あさって7月10日は参議院選挙投票日です。今回の選挙は参議院の定数248議席のうち、125議席をめぐって争われます。街では街頭演説や選挙カーで投票が呼びかけられ、テレビやラジオでは立候補者による政見放送が放送されています。また、2013年からはインターネットを利用した選挙運動も解禁となり、現在はSNSでも積極的に選挙運動が行われています。
さて、この選挙にまつわるルールやシステム、海外ではどうなっているのでしょうか?
この時間は、「選挙あれこれ」というテーマで、今年大きな選挙があった国、大きな選挙を控える国に回線をつないで、お話を伺います。
●フィリピン・マニラ在住、澤田 公伸さん
Q1 フィリピンでは今年5月に6年ぶりの大統領選が行われ、60年代半ばから、およそ20年独裁政治を続けた亡きマルコス元大統領の息子、フェルディナンド・マルコス氏が第17代大統領に就任しました。この日選ばれたのは大統領だけじゃないんですよね?
A1 はい、5月9日の統一選挙では正副大統領、上下両院議員の国政選挙だけでなく、州知事や市長、町長の地方自治体首長、そして州議会、市・町議会議員など地方議員にいたるまで一斉に選ばれました。
Q2 フィリピンの選挙は「6年に一度のお祭りのよう」なものだと聞きますが、今回はどのような様子だったのでしょうか?
A2 まさにお祭り騒ぎです。選挙集会には立候補者だけでなく、歌手や俳優、テレビタレントなどのコンサートや応援演説、ダンスチームによるダンス演技、時には美人コンテストなどが行われることがあります。18歳以上に選挙権があるため、大学で模擬大統領選の投票が行われたり、コンビニのセブンイレブンでは大統領選候補者の似顔絵入りのジュースのコップをジュース購入者が選んで人気投票を行い、その結果を店舗で公表したりしています。ちなみに、大統領や上院議員は6年ですが、下院議員や地方首長の任期は3年なので、3年ごとに中間選挙もあったりします。
Q3 美人コンテストまで・・・ちなみに、先の選挙での投票率はどうだったのでしょうか?
A3 今回の統一選挙の投票率は82.6%だったと報道されています。(有権者登録をした6740万人のうち5550万人が投票)
Q3 フィリピンの選挙のシステムについてですが、日本と大きく違う部分はどんなところでしょうか?
A3 まず事前に有権者登録をする必要があることと、そして自動投票システムを採用していることです。有権者は投票日にマークシート方式で自分の投票先をマークし(膨大な数の公職を選びます)、それを自動投票読取り機にかけて、投票の集計も自動的に行われます。
Q4 候補者の選挙活動や、メディアの報道などはどのような感じなのでしょう?
A4 中央選挙管理委員会やメディアが主催する候補者同士の政策討論会がこれまで選挙活動の目玉の一つでした。しかし、今回はマルコス・ジュニア候補が討論会参加をすべて拒否して公の場で政策をあまり議論できなかったことがニュースとなりました。あと、大統領選の候補者はテーマカラーを持っており、マルコスは赤、有力対抗馬だったロブレド副大統領はピンク、ドゥテルテ前大統領の娘のサラ・ダバオ市長(副大統領選に立候補)は緑、といった具合で、選挙集会ではこれらのテーマカラーの服を来た支持者らが集まり、一体感を醸し出しています。また、日本のような街頭演説はありませんが、街宣カーによる候補者名の連呼やテーマ曲をかけることはよくあります。
Q5 そのほか、フィリピンの選挙について澤田さんが感じていることは?
A5 フィリピンでは米国や日本のような政党政治が確立しておらず、政治家や地方首長、国会議員らは有力大統領候補の下に馳せ参じて党派を組むため、大統領が新しく決まるごとに国会の勢力図が変わり、政策の一貫性がなかったり、特定のセクターや国民の声が中央政府や国会に届かないという問題点があるようです。一国のリーダーを直接選ぶことの大変さを改めて感じます。
●アメリカ・ニューヨーク在住のジャーナリスト、津山 恵子さん
Q1 まず、アメリカ合衆国の最大の特徴は共和党と民主党による二大政党制であると言えますが、なぜ、第3党が台頭しないのでしょうか?
A1 合衆国憲法で2大政党を想定した選挙制度を定めているので、小さい政党などが出現しにくい。予備選挙をやって一党から候補者を一人に絞込み、一騎討ちするという選挙制度。大統領選挙は、それに加えて州ごとの勝者取り戦となっています。ただ前回の2020年の選挙の際、トランプ氏もバイデン氏も高齢だったため、若い人は第3党の若い候補者を望んでいた。
Q2 そのほか、アメリカの選挙のシステムで、日本と大きく違う部分を伺えますか?
A2 ●選挙活動が盛んで、政治家と支持者の距離が近いから感じる熱が異なる。集会にいくと、日本のように動員ではなくて、ファンが何千人と集まっている。
●バッジやTシャツなどグッズの販売も盛ん。
●メディアも選挙集会などを細かく報道する。地方議員の集会でも誰かがビデオを撮っている時代なので、問題発言などはすぐにSNSに出て、メディアもそれを報じるため、投票の判断材料が豊富である。
●党員登録の名簿があって、それで戸別訪問もできる。大統領選では、延べ数万人のボランティアが勝たせたい候補者のために訪問を繰り返す。取材で同行したことがあり、その熱意に驚いた。●その代わり、選挙カーで連呼という(意味のない)選挙活動はない。集会、電話バンク、戸別訪問が中心。
Q3 アメリカは11月に中間選挙を迎えます。支持率が低迷するバイデン政権に対する有権者の審判の場と言われていますが、争点となる課題についても伺いたいのですが・・・
A3 争点は、経済、つまりインフレ。バイデン政権は、上下院ともに過半数を失う予想が出ている。インフレ率は8%を超え、物価が上がり続けて市民生活を直撃している。バイデンの支持率はこのため、30%代と政権発足以来最低。以前は中間選挙で下院が共和党に過半数を取られるとされていたが、今の予想は上院の過半数をも失うというもの。政権後半がレームダック(「役立たず」「死に体」の意)になる見込み。
Q4 また、保守化/右傾化著しい米最高裁の判断も気になります。(中絶禁止の拡大、温暖化対策の後退&銃規制を阻むなど
A4 連邦最高裁は、今のアメリカの最大の問題。中絶支持も温暖化対策、銃規制の強化は、国民の過半数が支持している。それにも関わらず、最高裁で逆の判断が出るという捩れの現象は、アメリカ社会に大きなストレスを生んでいる。最高裁判事は、終身制なので、今後これが数十年続く。今後は、同性愛者の結婚や避妊薬、異人種間結婚を禁止する判断なども出てくると言われていて、国内での人権がどんどん奪われている危機的状況。