今月16日から31日にかけて、​「ユネスコ世界遺産委員会」がオンラインで開催。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったため、今回は2年分の新規登録審査が行われます。

そして、現在、登録数23件で世界12位の日本からは、北海道・北東北の縄文遺跡群が「世界文化遺産」に、奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島が「世界自然遺産」に登録される見通しとなっています。そこで、この時間は海外の「世界遺産事情」をチェック。登録数が55件で同率1位のイタリアと中国に回線をつないでお話を伺います。

●イタリア・ミラノ在住 / 田中 美貴さん。

Q1 まずはイタリアの新型コロナの状況、いかがですか?

A1 イタリアはすっかり普通の生活に戻っており、もうみんなバカンスのことで頭がいっぱいの様子です。各種の営業禁止令もほぼ解除され、屋内イベントや国際見本市なども再開しています。全土が一番安全とされるカテゴリーに分類され、今日(28日)からは屋外ではマスク着用義務もなくなりました。新規感染者は毎日大体1000人程度。ワクチン接種は2回終えている人が30%弱、一回は終えている人は55%強。

Q2 きょうのテーマ「世界遺産事情」ですが、中国と並んで登録数1位のイタリア、みなさんの世界遺産への関心も高いのでしょうか?

メモ:文化遺産50、自然遺産5 (計55)

A2 正直なところ、世界遺産についてイタリア人は日本人ほど世界遺産への関心は高くない様子で、もちろん観光地の案内などには明記されていますが、日本人の様に世界遺産を巡るのを目的で旅する人もいませんし、自分の街のモノでも意外と何が世界遺産か知らない人も多いです。周りに色々溢れすぎているので、当たり前になっているのかもしれません。どれが世界遺産として認められていて、どれがそうでないかがわからないというか・・・例えば、ミラノのドゥオモとか、あんなに有名で素晴らしい建築物ですが、世界遺産ではないのです。もちろん関心が全くないのではなく、ユネスコで認定されているかどうかは重要ではないということだと思います。

Q3 なるほど、世界遺産かどうか、という区別がないだけで、国内の歴史的建造物などへの関心は高いというですね?

A3 世界遺産には限らず遺跡の修復をサポートしているファッションブランドなどイタリアの大企業は多く、先日は、ファッションブランドのトッズが支援し、コロッセオの修復第二弾が終わったというのが大きなニュースになっていました。またFAIという歴史的建造物や自然を保護するための財団が、年1回同財団が担当している施設を一般に公開するオープンデイには多くの人が押し寄せたりします。

Q4 では、今年の登録候補になっている「ヨーロッパの大温泉保養地群」もあまり話題にない感じでしょうか?

A4 イタリアはモンテカティーニ・テルメが「ヨーロッパの大温泉保養地群」に入っていて、この7月の協議において世界遺産に登録されるだろう、というニュースは出ていました。ただ、これに関して地元の人たちは盛り上がっているようですが、イタリア全体としてはそれほど話題になっているとはいえないのではないかと思われます。

Q5 世界遺産だから人気が高い、というわけではないとのことでしたが、ミラノ周辺の世界遺産で、人気のスポットはあるのでしょうか?

A5 ミラノ市内にある世界遺産は、「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」とレオナルド・ダヴィンチの壁画「最後の晩餐」だけです。見学するための予約はかなり取りにくいのですが、さすがにミラノの人たちは、一度は見たことがあると思います。周辺だとカモニカ渓谷の岩絵群(先史時代の約8000年間に岩石に刻まれた「線刻画」が、この渓谷一帯に数多く残っている)は有名で、小学校の遠足などでもよく訪れる場所です。

●中国 北京 在住 / 斎藤 淳子さん

Q1 まずは中国国内(北京周辺)の新型コロナの状況、いかがですか?

A1 6月26日までの全国のワクチン接種回数は11.6億回です。北京では市中感染は2月以降ゼロが続いていますが、地下鉄や学校ではまだマスクをしています。5月末以降、広東省でデルタ株を含む200人規模の感染がでて、一時期は地区や空港も閉鎖などが行われました。現在は新規患者数はゼロになって落ち着きました。

Q2 今日のテーマ「世界遺産事情」ですが、今年の新規登録候補となっている、泉州 (宋朝・元朝における世界のエンポリウム) は、中国国内で話題になっていますか??

A2 ずばり、なっていません。かなり、物知りの人に聞いてみましたが、泉州が候補になっていたことは知らなかったようです。歴史好きな人はこの都市の特殊な位置づけは知っていましたが、世界遺産のことは全く知りませんでした。

Q3 日本だと、登録が勧告されると、地域一体で盛り上がる印象ですが、そういったことはあまりないのでしょうか?

メモ:文化遺産37、自然遺産14、複合遺産4 (計55

A3 中国にはたくさん世界遺産があるので、いささか慣れっこになってきている感はあります。 もちろん、地方にとっては観光開発のチャンスなので、盛り上げようとする機運はあると思いますが。貴州省の「梵净山」は2018年に「世界自然遺産」に指定されたので、その貴州省の人にどうだったかと聞いたところ、もちろん喜んでお祝いしたよ、といっていました。まあ、もちろん、地方政府は喜んで観光資源としてプレイアップしようとする機運は高まったようですが。日本ほど、全国的(?)にお祝い?話題をさらう、という雰囲気ではなさそうです。

Q4 もちろん、その場所の知名度などにもよるのでしょうが、世界遺産に登録されると、観光客が急増して、オーバーツーリズムになったり、環境への問題だったり、マイナス面もあったりしますが、そういったことは聞きますか?

A4 中国の観光地は世界遺産でなくても、常にオーバーツーリズム、という問題がありますね。(笑)残念ながら、連休などに人気の観光地に行くと、どこも人がごった返していて、右往左往して、家族と離れ離れにならないように、また他の人にズル込みされないように気を張っていなくてはならないという感じで(笑)とてもゆっくり楽しむという環境ではありません。中国国内の旅行観光局による基準でA~AAAAA(5A)というランク付けをしているのですが、5Aはいずれも有名どころで人気です。

Q5 ちなみに、北京から近い世界遺産で、観光で人気のスポットといえば?

A5 北京はいっぱいあります。「万里の長城」、「故宮」、「天壇」、「明の十三陵」、「周口店の北京原人遺跡」、「頤和園」などです。北京原人遺跡を除いては、いずれも北京に来たら必見のスポットだと思います。市民がよく行くのは市内にあって、割と近場で公園としても楽しめる天壇や頤和園などです。頤和園は夏の避暑地として作られた庭なので、大きな人口湖があり、緑も多いので北京の郊外散歩の一つには良いかもしれません。天壇公園は北京の中でも割と生粋の北京人が多い下町の近くにある緑豊かな公園です。なので、元気の良い地元の人たちが朝一番から歌を歌ったり、踊ったり、体操をしたり、改造したほうき大の筆で水でコンクリートの上に習字を書いたり、思い思いの過ごし方をして楽しんでいます。これを眺めてゆっくり散歩するのも楽しいです。皆さん、あまり「世界遺産」という感じではなく、近所の大きな公園という感じで慣れ親しんで楽しんでいる感じですね。