きょう、3月4日は「サッシの日」なんだそうです。3(サ)と4(シ)の語呂合わせで、日本のサッシメーカーが制定したそうです。サッシ・・・窓枠として用いる建材ですね。

住宅用サッシの材料、かつては木材が主流で、その後アルミ製が普及、そして、今はより断熱効果の高い「樹脂製」が誕生しているのですが、樹脂製サッシの普及率、日本はいまだ20%台と、海外に比べてかなり低いんだそうです。そこでこの時間は、2つの国を結んで、窓、特にサッシについて、現地の事情を伺います。
●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん
Q1 アメリカでは樹脂性サッシの普及率が60%を超えているそうですね。この普及率の高さ、どういう理由があるんでしょうか?
A1 脱化石燃料、脱炭素が常識となっているアメリカでは、エコ効率が圧倒的に良いと言う理由で、塩化ビニール製の樹脂製サッシを全面的に推奨する傾向があります。さらに、州によっては、アルミ製窓サッシを「違反」扱いするところも。例えば、環境保護に最も敏感な州として知られるカリフォルニアでは、「カリフォルニア住建基準規約」中で、「アルミサッシは熱伝導効率が高すぎるため、冷暖房費がかさみ、州の基準を満たさない」と明記しています。新たに住宅を建築したり、改築工事を計画している家主は、この基準規制を遵守しないとなりません。そのため、勢い、塩化ビニール製のサッシを使わざるを得ない状況が出てくるわけです。アメリカは建材の標準化がものすごく進んでいて、窓枠やドアのサイズも全米で決まっています。それだけに、素材の規制などもかけやすいのではないかと「察し」ます。
Q2 カルフォルニア州以外では、やはり冬の寒さが厳しいエリアでアルミ製サッシが規制されているんでしょうか?
A2 断熱というととかく寒冷地を想起して、僕も、これは寒冷地だけの問題かと思っていましたが、さにあらず、南部テキサス州でも「エナジー・スター」という基準規約を設けて、アルミサッシの使用を避けるように行政指導しています。まだアルミサッシを使っているお家は、「塩化ビニール製サッシに取り替えましょう」的な窓枠業界の思惑があるようです。アメリカはご存知のように、DYIのリノベが盛んですので、業者もブログで直接消費者に塩ビサッシの売り込みをかけていたりします。「アルミvs塩ビ」のガチ対決コーナーもあります。それだけ大きな問題なのでしょう。
Q3 一方、集合住宅ではどうなんでしょうか?
A3 「アルミvs塩ビ」議論は、主に個人住宅(一戸建て)が抱える問題らしく、ニューヨークのような集合住宅では、個人の一存でサッシを変えるわけにもいかず、また暖房費も大家や管理事務所マターだったりするため、あまり話題には上りません。ちなみに、築82年の我がアパートもアルミサッシ。冬になると、素手で触れないほど窓枠が冷たくなっており、どう見ても断熱とは程遠いです。そもそも暖房自体もボイラーでスチームを還流させる前世紀の遺物ですから、エコへの道のりは長い。サッシが塩ビに変わることはしばらくないでしょう。
●ドイツ・ミュンヘンにお住い / 町田 文さん
Q1 環境大国ドイツも樹脂製サッシの普及率が高いと聞きますが・・・
A1 2014年のデータですが、ドイツでは合成樹脂(プラスチック)が58%金属製(主にアルミ)が18%、木材が15%木材と金属(主にアルミ)の混合が9%となっています。ドイツ市場では1950年半ばに塩化ビニール樹脂製のサッシが販売され始めました。現在は主に低価格な硬質ポリ塩化ビニールが使用されています。塩ビの価格以外の利点は耐久性、耐候性、断熱性が高いこと。また、遮音も問題ないため、マンションに設置されていることが当たり前となっています。
Q2 木製サッシもまだまだ多いのでしょうか?
A2 木材のサッシはデザイン性が売りで、一軒家で利用されることがあります。私にはドイツ人の夫がいるのですが、彼のご両親の家もバルコニー、ドア、窓などが木製です。(日本でも知られているドイツの木組みの家も、窓が木製だったりします。)しかし耐候性を保つため適度なメンテナンス(コーティング剤を塗るなど)が必要という欠点があります。
Q3 町田さんのご自宅は樹脂サッシでしょうか?
A3 私はドイツ国内で2回引っ越して、今は3つ目の住宅ですが、今まで全ての窓は樹脂サッシでした。ドイツでは賃貸住宅に対し家主が部屋を最低20度の室温(6時から23時。夜は最低18度)で提供できるように配慮しなければなりません(賃貸借法)。 そのため、暖房が効くことは無論、断熱性を配慮した建物づくりが当たり前とも言えます。ドイツの建築省エネ法では窓を含み、建物の各部分にある程度断熱性が求められており、断熱材の厚さなどが決められています。
Q4 樹脂サッシは遮音性も高いようですが、実感はありますか?
A4 樹脂製サッシ窓の遮音性はなかなか良いです。道路沿いの一階に住んでいますが、車の急ブレーキ・急スピードと救急車などのサイレンが聞こえるぐらいです。ただ、開けると道路の騒音が一気に聞こえてくるので、夏のことを考えて道路沿いの部屋は寝室にしない方が良いです。(ドイツの住宅にはクーラーは付いていないので)