります。住民が歩いて行ける距離にそれを設置することが国で決められています。アパートなどの集合住宅には分別できるごみ置き場があります。いつでも好きな時にゴミを出せるので便利です。ペットボトルと缶、一部のビン類はデポジット制になっていて、購入する際に1~2kr(日本円で約12~24円)先に支払い、スーパーマーケットなどにある自動回収機によってお金が戻ってくる仕組みになっています。アップサイクル、創造的再利用という言葉が聞かれるようになり、副産物や廃棄物、役に立たないまたは不要な製品を、より良い品質と環境価値の新しい材料または製品にアップグレードして役立てるプロセスが日常に浸透し始めていて、地域で不要な製品を集めて、子供から大人を対象にワークショップを行ったりしています。リサイクルに対して意識を高めるため、子どものころからゴミ分別や材料に関しての教育と経験も大きく関係しているように思います。
Q2 生活廃棄物に限ると、なんと99%がリサイクルされているとか?!
A2 廃棄物を焼却し、「熱エネルギー」として利用するリサイクル方法、サーマルリサイクルと考えると、99パーセントがリサイクルされていると言えますが、「廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法、材料リサイクルとして考えると、例えばプラスチックの再生利用は2020年には、たった30%ほどで、ヨーロッパユニオンが2030年に向けてのゴールとして定めている50%にはまだまだ達していない状態です。
Q3 そんなスウェーデンでまだまだ課題があるんですね。さて、中古品を売買するサービスについてはどうでしょうか?
A3 個々に売買ができるアプリでは、オークションできるもの、また最近では手軽に売買できるFacebookマーケットプレイスが盛んです。売り手の住んでいる地域もある程度分かるようになっており、自転車や家具など大きな買い物は、直接受け取り受け渡しをしたりします。
Q4 中古やリユース品を扱うショップについてはどうですか?
A4 洋服や家具、食器、などを扱うリサイクルのお店は身近にあります。それからビンテージ家具やアクセサリーや陶器を専門に扱うお店、屋外フリーマーケット、また昔の屋根の瓦や煉瓦、アンティークの窓枠やドアなどを売る大型のリサイクルショップなどもあり、昔のものの方が質が良いので人気だったりすることも多く、年齢を問わず需要があると言えます。また、家電などのリユース品については、ミーレやエレクトロクスの掃除機や食洗機、AEGの電動工具、バングアンドオルフセンやソニーのオーディオ機器、ニコンやキャノンのカメラ機器は中古もよく見かけます。ちなみに、家電関係で売れるのは3~4年落ちまでくらいで、10〜15年落ちはあまり見かけません。
Q5 家電のリサイクルについてはどういうシステムになっているのでしょうか?
A5 大型の家電ゴミは、リサイクルセンターに個人で持っていくことが普通で、その場合は無料ですが、日本と同様に料金を払って引き取りに来てもらうサービスもあります。
●中国・北京在住、斎藤 淳子さん
Q1 単刀直入に聞きますが、中国のリサイクル、進んでいますか?
A1 進みつつありますが、リサイクルは近年になってようやく始まった感じです。基本的に安く作ってすぐ壊して・壊れて、すぐ新品を買う、というのがメイン。良いものを長く使おう、というコンセプトはまだ根付いていない。
Q2 まず、ゴミの分別について教えてください。
A2 政策上は2000年から北京、上海など全国8モデル都市で試行され、徐々に進んできたが、実態はほぼ丸ごとポイだった。全国約7割の都市で固体廃棄物を未処理のまま丸ごと有害物質と共に埋めてきたとも言われており事態は深刻。上海を皮切りに北京などで本格的にゴミの分別が義務化されたのは2019年。当時はどうやって分けていいのかわからないし、罰則もあるということで、プレッシャーから「ゴミは高速鉄道で(まだ罰則が無い隣の)杭州に行って捨ててくるのが一番手っ取り早い」という笑い話も出回ったほど。
Q3 家電のリサイクルについてはどうですか?
A3 初めてのリサイクル法の「廃棄電子製品回収処理管理条例」は2011年から施行(2019 年に修正)された。テレビ、冷蔵庫、冷暖房、洗濯機、パソコンの5つの家電の回収の業者資格や方法を定めた。中国では、政府の認可のない小規模業者による手作業の家電解体(残りのプラスチックの野焼きや有害物質の放置)が多いのが問題と聞く。19年の改正では違法な回収業者の営業停止、閉鎖、違法に得た収入の没収と罰金5~50万元(100万円~1000万円)など、厳しい罰則が新たに定められた。
Q4 リサイクルショップやフリマアプリなどについてはどうでしょうか?
A4 日本のビンテージ中古品は綺麗で基本的に偽でないということで、中国でも近年、人気で伸びているおしゃれなニュービジネス。タオバオやTモールでも、実店舗でも販売されている。フリマアプリも人気でたくさんある。私の周りでも革靴やセーター、お財布、本などを買ったことがある人がいる。
Q5 そのほか、中国のリサイクル事情でお話ししたいことはありますか?
A5 ゴミ出しの分別が面倒な人は、スマホのアプリからゴミ出し代行業に依頼することも可能。「代理(ごみ)回収工」という専門員がいて、上海の分別ごみ導入期には1日に1万トン以上のゴミを回収している、と報道された。ゴミの分別もしたくないという若くてリッチな人と、出稼ぎ労働者たちの豊富な労働力が存在し、それをデジタル技術が繋いでいる。こういう人たちのニーズに応えた商売を「怠け者経済」と中国語で呼ぶ。