今月1日から、来年春に卒業する大学生、大学院生を対象にした採用選考が解禁され、大手企業を中心に、本格的に面接がスタートしました。そんな就職活動、転職活動において必須なのが「履歴書」ですよね。

20210611c.jpg

日本では、おおむね決まったフォーマットの履歴書に、名前、生年月日、性別、住所、連絡先、学歴・経歴、家族構成、志望の動機やアピールポイント、希望する事柄などを書いて写真を添付する、というのが基本的なルールとなっています。ところが、海外ではこの履歴書にも大きな違いがあるそうです。そこで、この時間は「世界の履歴書事情」をチェックします。

●アメリカ・シカゴ在住 / 川平謙慈さん

Q1 まずは、シカゴの新型コロナの状況を教えてください。

A1 イリノイ州のワクチン接種率は、現時点で18歳以上は52%、65歳以上では72%です。今週金曜日からフェーズ5に入り、基本的にほとんどの制約が撤廃されます。これは、企業、大規模なイベント、コンベンション、遊園地、スポーツ会場などが、COVID-19パンデミックの発生以来、初めてフル稼働できることを意味します。

Q2 では、きょうのテーマ「履歴書事情」ですが、履歴書の書き方や記入する項目、アメリカと日本ではかなり違いますよね?

A2 まず、最近の仕事から書き、そこから過去にさかのぼるのが基本的なパターンです。何故かというと、今いい仕事をしているのか、あるいは必要とされているスキルがあるのかが、採用する側にとって一番大事だからです。ボランティア活動を入れる人もいます。学歴は一番最後に書きます。職歴が長ければ長いほど、学歴の重要性は低くなります。新卒者場合に限って、学歴が最初に来ます。その後に、アルバイトやボランティア活動の経験を記入します。

Q3 (さきほど日本の履歴書に記入する項目を言いましたが)アメリカでは、履歴書にあえて書く必要がない項目もあるんですよね?

A3 性別や年齢を採用基準にするのは労働法で認められていませんから、当然その情報は入れません。それから、キャリアに無関係な写真・家族構成・趣味などは含みません。もちろん、名前で性別はほぼ分かりますし、学校の卒業年度を含むのが普通なので、それらは採用側が知りえると思った方がいいでしょう。残念ながら法律がどうであれ、そういう差別があるのは事実です。どの会社や組織にいたのかは大事ですが、もっと重要なのは、そこで何をしてどういう結果に貢献したのかです。それをアピール出来る書き方をするのが大切です。

Q4 では、どんなことを重点的に書くのでしょう?

A4 次の3つを明解に書くことが勧められています。

Situation/状況・局面:ビジネスニーズは何だったのか。どういう問題を解決する必要があったのか。

Action/アクション:何を基準にどういう判断をし、具体的に何をしたのか。チームの中でどういう役割を果たしたのか。

Result/結果:その結果、何が起きたのか。数値化できるのであれば、それがベストです。

例:売上が15%伸びた。コストが5%削減された。財務諸表の月の締めのサイクルタイムが20%短くなった。

Q5 ビジネス特化型のSNS「LinkedIn」も活用されていますか?

A5 はい、ここ10年ほど、採用する側、される側ともに利用が増えています。履歴書に入れることの難しい実績を、リンクを張り付けたりして含むことが出来るので、履歴書以上にアピール出来ます。また、今まで仕事を一緒にしたことがある上司、同僚や部下、そして顧客からのレコメンを書いてもらえるので、それも役に立ちます。ほとんど企業の人事担当者が採用側のアカウントを持っていて、応募者の中で興味のある人のプロフィールを必ずチェックします。それどころか、公けの募集すらせず、LinkedInの中のプロフィールから必要としているスキルのある人材を見つけ、その人に直接アプローチをして採用活動をすることもあります。ですから、キチンとしたLinkedInのプロフィールを持っていることは大切です。

●台湾在住 / 片倉 佳史さん

Q1 初期の対策が素早かった台湾でも、最近、新型コロナの感染者が増えているということでしたが、現在はどんな状況でしょうか?

A1 これまではウイルスの封じ込めに成功し、比較的安定していた台湾でしたが、5月中旬からクラスター発生で、現在、社会はかなりの緊張感に包まれています。レストランなどはテイクアウトのみの対応になっていたり、観光スポットなどは軒並み閉鎖状態になっています。

外出時は例外なくマスク着用が義務付けられています。ただ、6月4日に日本からワクチンの無償提供があり、人々にはとても喜ばれました。街でも知らない方から「あなた日本人?ありがとう」と声をかけられることがしばしばあります。

Q2 きょうのテーマ「履歴書事情」ですが、台湾では、決まったフォーマットはありますか?

A2 特にフォーマットというものはありません。市販されている履歴書はありますが、多くの場合、ネットでやりとりすることが多いです。また、基本的に抑えるべきポイントは日本と変わりません。

Q3 中でも、履歴書に書き込む項目で、日本と違う部分はありますか?

A3 プロフィールの文章を見ていると、家族構成を記していることが多いです。これは家庭環境の良さ、育ちの良さをアピールしています。台湾は日本よりも家族愛を重視する傾向が強く、重要なアピールポイントのようです。

Q4 履歴書に添付する写真の傾向が特徴的のようですね?

A4 写真は個性が感じられるものが多いです。日本のように真面目な正面写真もあるのですが、結構な確率でカジュアル路線です。

中にはTシャツ姿だったり、ピースをしていたりします。これは明るくて元気なことをアピールしていると言われ、営業職希望者などに多いそうです。一方、大学や大学院卒をアピールしたい場合、卒業式の時に撮影した写真を貼る人が多いのですが、何年も前に撮影したものだったりします。また、男女を問わず、やりすぎ?と思うくらい修正を施した写真もよく見かけますね。

Q4 履歴書の写真を"盛っちゃう"んですか・・・!採用する側の立場としては、どのように受け止めているのでしょうか?

A4 写真のみならず、たとえば、「日本語ができます」、「英語はマスターしています」とあっても、会ってみると、片言程度だったりします。日本人は謙遜する傾向が強いが、台湾は反対です。ですから、採用する側はそのことをわかって「引き算の論理」で考える必要があります。

つまり、書いてあることを少し差し引いて人物評価をする必要があるということ。日本とは少し違った駆け引きがありますね。