きょうは「昭和の日」ですが、あす4月30日は「図書館記念日」です。昭和25年の4月30日に、図書館の設置や運営に関して必要な事項を定めた「図書館法」が公布されたことにちなんで制定されたそうです。そこで、この時間は2つの国を結んで、各地の「図書館事情」をチェックします。

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●ブラジル・リオデジャネイロ在住 / 藤井 陽樹さん

Q1 ブラジル(リオデジャネイロ)には図書館はたくさんあるのでしょうか?

A1 公立図書館は一部の地域に少しあるだけで私の家の近くにはありません。ブラジルでは本を借りて読むという習慣がほとんどありません。ただ、学校によっては図書館があり、そこで本を読んだり借りたりすることができます。

Q2 リオデジャネイロには何やらすごい図書館があるそうですね?

A2 はい、ポルトガルからの移民によって19世紀に創設された「王立ポルトガル図書館」というものがあります。これは母国ポルトガルの書籍を提供するために創設されました。天井近く3階まで設けられた書棚と、そこに整然と並ぶ35万冊以上の古書。天窓のステンドグラス、吊り下げられたシャンデリア、青い壁、装飾的な柱、光沢を放つ机と椅子など、まるでヨーロッパの大聖堂の中にいるかのような気持ちになります。ですので図書館というより、教会、博物館のような雰囲気があるので、「幻想図書館」と呼ばれたりすることもありますね。

Q3 この王立ポルトガル図書館、本を手に取ることができないとか?!

A3 そうなんです。それぞれの本が古くいい味を出しているので手に取りたくなるんです。でも、一般の人が本に触れることは禁止。いずれも貴重な古書のため、特別な許可を受けた専門家しか、本を手にすることは許されていません。この図書館は、一般の人は本に触れることさえできない、実に不思議な図書館なんです。ただ、一つだけ抜け道があって、図書館公式サイトにアクセスすると一部の資料(19世紀当時の手紙など)が画像データとして公開されているのです。19世紀にポルトガル人はどんな手紙を書いていたのかなどがわかります、雰囲気だけですが。

Q4 ということは、やはりブラジル(リオデジャネイロ)には一般の方が利用できる図書館が少ないということですね?

A4 小さい子どもがいる我が家は日本の図書館がとても恋しいです。あんなに静かで清潔でたくさんの本があって無料で借りられるなんて。。。ブラジルでは不可能な体験なので、いつもため息をついています。

●台湾 / 片倉 佳史さん

Q1 台湾の図書館事情ですが、近所に当たり前にある存在なのでしょうか?

A1 はい、日本並みか、それ以上に充実している印象です。都市部では各区ごとに図書館がありますし、小さな町でも図書館はありますね。読書会や著者を招いてのトークショーなども頻繁に行われています。台湾の場合、雑誌類が充実していることが印象的で、日本の雑誌を定期的に入れているところも多く、日本語学習者やこちらに留学している学生にとって、「嬉しい空間」になっています。ただ、ちょっぴり残念なのは本が古い。(よく読まれていることの裏返しですが)

Q2 中国では政府に都合の悪い書物を図書館職員が燃やす「焚書」が行われ、批判が集まりましたが、台湾の図書館への影響はあるのでしょうか?

A2 台湾では政府が書籍の内容を検閲したり制限をかけたりすることはありません。昔はあったのですが、1990年代後半から進められた民主化政策によって、判断は民衆それぞれがするという考えが浸透している印象です。自由な出版、自由な読書というものが民主主義の証だと思われています。

Q3 CNNの「世界で最も美しい図書館」にも選ばれた図書館が 北投(べいとう)という温泉街にあるそうですね?

A3 はい、台北市立図書館北投分館は新しいタイプの図書館というコンセプトで親しまれています。「エコ建築」、台湾では「緑建築」というのですが、

  1. 自然に優しい設計
  2. 風景との調和
  3. 人にも優しい
  4. 省エネ設計 というコンセプトがあります。

具体的には、ここは公園の中にあるのですが、周囲の緑に合わせ、図書館は低層で茶色い落ち着いた色合い(遠くから見ると、森のように見え、人工物という感じがしない。自然光をふんだんに取り込み、明るい館内(省エネ設計)。 書棚の高さが子供に合わせ、1メートルあまりなのですが、そのため、窓の外の緑が常に見えるという設計にもなっています。屋上には太陽光発電のパネルが並び、雨水は噴水やトイレに利用されます。資材も再利用したものが用いられ、再生可能なものを積極的に用いています。私のお気に入りは、広いベランダです。生い茂った緑を楽しみながら読書が楽しめます。小鳥のさえずりが常に聞こえ、リスが遊びに来たりします。

Q4 さらに、片倉さんがおすすめしたい、すごい図書館があるとか?

A4 公共の図書館が充実する一方、有料制の図書館もあります。私が好きなのは、台北市松山というところにある「不只是圖書館」なのですが、戦前のタバコ工場だった場所をクリエイティブ空間に再生させています。ここの図書館はなんと、大浴場だった場所を図書館にしています。大きな湯舟や洗い場などを丁寧にリノベーションし、その回りに本が並んでいます。雰囲気は風呂場そのものなので、そこで読書をしている人がいるのは新鮮だったりしますね(笑)。ちなみにチケットは「蔵書票」を模したもので、持ち帰り可能です。