きのう9月29日は「招き猫の日」でした。くる(9)ふ(2)く(9)の語呂合わせで、古来からネズミ駆除に貢献し、福を招くと言われている猫に由来した招き猫へ感謝の気持ちを表す日として「日本招猫倶楽部」が制定しました。

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招き猫といえば、たぬきの置き物とともに、飲食店など、和風なお店に飾られている印象がありますが、海外にはそういった「縁起物」ってあるんでしょうか?

そこで、この時間は「世界の縁起物事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方に回線をつないでお話を伺います。

●スウェーデン・ストックホルム在住 / 矢作 智恵子さん

Q1 日本の招き猫や「たぬきの置物」のような縁起物ってスウェーデンにもありますか?

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A1 ダーラヘストというものがあります。これは、スウェーデンの心のふるさとともいえるダーラナ地方で生まれた木彫りの馬(スウェーデン語でヘスト)です。日本では「ダーラナホース」とも呼ばれているようです。ダーラナ地方は古くから林業の盛んな地域です。ダーラヘストは、スウェーデンの伝統工芸品となっており、お土産としても喜ばれています。

Q2 木彫りの馬、ということですが、どんな色なんでしょうか?

A2 オリジナルの色はしゅう色で(現在は青、白、黄色、紫など様々な色があります)これはダーラナ地方にある銅鉱山から銅を産出される際に同時にできる赤い塗料が使用されていたからです。

Q3 ダーラヘストが縁起物とされている由来について教えていただけますか?

A3 起源は、18世紀初め頃、木を切る職業の人たちが遊び半分でおもちゃとして木彫りの馬を作ったのが始まりのようです。冬の日照時間が短い北欧では、外仕事は早い時間に終わってしまうので、仕事のあとストーブの前で雑談しながら、余った端材で木彫りの馬をよく作っていました。当時「馬」は、材木を運んだり森や畑で働いたりと人々の生活に欠かせない大切な存在でした。そんな馬を持つことは貧しい木を切る職業の方たちには難しく、せめてもの憧れの対象として木彫りの馬を作っていたようです。このダーラヘストの置き物を玄関に置いたのが始まりと言われています。 "幸せを運んでくれる"神聖な動物として、大切にされていました。特に赤い馬は演技がいいと言われているようです。

Q4 ダーラヘストは、どういう場所に飾るのでしょうか?

A4 普段は、リビングルームやベッドルームに置く場合が殆どです。スウェーデンは、白やシンプルなデザインをべースにしたインテリアが多いので、はっきりした色のダーラヘストはその場をぱっと明るくしてくれるアクセントにもなります。手作業による木彫りの馬は、よく見ると一個一個柄が違っていたりと個性的です。小さいものはマグネットぐらいの大きさから、特注でオーダーすれば人が乗れるぐらいの大きさまであります。通常部屋に飾るのは10㎝幅ぐらいのものでしょうか。

●インドネシア ジャカルタ在住ミュージシャン・タレント・俳優・MC・翻訳・通訳と幅広く活動されている、加藤 ひろあきさん

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Q1 インドネシアにも、日本で言う、招き猫や「たぬきの置物」のようなもの縁起物はありますか?

A1 3本足のカエルの置物は中国の風水からきているとされ、中華系インドネシア人が好んで置くことが多いです。中華系インドネシア人は全人口の3パーセントほどと言われているので、この縁起物をインドネシア全体と括るのは難しいですが、このカエルの置物は正しい位置におけば家や店に繁栄をもたらすと言われています。場所としてはお店のレジ横に置いてあったり、家に置く場合は入口のドア・扉の対角線上もしくは東南の方角に置くと良いとされ、赤い紙を下に敷くか赤いリボンを周りに飾るとさらに効果が増すとされています。

Q2 なぜ、カエルが縁起物なんでしょうか?

A2 中国のかつて言い伝えでカエルは口から金銀のコインを生み出すと言われておりそれが繁栄をもたらします。3という数字が天と地と人間を表すということからカエルの置物は3本足がデザインされていることが多く、場所や地域によっては「長生き」という効能もあると言われています。

Q3 他にもインドネシアの縁起物はありますか?

A3 ジャワ地方に伝わる、男女つがいの人形「ロロ・ブロニョ人形」があります。これは、その家庭に子宝をもたらすと言われています。子宝に恵まれるということはその家族、一族が繁栄することも意味するためそのような効果を謳う人もいます。家の庭に置くことで、子宝以外にも家族・隣人との人間関係を良好にする効果もあると言われています。家以外にはプンドポと呼ばれるかつて王様や地域の有力者に会う際に使われた謁見所に置かれていたり、結婚式の際に新郎新婦の近くに置かれたり、その他文化施設に置かれたりしています。

Q4 さまざまな人種、宗教が混在するインドネシアですから、置物以外にも縁起物、たくさんありそうですね?

A4 インドネシアでは何か新しいことを始める時、新しい場所で活動を開始する時、必ずと言っていいほど「Tumpeng:トゥンペン」という黄色いご飯が山型に盛り付けられたものを用意します。この黄色い山は「お金や財宝の山」の象徴で、その黄色いご飯の周りに6種のおかずが盛り付けられています。それぞれ、唐辛子とアンチョビ(カタクチイワシ)をすり潰した「サンバル」という調味料は原料として使用されているイワシのように精力的に動き続けられるように、雄鶏の肉と卵は強く勇敢に立ちはだかる障害を乗り越えられるように、空芯菜・ほうれん草・もやしはこれから行うことがどんどんと成長し、繁栄し、安全で平和に過ごせるようにという意味が込められています。通常これを食べる時は代表者が山を横切りに切り、おかずと共に皿に盛り付け、一番大切だったり、お世話になった人から順にどんどん配っていくという形で分け合います。