今週末31日は「ハロウィン」です。もともとは、ヨーロッパが起源と考えられている祭り。古代ケルトでは、11月1日が新年とされ、大晦日にあたる10月31日の夜にご先祖様の霊が家族に会いに戻ってくる。しかし、悪霊も一緒にやって来て、作物に悪い影響を与えたり、子どもをさらったり、悪いことをするといわれていました。そこで人々は悪霊を驚かせて追い払うことを思いつき、仮面をかぶったり、仮装をしたり、魔除けの焚き火を行ったといわれます。現代では特にアメリカで民間行事として定着、本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっていると言われています。そこで、この時間は「ハロウィン事情」と題して、2つの国のコロナ禍でのハロウィンの様子を伺います。

●アメリカ・ニューヨーク在住 / 中村英雄さん

Q1 まずはアメリカ(NY)のハロウィンといえば、やはりパレードですよね?

A1 ニューヨークでも毎年、近隣コミュニティでハロウィン・パレードが行われますし、職場や学校でも仮装大会やハロウィン・パーティーで盛り上がります。コスチュームは、一年中営業している専門店でも売ってますが、かなりの人が、夏頃から時間をかけて自作します。どうやってサプライズ作ってやろうか?と日々、思考を練っている人も少なくありません。エンタメやアートの中心地ニューヨークだけに、舞台衣装や内装のエキスパートによる仮装コスチュームには目を見張るものがあります。

Q2 最近の仮装コスチュームの傾向、今年の予想はどうですか?

A2 山ほどあるハリウッドのホラーやSF映画の登場キャラクターが圧倒的に多いですが、この20年は日本のアニメキャラも健闘。今年あたりは「鬼滅の刃」=Demon Slayerの面々が、パレードを賑わすことは必至です。ちなみに、ネット上の「今年の人気コスチューム予想」では、「イカゲーム」がトップに上がっています。いわば、ハロウィン仮装に今のポップカルチャー、サブカルチャーが「見える化」されている、と言うことです。そればかりか、政治家や時の話題の「仮装」も多くハロウィーンは、まさに世相の反映です。

Q3 ニューヨークの一部の小学校では、「暴力的なメッセージを含んでいる」という理由で、「イカゲーム」のコスプレを禁止している学校もあるそうですが...そして、子どもたちのハロウィンといえば、「トリック・オア・トリート」、お菓子をもらいにご近所を巡りますよね?

A3 普段は、厳しく制限されているアメやチョコを、この日だけは遠慮なく請求できるとあって、みんな大きなゴミ袋を背負いながら、近所を戸別訪問してお菓子を収集します。子供達が「トリック・オア・トリート(お菓子をくれないと悪さをするぞ)」と言いながら家にやってきたら、大人は無条件でお菓子類を差し出します。内容はスニッカーズ、マーズ、キットカットなどのミニバージョンが中心。これはお得用袋50個入りを量販店で7ドル~で売っていますから、事前に用意しておきます。見知らぬ子供にお菓子を渡すわけですから、万一のことがあっては大変です。なので、かつてはあったホームメイドのクッキーやチョコ菓子は、最近では回避する方向です。

Q4 手作りのお菓子は避ける傾向にあるんですね。ちなみに、去年は新型コロナの影響でハロウィンもできない状況だったそうですが、今年はどうでしょうか?

A4 去年は、何と言っても学校が完全リモートでしたので、ノー・ハロウィンでした。現在、市内の感染率が2%ちょっとですから、今年は例年通りのイベント開催になるでしょう。みんなも期待していますが、とはいえ70万人以上の人々を冥界に送り込んでしまったコロナが完全終息しない今、諸手を上げてハロウィンを祝う気分ではないようです。2019年時に比べると事前の盛り上がりが少ないように感じます。トリック・オア・トリートにしても、赤の他人からお菓子を手渡し...には、子供達も親御さんも少なからず抵抗感があるはずです。

Q5 そして、何やら、自宅も仮装するって聞きますが・・・

A5 住居も仮装。アパートでも一戸建てでも、好きな人は思いっきり飾り立てます。自家製ホーンテッドマンション。ハロウィーン装飾用のグッズや照明はたくさん出回っているので、1ヶ月前ぐらいからガンガン飾っている家もあります。それほどハマってない家であっても重要なアイテムは、ジャコランタン。非食用の大きなかぼちゃをくり抜いて中に火を入れます。(最も最近では電気照明型が主流ですが)毎年、9月になると、農村地帯にはかぼちゃ市場が出現。市内でも、青空市場やスーパーや食品店にかぼちゃが並び、秋の風物詩となります。かぼちゃをくり抜くのは1日がかりの大仕事です。子供が小さい時には、何回かやりましたが、硬くて重いのに閉口しました。ただ、顔を作ったり、目鼻をくり抜くのは意外に簡単で、割と自由に造形できます。戸建て住まいだと、ハロウィーン後も感謝祭までジャコランタンを戸口に飾っていますね。日が経つにつれ、かぼちゃが腐ってゆき、形相が恐ろしく変化するのが、また面白い。

●イタリア・ミラノ在住 / 田中 美貴さん

Q1 イタリアのハロウィンの慣習について教えていただけますか?

A1 イタリアでは宗教行事というとらえられ方ではなく、日本のクリスマスのような感じで、商業的イベントの要素が強いです。 翌日の11月1日が"イタリア版お盆"のような感じの"死者の日"という死者の魂を弔う日(こちらは本物のカソリックの宗教行事です)で、祝日になるため、10月31日の夜は夜更かしできるということもあり、コロナ前までは年々、規模が拡大していました。小さい子供たちは幼稚園で行事があったり、子供同士が集まってパーティをしたりして、大人はバーやディスコ(イタリアでは"クラブ"というより"ディスコ"です・・・)がハロウィンに便乗してオーガナイズするイベントに出かける・・という感じでしょうか。その時期にはハロウィングッズが売り出されたり、お店のショーウインドーはカボチャ(ジャック・オ・ランタン)が飾られたりします。

Q2 イタリアのみなさん、コスプレはするのでしょうか?

A2 子供は結構やってはいますが、基本的には2月のカーニバルのほうが力が入っているように思います。子供の仮装も本気でホラーなものが多いような気がします。女の子は魔女とか悪魔系、男の子は骸骨とかコウモリとか吸血鬼とか・・・カーニバルの時は映画やマンガのキャラの仮装も多いですが、ハロウィンはキャラクターものの仮装は少なく、たまにあってもアダムスファミリーとかハリーポッターとかぐらいでしょうか。また、簡単に雰囲気が出せるものとして、フェイスペイントはかなり人気です。一方、ハロウィンイベントに行く大人(若者)たちは、仮装する人もいますし、ドレスコードがあればそれに合わせたお洒落をしたり、ちょっとしたアクセサリーなどでハロウィン演出をする人は多いようです。

Q3 子どもたちの「Trick or Treat」の習慣はありますか?

A3 まだ定着しきっていない感じではありますが、近年では「TRICK OR TREAT」をやる子供たちも増えてきています。とは言え、年配の人たちはハロウィンの土壌がなくて、お菓子をあげる側とのバランスがうまく成立しないので、商店街などのお店がお菓子を用意してくれる・・・という感じですが。

Q4 去年に続き、コロナ禍でのハロウィン、今年はどうなりそうですか?

A4 去年はイベントは全く無理でしたが、今年はミラノに関して言えば、結構普通にイベントをやるレストランやバーが多いようです。ただ、コロナ前と違うのは要予約という点。また仲間うちなら感染の危険も少ないということからなのかもしれませんが、テーブルごとキープする流れも増えているようです(高いところだと1テーブル600ユーロ/8人の入場料含・・・)。ディナーとセットになっているところも多いですし、ドリンクだけの場合でも全体的にコロナ前より入場料もお高めです。

Q5 そのほか、イタリアのハロウィンで気になることはありますか?

A5 伝統的には、本来イタリアではハロウィンよりその翌日の"死者の日"が大事で、お墓にお参りに行ったり、"死者の骨"という名前の砂糖菓子を食べたり...という感じですが、クリスマスやイースターほどこの日を重要視している人も少ないので、夏のバカンスとクリスマスバカンスのちょうど中間ぐらいにあたるこの祝日を単に喜んでいる人が多いのではないでしょうか(イタリアは祝日が少ないので、それぞれがとても貴重なのです)。コロナ前は、祝日がうまく土日とつながって連休になれば(ならなくても無理矢理連休にして)旅行に行く人も多かったです。