全国に映画館を展開するTOHOシネマズは、今週をもって、毎週水曜日に女性が割安で映画を鑑賞できる「レディースデイ」を終了。来週からは、毎週水曜日は誰でも1200円で映画を鑑賞できる「TOHOウェンズデイ」を開始します。

映画館に限らず、女性のみを対象とした割引やサービスは数多く存在します。その背景には、男女の格差を背景に、女性を優遇するという目的もありましたが、近年は、女性を取り込むことで、ビジネスを優位に展開していく「商業戦略」の色が濃くなっていますよね。

ただ、ジェンダー平等を目指すSDGsの取り組みにおいては、女性だけを優遇するサービスに、今、疑問が投げかけられています。そこで、この時間は「女性優遇事情」と題して、海外の状況をチェックします。

●インド・デリー在住 / 大川 淳子さん

Q1 まずは、インドの新型コロナの状況を教えてください。

A1 インドの新規感染者は今月に入って1日3万人台となってます。これはピークだった5月頭の40万人に対して10%を切って非常に順調に減少してきてます。インドは今年に入って早い段階から積極的にワクチン接種をはじめ、接種回数としては中国に次いで世界2位、ただし、人口が多いため接種率としては25.4%とまだまだな状況です。4月末から実施されてきたロックダウンもエリア別に解除されてきており。いろいろな制限はあるものの、ほとんどの商業施設での営業再開出来るようになっており、街は活気を取り戻りつつあります。

Q2 今日のテーマ「女性優遇事情」ですが、インドにも、女性だけを対象にしたサービスはありますか??

A2 メトロにはレディース車両が完備されてたり、バスの賃料が安くなったり、銀行や公共機関で並ぶ際の女性専用レーンがあり、社会制度としての女性への優遇措置は多く見られます。ただ、「レディースデー=女性半額!」みたいな商業プロモーション的な使い方はあまりなく、これはまだ財布の紐を握っているのが男性だということの現れかなと思います。3月8日の「国際女性デー」に関しては、当日いろいろな女性向けのイベントが開かれたり、レストランが女性に無料のドリンクを提供していたり、日頃の感謝の気持ちとして社内の女性にチョコレートが配られたり、女性のエンパワーメント讃える様子がよく見られます。

Q3 なるほど、商業プロモーションというよりは、女性の社会進出を後押ししている、というイメージでしょうか。

A3 女性の社会進出は(エリア的に差があるものの特にインド都市部においては)日本より進んでいるイメージで、地方議会では女性の一定数の留保枠が定められていると聞いたことがあります。また、2013年の会社法では、一定の規模以上の公開(有限責任)会社に対して、1名以上の女性取締役を選任することが義務付けられ、2017年3月には労働法が改正されて、今まで12週間だった女性の産休取得期間は、26週間に拡大と、インド政府も女性の社会進出により力を入れようと様々な制度を定めています。

Q4 格差がある部分を、しっかり押し上げていこうという動きがあるということですね?

A4 そこに区別や格差があることをしっかりと受け止め、それに対して、平等を促進するために必要な暫定的措置を積極的に行っていく。アファーマティブアクション=「積極的格差是正措置」を取り入れているように感じます。これは、インドには昔からカースト(単純に差別ではなく、強い方が弱い方を助けるというマインドもある)と言うものがあって、歴史的にそういう大きなものを常にマネージしてきたから、アファーマティブアクションの使い方がうまいように感じます。

●ブラジル・サンパウロ / 吉川 真由美さん

Q1 まずは、ブラジルの新型コロナの状況を教えてください。

A1 徐々に予防接種も進んできています。人口の約13%がワクチンを打ってもらっています。サンパウロ市ではまだ感染者数が多いですが、スーパーやレストランは、利用者数を制限して開店しています。

Q2 きょうのテーマ「女性優遇事情」ですが、ブラジルにも女性だけを対象にしたサービスはありますか??

A2 女性が優遇されるサービスはありますが、レディースデーのような、特にそのサービスが利用できる曜日や日は決まっておりません。車の保険は、女性用の保険は男性用より安いです。ブラジルでは、統計的には女性が起こす車の事故や盗難と男性が起こす同じトラブルを比較してみたところ、女性の方の弁償の金額が少ないことが分かってるので、保険の金額も低いとのことでした。また、バイキングのレストランでも女性の金額が男性の金額より低いとこともあります。それも、女性の方が小食であるとことが理由だそうです。いろいろなところで女性が支払う金額が男性のより低いということがあります。また、電車でも女性専用の車両などもありますが、これはセクハラ問題があったのでこのようなサービスが考えられたと思います。タクシーなどもそうだと思います。女性のお客さんしか利用できないタクシーがありますが、まさにこのような問題があったから考えられたサービスだと思います。

Q3 先ほどのインドもそうでしたが、商業的な理由というより、格差や、女性が不利益を被ることがないよう、女性を優遇するものが多いようですね。

A3 他には、去年、コロナ禍で外出自粛が始まったとき、職を失った人たちに、政府から生活支援が出されたのですが、母子家庭で、女性が家族を養っている場合、その女性は、同じ立場にある男性がもらえる生活支援の倍の金額がもらえたのです。詳しく調べてみたところ、書類上、結婚していることになっている男性が、その支援のお金を銀行で全部おろし、実際に子育てをしている女性には一銭も渡さないでいるケースが見られたので、急遽このような形にし、無職で家庭を守る立場の女性には支援の金額が男性の倍になったということでした。