さて、ここ数年、日本の70年代、80年代にブームとなったシティ・ポップが海外で再評価されています。また国内外問わず、当時のシティ・ポップに影響を受けた次世代のミュージシャンによる楽曲も数々発表されています。そこで、今回は「シティ・ポップ事情」と題して海外の状況をチェックします。

●ロシア・モスクワ在住 / 柴田 顕さん

Q1 まずは、ロシアの新型コロナの状況について教えてください。

A1 感染流行のピークだった去年12月の3万弱と比べれば、今は随分と良くなり一日9000人程となりました。とは言えここ暫くは横ばいが続いており、中々収束まで繋げられずにいます。ワクチンの接種自体は進めてはいますが、現時点でロシア全体の25%は二度目の摂取を終えている程度で、数字にして約3500万人程となります。

Q2  今回は「シティ・ポップ事情」がテーマですが、日本のシティ・ポップが海外で人気になった原因の1つに、オランダとロシアの音楽関係者が再評価したという説がありますが、ロシアでも日本のシティ・ポップは人気ですか?

A2 ロシア全体でシティ・ポップが人気かと言われると、流石にそこまでではないと言わざるを得ませんが、若い人たちを中心に、特に日本好きの方々の間でじわじわと広まっているような動きがあります。元々ここ数年の間でロシアにおける日本人気は爆発的に高まっており、日本のアニメや映画がこちらで公開されたり、日本人のアーティストが来訪するたびにチケット即完売するほどには人気です。そうして日本への興味を強く持ち、結果としてシティ・ポップという音楽ジャンルにも手を出し始めるということはあるようです。ただ、それでもまだ流行と言えるまでの広がりにはなっていないようで、どちらかというと日本の音楽と言えばアニメ関連の曲がイメージされるようです。

Q3 たとえば、日本のどんなアーティスト・曲が人気なのでしょうか?

A3 シティ・ポップのアーティストに限定するのでしたら、山下達郎さんや竹内まりやさんでしょうか。限定しないのであれば、ONE OK ROCKやX JAPANといったロックグループが人気あります。多くのロシア人にとって音楽と言えばロックというぐらいで、実はポップスはそれほど聞かれていないという現状がありますね。ただ、先ほど話したアニメの曲のイメージが強いという話とも繋がりますが、実はロシアではアニメ「セーラームーン」が90年代後半に大流行したことで、当時の女性たちの間で主題歌の「ムーンライト伝説」は常識レベルで知られています。私の友人は日本語を知らないままこの曲をそらで歌えます。

JK シティ・ポップのみならず、幅広く聞かれているということですね。

●インドネシア・ジャカルタ在住ミュージシャン・タレント・俳優・MC・翻訳・通訳と幅広く活動されている、加藤 ひろあきさん

Q1 まずはインドネシアの新型コロナの状況、いかがでしょうか?

A1 現在までの累計感染者数は170万人を超えています。累計回復者数は160万人ほど。死者数は約48,000人。毎日3000~7000人くらいの間で感染者が増加しています。インドからの変異種が懸念されており、すでに5件の感染報告がニュースになっています。ワクチン接種は医療従事者、政治家、公務員、警察、軍、メディア関係者はほぼ100%完了。現在は芸能関係者、労働生産年齢層、高齢者を中心に摂取が進められています。PCR検査等もアプリや様々な検査機関を使って気軽にすぐに受けられます。加藤自身も数週間前に感染、重症化の可能性があったので10日間の入院を経験しています。医療費などは政府補償で全額無料でした。

Q2 今回のテーマは「シティ・ポップ事情」ということなんですが、インドネシアにも日本のシティ・ポップ・ブームが来ているんですよね?

A2 インドネシアでのシティ・ポップはここ数年、一部のシーンでかなり盛り上がっていました。日本のシティ・ポップにルーツを持つインドネシアの80年代のアーティスト(Fariz RM, Candra Darusmanなど)が多くいたこともあって、その音楽と結び付けられる方で「シティ・ポップ」が認知されていったという経緯もあります。その中でRainychというカバー系YouTuberが竹内まりやさんの「Plastic Love」松原みきさんの「Stay with me ~真夜中のドア~」をカバーしたところ、これが大ヒット。再生回数は現在までで、それぞれ299万回、417万回となっていますが、インドネシア外からのチャンネルへのアクセスも多く、世界的にシティ・ポップに火がつくきっかけを作ったと言われています。Raincyh自身はDoja Catが歌う「Say So」を日本語でカバーし、それをDoja Cat本人が取り上げたところから有名になったYouTuberで、日本語がまったくしゃべれないにも関わらず、歌の中での日本語は完璧という言語に対する天才的な感覚があるヒジャブを被ったイスラム教徒の女の子です。 彼女は首都のジャカルタではなく、現在もスマトラ島のリアウという場所に住んでいて、そこから動画の発信を続けています。

Q3 そのほか、インドネシアで、日本のシティ・ポップに影響を受けたミュージシャンはいますか??

A3 シティ・ポップという文脈が強く強調されて活動しているバンドとして、「Ikkubaru」というバンドがいます。彼らはインドネシアでも特にクリエイティブで、インディーシーンが強固な西ジャワ州バンドゥンという街の出身。その音楽のルーツに山下達郎、角松敏生を挙げています。日本の音楽系メディアで取り上げられることも多いバンドで、インドネシアでも日本での活躍からの逆輸入のような形も手伝ってファンを獲得しているバンドで、要注目です。2020年に発売したアルバム「Chords & Melodies」より「Street Walkin'」を是非聞いてみてください。