総務省が今年2月に発表した、2019年度における「固定電話や携帯電話などによる音声通信の利用状況に関する調査結果」によりますと、音声通話の日本国内での総計は前年度比で3.4%の減少。種類別では固定電話、IP電話、携帯電話・PHSすべてにおいて前年度より減少しているそうです。

メールやSNSなどの普及で、電話で話す機会が減っている、と実感する方は少なくないかもしれませんね。また、電話で通話することに慣れていないミレニアム世代を中心に、電話に出ることや電話をかけることを嫌がったり恐れたりする「電話恐怖症」と言われる人が増えているとか。

そこで、この時間は「音声通話事情」と題して、海外の状況をチェックします。

●アメリカ・北カリフォルニア在住 大西良子さん

Q1 まずは、カリフォルニアの新型コロナの状況を教えてください。

A1 アメリカの3連休である5月のメモリアルホリデー、そして7月の独立記念日もクリアして、元の生活に戻ったかのようでしたが、7月14日のニュースでは変異ウイルスデルタ株のため、全米ではここ3週間の間に新型コロナの新規要請者数が倍増、「サマーサージ」(夏の急増)だそうです。アメリカ市民の約半数が接種を2回とも終えていると言われていますが、宗教上の理由などで接種を受けない人が確実にいます。全米中でも南カリフォルニアのロサンゼルス郡が死者数、陽性者数とも全米トップ。接種率を上げるため、郡のウェブを通じて接種の予約をして接種を受けた人には、抽選でユニバーサルスタジオのチケットが当たる、など、総額1億ドル以上の景品を出すなど、6月下旬からあの手この手で接種率を上げようという努力がされています。

Q2 今日のテーマ「電話通話事情」ですが、アメリカでも通話時間が減っているという データはありますか?

A2 ある調査によると、アメリカでは大人のスマホの所有率が97%で、いわゆるミレニアル世代の75%は、通話(voice call) よりテキスト(texting)に多くの時間を使っているそうです。平均通話時間は1日あたり21分であるのに対して、テキストに使う時間は26分。

Q3 通話が1日あたり21分というのは思ったより多い印象ですね?

A3 ミレニアル世代でも絶対的な「電話派」もいます。私の知人でオンラインで車を売り買いしている人は「必ず電話で、相手がどんな人かを確かめてから商売する」といいます。相手がどう出てくるか、どのくらい真剣かは電話でならわかるそうです。話し言葉やアクセントで「相手」の大体の人物像がわかり、どう値段の交渉するか、また、冷やかしの客には時間を使わない、などストラテジーがたてられるからです。ですからいわゆる「交渉」は、電話でして、そしてテキストでは住所とか、値段とか決定事項を知らせます。

Q4 電話で通話すべきは、相手による、という感じでしょうか。

A4 親しい家族とは電話する、という人も結構います。いつも決まった週末の朝9時に東海岸の兄弟に電話するとか、困ったことがあったらすぐに電話する「ホットライン」は通話のようです。また肉声を聞いて、元気かどうか確かめたり、時間の制限なく無駄話をしたり、というのも家族ならではでしょうね。

Q5 ビジネスシーンの電話での言葉遣い、英語だと日本語ほどハードルは高くないと思うのですが・・・

A5 特に日本語は「敬語」の文化がありますから、就活中の若者が会社に電話をかけるのは、ちょっと勇気がいるかもしれませんね。電話をかける時「お忙しいところ恐縮ですが」とか「Aさんはいらっしゃいますか」「Bと申しますが」など敬語や謙譲語を使い分けなくてはいけないので、その立ち居振る舞いが電話に出た社員に評価されそうで、ちょっと怖いかもしれません。一方、英語では「Aさんいますか」とか「Aさんと話したいんですけど」(May I speak to Mr. A/I am looking for Mr. A)と、初めてかける相手の職場でも敬語なしで「普通の言葉」で話せるので、実際は、英語を使うアメリカ人にとっては、初対面とか仕事の電話をする時、日本より少し「苦手感」のハードルが低いかもしれませんね。

●イタリア・フィレンツェ在住 小泉 真樹さん。

Q1 イタリアでも、電話で通話する機会は減っていますか?

A1 イタリア人は基本的にお喋りが大好きなので、電話での通話は他の国よりは減っていないのでは?と思います。スマートフォンの使用者の使用目的のデータがあったのですが、若者はソーシャルの使用が多いようですが、全体としては電話通話が一番でした。例えば、電車の中でも会話が日本のように禁止されている訳ではないので、携帯でずーっと喋り続けている人も多いですし(なので車両中の人がその人の家族構成から何を今晩食べるかまでわかってしまうんです。笑)ようやくここ数年、特急の1車両は携帯などで話してはいけないsilence車両ができたほどですが、そこでもお喋りしている人はいたりします。

Q2 公共の場での通話マナーの違いも影響しているんですね。そして、家族や友人とのコミュニケーションで通話はよく使われているんですね。

A2 特に家族の間では、毎日必ず電話をするのが普通のようなので(しかも何度も!) 私が日本の実家にたまにしか電話をしないことを、イタリアの家族は信じられない と思っているようです。なので、日本のオレオレ詐欺もイタリアでは自分の子供の声を聴き間違えることは絶対にないので、まず通用しない!と驚かれました。

Q3 おもに若者で、会社の電話を取るのが恐怖、電話の取り次ぎが苦手、といった話は聞きますか?

A3 他の年代よりは、若者の方が生まれた時からIT機器に囲まれているので、普通の通話よりSMSという場合が多いかもしれませんが、仕事となれば、ちゃんとみんな電話の対応はしていると思いますし、特に電話に出るのが嫌という話は聞いたことがありません。先日若いお友達に聞いたら、SMSもボイスメッセージで、しかも結構な長さで送ってくる人が多いらしいです。

Q4 さきほどのアメリカでは、英語には敬語の文化がないので、日本語ほど、ビジネスの電話のハードルが低いんじゃないか、というお話がありましたが、イタリアではどうでしょうか?

A4 イタリア語は日本語程厳しい規則ではないにしろ敬語があります。子供ならまだ良く敬語で話せないという状況は普通にありますが、ある程度大人に近くなれば問題なく敬語を使っているので、その為に電話に出るのが嫌ということもないのでは?と思います。