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ご近所に本屋さん、ありますか?以前はあったのに、なくなってしまったという方もいらっしゃるかもしれません。書店調査会社・アルメディアの調査によると、2000年の時点では2万店以上あった日本の書店の数が、昨年・2020年5月の時点で、およそ1万1000店、さらに、売場面積を持つ実店舗に限ると、1万店を下回ったそうです。20年で半分まで減ってしまったんですね...。背景には、ネット通販や電子書籍の台頭、活字離れなどが原因と言われていますが、そんな中、カフェを併設した本屋や、番組でもご紹介した、ビールが飲める本屋、泊まれる本屋など、体験をセットにしたコンセプト型の書店も増えてきています。そこで、この時間は世界の「書店事情」と題して、2つの街の状況を伺います。

●香港在住 / ラム 恵子さん

Q1 香港では、ここ数年、書店の店舗は減っていますか?

A1 残念なことに"激減"と言えるくらい減っています。特に英語の本を扱う書店や個人経営の小さな書店が、ここ数年でたくさん閉店しました。

香港に住む私達日本人にとって大切な日本語の本や雑誌を売る日系書店も閉店が相次いでいます。

Q2 本屋さんが減っている背景は?

A2 世界共通だと思うのですが、通販と電子書籍の影響が一番大きいと思います。特に香港の若い世代では、携帯電話でYouTubeやSNSに費やす時間が増えて活字離れがおこっているのも理由でしょうか。英語や日本語の書店が減った背景は、香港に駐在や永住する外国人や日本人の数が全体的に減っているので仕方ないとあきらめています。

Q3 検閲の強化によって、販売される書籍、また、書店の経営自体への影響はありますか?

A3 去年に国家安全法が施行されて以来、新聞などのメディアや出版物に対する検閲は大変厳しくなっていて検閲対象に成りかねないような政治関係の本は、全く販売されなくなっています。政治的な書物を多く取り扱っていた書店は経営できず、あっという間に軒並み閉店しました。

Q4 香港にも、ただ本を売るだけではない、体験など付加価値を売りにした本屋さんは増えてきていますか?

A4 既存の書店の中には、営業を続けるために書籍だけでなく文具やおもちゃ、雑貨、果てはミニ盆栽などまで一緒に売る書店が出て来ています。私自身が一番好きなのは、香港らしいレトロな中国茶カフェを併設した書店です。

●オーストラリア・メルボルン在住 小林純子さん

Q1 イギリスの団体「World Cities Culture Forum」の調査によると、人口10万人当たりの書店(実店舗)の数が、リスボンが41.6店、メルボルンが33.9店と世界の都市の中でも群を抜いて高いようですが、本屋さんが多い実感はありますか?※東京は12.2店 ただし、データの調査年度がバラバラなので、あくまで1つの指標にすぎませんが・・・

A1 書店だらけという感じはしませんがコンスタントにあるという感じです。特に雑誌やペーパーバックを販売するニュースエージェントも含めるとその数はかなり多いと思います。

Q2 オーストラリアで本屋さんが元気な理由、背景はどんなところにあるのでしょうか?

A2 オーストラリア、特にメルボルンではとにかく本を読む人が多いからではないでしょうか?ちなみに図書館の数も非常に多く、ブック・クラブ(本を読んでトークする集い)も多いと聞きます。また、メルボルンはピーター・ケアリーやヘレン・ガーナーなど多くの著名な作家や、ロンリー・プラネットといったガイドブックで世界的に有名な出版社の本社も輩出しているほか、例年多くの文学フェスティバルが開催されることも関係しているのではないかと思います。ちなみに2008年にメルボルンはユネスコから世界で二番目にシティー・オブ・リテラチャーに指定されました(最初の街はイギリスのエジンバラ)。他国に比べて系列の本屋さんより、インディペンデントの本屋さんが興隆しているのも特徴です。

Q3 市民の皆さんにとっての本屋の存在について教えていただけますでしょうか?

A3 身近な存在、なくてはならない存在ではないかと思います。当地はCOVID世界一長い間ロックダウンを経験しましたが、ロックダウン中のクリック・アンド・コレクト(ネットで注文してピックアップすること)による本の購入だけでは得られない本屋さんに実際に行くという喜びを感じている人は多いのでなないかと思います。

Q4 オーストラリアにも、何か体験をセットにしたような、コンセプチュアルな本屋さんもありますか?

A4 嗜好を凝らしたコンセプチュアルな本屋さんがいっぱいです。本だけではなく、アートな小物を取り揃えていたり、カフェを併設している本屋さんや、座り心地の良い椅子を用意している本屋さんも少なくありません。また、大人向けの本屋さんと別途、子供およびヤング・アダルト向けの本のみを扱った特設店舗も多いです。作家によるサイン会やトークなどのイベントを開催する書店も多いです。