きょう、12月3日は「個人タクシーの日」です。1959年のきょう、初めて個人タクシーの営業許可が下りたことから一般社団法人全国個人タクシー協会により2009年に制定されました。

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海外では「Uber」などが、ライドシェアビジネスを展開、既存のタクシー業界と、しのぎをけずっています。日本では、既存のタクシーやハイヤーが充実していることや、法令順守の必要性から、Uberがタクシー会社と提携してアプリ配車サービスを提供しているという現状があります。そこで、今朝は世界の「タクシー事情」と題して、2つの国の状況を伺います。

●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん

Q1 ニューヨークのタクシーといえば「イエローキャブ」ですよね。イエローキャブとウーバーやリフトなど新しいサービスとの関係はどうなっていますか?

A1 ウーバーの誕生は2009年。10年後の2019年に株式を公開。2021年の第2四半期の総売上が39億ドル。収益が11億ドルと言いますから、NYのイエローキャブとは企業規模が雲泥の差です。ちなみにNYのタクシー「イエローキャブ」は営業台数が13587台に制限されており、営業権が投機の対象になるほどでしたが、コロナ禍で、総台数の3分の2が廃業に追い込まれたそうです。

Q2 コロナ禍でイエローキャブが激減しているんですか!?その背景について教えてください。

A2 ロックダウンやテレワークの増加でビジネス利用が激減。通勤しないのですから利用がない。またテレ会議とかですから、移動も少ない。これが原因で本当にタクシーの利用がなくなってしまったんですよね。

Q3 現在、タクシー料金はどのくらいでしょうか?

A3 初乗り、というのはなくて:ベース料金=2ドル50セント、走行1キロあたり1.56ドルを加算、という考え方です。ただし早朝、夜間、休日は「割増」がありますが、日本よりは安い感覚です。

Q4 いわゆる個人タクシーも走っていますか?

A4 はい。Liveryといって、商業用乗用車があります。白タクというわけでなく、彼らもタクシー・リムジン委員会の管轄下にある正式なドライバーです。個人タクシーは、流しでは客を拾えないので、地域密着型のきめ細かいサービスが売りです。個人タクシーもコロナで大打撃うけてます。あと、ニューヨークには、イエローキャブの向こうを張ってグリーンキャブというのもあり、マンハッタン以外のエリアでのみ営業が許されています。空港やマンハッタンでは客を拾えない。マンハッタンの特定エリアにしか行けない、などグリーンの方は規制が多いです。そもそも10年ぐらい前にイエローの数が不足した時に、市が思い切って導入したのですが、Uber, Lyftの台頭であっという間に下火。そこにコロナの直撃があって、イエロー以上にグリーンは種の存続が危ぶまれています。

Q5 ニューヨークは移民のドライバーさんが多い印象ですが・・・

A5 出身国別にみると、現在最も多いのがバングラデシュ。そして、ナイジェリアやセネガルなど西アフリカ諸国。少し前は、エジプトとハイチが多かったです。さらにその前はギリシャとロシア。東アジア系は少ないですね。性別では圧倒的に男性。年齢は、中高年(高齢者)が目立ちます。これがウーバーなどのライドシェアになると、ぐっと若くなり、白人ドライバーも多いです。

●イギリス・ロンドン在住 / 内山 昇さん

Q1 ロンドンといえば、ブラックキャブですよね。

A1 英国交通局の調査によるとイギリスには約25万台のタクシーが運行されています。そのうち、Blackcabのライセンスを持つタクシーは23%(約6万台)、残りの77%(19万台)は、minicab(ミニキャブ)と言われるタクシーです。 Blackcabとminicabの違いは、Blackcab Public Carriage Office (PCO)と呼ばれるロンドンタクシー協会が実施する厳しいテストに合格したグリーンバッジを持つライセンスドライバーのみが運転しているタクシーでその名の通り、黒が基本です。ブラックキャブは事前予約の他、街中で乗客をひろうことができます。ちなみに料金は距離・メーター制。これに対し、ミニキャブとタクシーは、電話やインターネットなどによる予約制のハイヤーサービス。つまりA地点からB地点の移動のみサービスとなります。料金は固定という違いです。

Q2 ロンドンでもUberなどの配車サービスは普及していますか?

A2 UberがUKでサービスを開始したのは2012年。Uberは、先ほどのミニキャブのカテゴリーにあたります。イギリス国内で約6万人がドライバーとして登録し身近な存在になっています。他国同様、ライセンスタクシーと市場で競合し軋轢を起こしていたり、ギグワーカーと呼ばれるドライバーの雇用契約条件などで2016年から裁判で争われています。

Q3 乗車料金について教えてください。

A3 まず、ベースレートが£3.2で、そこから走行メーターが動き、1マイル(約1.6キロ)だと6.2~9.6ポンドくらいです。この変動部分が、走行距離と時間帯(日中なのか、夜なのか)により変わってきます。この点、NY同様の仕組みですが、ベースレートが500円くらいで、そのあとは距離・時間帯のメーターで加算され、3キロで1500円くらいでしょうか。しかし、忘れてはいけないのは、ロンドンでは渋滞税があり、一般車両がロンドン市内に入るときは15ポンド(1日、約2300円)、また他、環境車以外の車は12.5ポンド=1900円を別に支払わなくてはいけないため、ロンドン市内で移動する際は、自家用車で移動するより、タクシーの方が断然安いという構図になっています。また、市内は、バス・タクシー専用レーンが数多くあり、移動する場合はこのレーンを走れるブラックキャブのほうが、ミニキャブよりも断然早いです。ブラックキャブの優位性はこんなところにあります。ミニキャブは時間と距離によりますが、ブックキャブ対比で3~4割安いイメージでしょうか?(こちらはメーターでなく固定制)

Q4 以前はディーゼル車で酷い騒音と振動でした。今はどうなんでしょうか?

A4 最近では、環境規制のため新型EVが導入されています。

Q5 コロナ禍によるタクシー業界への影響はありますか?

A5 イギリスのタクシーは2005年の18万台から2019年の28万台まで増加しましたが、昨年2020年コロナのロックダウン影響で16%減の25万台となり厳しかったようです。今年はロックダウンも緩和されたので人の動きが活発化してきてはいますが、レストランなどへの外出を控える人も多く、その反面、Uber Eatなどの電気自転車のデリバリーサービスが街を忙しく走っています。また、人手不足なアマゾンやネットスーパーは多くの人を募集しており、こういった分野に転向した方もいるようです。