時事問題から生活の実情まで、世界中の視点を並列して探ります。きのう、6月23日は沖縄「慰霊の日」でした。沖縄戦、最後の激戦地となった糸満市の「平和祈念公園」で、「沖縄全戦没者追悼式」が開かれ、参加された方々は犠牲者を悼み、平和への祈りを捧げました。さて、海外にも、戦争で犠牲になった方々を追悼する日があります。今朝は2つの国を結んで、「慰霊の日」事情を伺います。

●アメリカ・ロサンゼルス在住 / 手島 里華さん

Q1 アメリカで戦没者を慰霊する日といえば、5月最終月曜日の「戦没将兵追悼記念日・メモリアルデー」ですが、概要について教えてください。

A1 メモリアルデーはアメリカの歴史で唯一の内戦とも言われている、1861年に起きた「南北戦争」と関係しています。この時に亡くなった北部の州の戦没者のお墓を"飾り付ける"という習慣が生まれ、これが「メモリアルデー」の始まりとなりました。そして第一次世界大戦後には、すべての戦争のアメリカ軍の戦没者を追悼する日になりまして、1971年からは祝日に制定されました。

Q2 「メモリアルデー」、公にはどんな催しがあるのでしょうか?

A2 各地で現役の軍人が参加する大型パレードやライブ、セレモニーやストリートフェアなどが開催されます。例えば大きなイベントでは、NYで海軍や海兵隊、沿岸警備隊員およそ3000人が、タイムズスクエアや911メモリアルなどを訪れて、市内各地でデモンストレーションを行う『フリートウィーク』が今年は3年ぶりに開催されて、海軍の強襲揚陸艦などがハドソン川をパレードしたり、実際に軍の船の中を見学する事が出来たりと、陸軍(Army)、空軍(Air Force)、海軍(Navy)を身近に感じられるイベントが各地で開催されます。こういった大型のイベントもあれば、私の地元ではメモリアルパークという名前のついた一般的な公園の片隅に、この街から戦争に行って亡くなった人の名前が刻まれた小さな石碑が飾られています。『湾岸戦争で亡くなった〇〇さん、当時25歳』などと書かれていて、こういった小さな街の公園でも国旗が掲げられ、ユニフォームを着た楽隊が来て厳かなセレモニーが行われます。

Q3 市民のみなさんはどのように過ごされるのでしょうか?

A3 アメリカの学校はこのメモリアルデー辺りが学年末で、この直後に夏休みがスタート!という場合が多いので、もうすぐ夏休みが始まる!というウキウキした空気が広がる時期。しかも毎年3連休なので、一足早くバケーションに出かけたりする家族も多いです。もちろんお墓参りをする人も多く、この日はお墓近くの道端で花束を売っている光景がよく見られて、しかも赤とかオレンジとか色のはっきりとしたお花が売られているので、この時期の墓地はとても華やかになります。そして一緒に小さなアメリカの国旗を飾る方も多いです。

Q4 なるほど、そうなると家族集まって過ごす日というイメージですね?

A4 日本と大きく違うのは、お墓でピクニックをしている姿をよく見かける事。アメリカの墓地は、広い草原に整然と墓石が並んでいるという風景が多くて、隣の墓石との間に空間があります。このスペースにピクニックシートを広げて、持って来たランチや飲み物を広げてワイワイしている光景はよく見られて、こちらではお墓参りは『亡くなった家族と楽しい時間を過ごすもの』というイメージが強いです。

Q5 さきほど、陸軍、空軍、海軍のイベントがあるというお話がありましたが、やはり、アメリカは軍の存在が身近なんですよね?

A5 とにかくアメリカは軍に所属した方々に対してリスペクトする習慣があります。例えばメジャーリーグの試合会場に現役の隊員が観戦に来てると、攻守交替のタイミングでその姿をスクリーンに映し出して、場内アナウンスで隊員の名前を紹介して観客から拍手を受ける・・・とか、こういったシーンは多くの観客が集ま場所で頻繁に見かけられます。あとは入場料も(博物館とか)でも、軍関係者の料金は別料金だったりと、特別な存在なんだという事を多くのシーンで感じます。そういった方々が実際に戦争で命を落とされたわけですから、特に戦没者の家族にとっては特別な1日になっています。

●フランス・パリ郊外でレストラン「ヴェルチュ」を営む、柳瀬充さん

Q1 フランスで戦没者を慰霊する日について教えていただけますか?

A1 1918年11月11日にフランス・コンピエーニュの森で署名された、第一次世界大戦の休戦協定の締結により、4年間続いた戦闘に終止符を打ちました。毎年この日は、犠牲者を追悼する「アルミスティス・第一次世界大戦休戦記念日」という祝日になっており、フランスの他にもベルギー、セルビアでも休日として祝われているようです。2018年には100周年記念行事も行われました。なお、第二次世界大戦の慰霊祭は毎年5月8日に行われています。この日はフランスだけでなくヨーロッパ全土が平和のために祈りを捧げています。

Q2 11月11日の「第一次世界大戦休戦記念日」はフランスではどのような催しが行われるのでしょうか?

A2 その日は、凱旋門の下にある無名戦士の墓で大統領によるセレモニーがあるほか、シャンゼリゼ通りにて軍事パレードも行われています。この日は、全国各地で慰霊碑に参拝する人が多く、パリ市内でも通行止めが多く大変混雑するので、テレビでセレモニーの中継を見て過ごす人も多いようです。

Q3 フランスでの「慰霊の日」について柳瀬さんが感じることはありますか?

A3 日本では第二次世界大戦の方がインパクトがありますが、フランスにとっての第一次世界大戦の方がはるかに壮絶なものだったようで、休戦記念日はフランス軍にとっても待ち望んだものだったのだと思いました。

Q4 さきほどアメリカのお話しでも出てきましたが・・・フランスのみなさんにとって軍隊・兵士のイメージ、ステータスというのはどういうものなんでしょうか?

A4 フランスの国民から見て、軍人は英雄、というイメージで尊敬されています。例えば電車や飛行機などの交通手段、またディズニーランドなどの施設でも特別料金が適用されます。