きょう、8月5日は「世界ビール・デー」です。

2007年、アメリカ・カリフォルニア州サンタクルーズで始まった記念日で、友人たちと集まってビールを楽しみながら、醸造会社などビール製造に関わる人たちに感謝をする日、なんだそうです。なかなか大勢で集まってビールを飲むのは難しい状況ですから、僕もひとりでプシュっとやっていますが・・・最近はクラフトビールのブームもあって、さまざまな味わいのビールを味わえるようになりましたよね。そこで、この時間は...朝からすいません!「世界のビール事情」と題して、2つの国、2つの街の番組通信員の方に回線をつないで、お話を伺います。
●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん
Q1 アメリカではクラフトビール(マイクロブルーとも言われていた)が昔から盛況ですよね?
A1 1976年に法律が変わって個人用消費であれば、家庭でビール醸造ができるようになり、その後、少量生産のビールへの課税が緩和され、そこからです。その後、大量消費見直しの傾向や、ビールや食事の嗜好の多様化、健康志向、エコ意識の高まりなどが追い風となってアメリカの地ビール業界はどんどん拡張。IPAやウィートビアー、スタウト、フルーツ風味のベルギー風ビールなど次々に新しい味が全米各地から登場してきました。2000年代になるとちょっと伸びが横ばいになったのですが、1990年代以降に生まれたミレニアル世代がお酒を飲めるようになった2012年ごろから地ビールの数は急速に増え始め、2021年現在で、9118箇所の醸造所があると言われています。ミレニアルはアメリカのコーヒーとビール、そして一部料理の消費市場を革命的に変えています。
Q2 アメリカのビールというと、バドワイザー、ミラー、クアーズ、ミケロブなどの大手ブランドが思い浮かびますが、大手の人気というのは?
A2 もちろん、全米の数字で見る限り、ビール業界全体のうち65.9%のシェアが従来の大手ブランド、13.1%がクラフトビール、残りの21%が輸入ビールです。やはり従来ブランドには根強い人気があるのですが、問題は、この数年の伸び。コロナ明けの復活傾向を見ても、ビール業界全体で1%の微増に比してクラフトだけ見ると8%も伸長しています。(Brewery Association調べ)
Q3 お酒が飲めるバーでもクラフトビールは提供されているのでしょうか?醸造所併設のブルーパブ/レストランもあるんですよね?
A3 実際にNY市の近所のバーを例に取るなら、デートやグループ交際で行くような(食事が出て、スポーツ中継用の液晶画面がない、またはあっても小さい)バーでは、生ビールのほとんどがNY地元産を中心としたクラフトです。一方、(主に)男がむしゃくしゃした時や贔屓のチームの大試合があるときに一人でこそっと入る「酒とスポーツ中継だけ」のバーとなると、バドライト、ミラーライト、クワーズライトなどの大手生ビールが前面に出ていて、全国区になった「グースアイランド(ミシガン)」とか「ラグニタス(カリフォルニア)」のような有名クラフトが隅にちょこっとある、そんな実感です。
Q4 アメリカのビールのおとも、おつまみにも変化はあるのでしょうか?コロナ禍でアメリカ、ご無沙汰していますが、ピクルスの揚げ物とか最高ですが
A4 かつて4大ビールが席巻していた頃は、フレンチフライ、出前ピザ、ポテトスキン、ナチョス、ポップコーン、プレッツエルなどジャンクに近いつまみが幅をきかせていましたが、地ビールブームと共につまみも進化して、ちょっと気の利いたブリューパブに行くと、枝豆、シシトウ、フマスみたいなベッジーなつまみも平気で並んでいます。しかし、何と言ってもここ数年、ミレニアル女子を中心に人気のつまみは「ブラータ」。日本でもおなじみのイタリアはプーリア地方原産の生チーズ。形状が特徴的で、モッツアレラチーズを薄く延ばして袋状にし、その中に"ストラッチャテッラ"と呼ばれる、細かく刻んだモッツァレラチーズと生クリームを混ぜたものをたっぷりと詰め、巾着のように閉じています。トマトと合わせてカプレーゼで食べるのが人気ですが、豆腐のような清々しい口当たりと味わいが、繊細な地ビールによく合います。
●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん
Q1 イギリスでもクラフトビール市場は盛り上がっているのでしょうか。
A1 はい、micro breweryと呼ばれる小規模ビール醸造所を含めると、イギリス国内に1,500~2,000のクラフトビールの作り手があるようです。イギリス各地を旅行するとご当地物のユニークなクラフトビールを目にします。スーパーでもいろいろ売っていますし、オンラインですとケース単位になりますが手に入れることができます。
Q2 パブでもクラフトビールが飲めるのでしょうか?
A2 ここイギリスで、クラフトビールが注目されるようになったのは、実は最近でなく1970年くらいのようです。背景を説明しますと、イギリスには現在、約4万7千のパブがあります。そのうち、約7割が大手ビール会社系のチェーンの経営、約3割が独立系となっています。馴染みのあるビールはいいけれども、たまには違ったビールを飲みたいという潜在的なニーズがあり、独立系を中心に大手ビール会社にはできないクラフトビールを産み出し、パブ好きに人気が出たのがきっかけです。ちなみに、クラフトビールの40%が、IPA(インディアン・ペール・エール)のようです。
Q3 ちなみに、内山さんがお好きなクラフトビールは??
A3 私の大好きなクラフトビールは、ウィスキーつくりで使う泥炭を使ったスモーキーなスコットランドのスカイ島のIPA(インディアン・ペール・ビール)です。
Q4 ところで、イギリスではビールを常温で飲む文化があるんですよね?
A4 そうなんです。これまた、歴史的な話になってしまいますが、イギリスではビールというと、大麦麦芽の上面発酵を使用した15度~20度で飲むエールビール(Ale)がもともと主流で、日本で主流のドイツやチェコをルーツとする冷えたラガーやピルスナーと呼ばれるビールは第2次世界大戦後以降に飲まれるようになりました。そのため、冷たくない=ぬるいという言い方には多分語弊があり、エールは常温で飲むものなのです。
Q5 イギリスのビールのおとも、定番のおつまみというとやはり「フィッシュ&チップス」ですよね?
A5 美味しいFish & Chipsを出している店もあり、さらに、ガストロパブという名で、料理をメインにレストラン的にパブを経営しているところも多いのも確かです。そういう店も魅力的ですが、イギリスのパブ文化的には、パブはビールを飲む場所で、友人と何時もかけ、何パイント(1 pint=568ml)も飲み、おなかがすいたら、近所のインディアンレストランなどに行くのが伝統です。ということで、ビールのつまみと言えば、ピーナッツやポテトチップスが主流です。
ムム~確か、ポテトチップスと言っても、確かイギリスでは違う名称ですよね?