ゴールデンウィークが終わりましたが、連休中は銀行の窓口や、銀行によってはATMが一部お休みとなるため、連休前に現金を引き落としておいた、という方も多かったんじゃないでしょうか?キャッシュレス化も少しずつ進んではいますが、まだまだ現金が必要な場面もありますよね。また、収入を証明するために、通帳のコピーが必要になることもあり、定期的に通帳記入をしている、という方も多いでしょう。そんな銀行にまつわるあれこれ、国によっては事情がいろいろ違うようです。そこで、今回は「銀行の使い勝手事情」をテーマに、海外の状況をチェックします。

●アメリカ・ニューヨーク在住/ 中村 英雄さん

Q1 ニューヨーク、徐々に通常の生活が戻りつつあるそうですね?

A1 ワクチンが本格的な一般普及を始めた4月頭を頂点に急速な勢いで新規感染者、死亡者が減少しています。ワクチン接種完了者の数は、NY市民のおよそ3分の1が、すでにワクチンによる予防措置を受けています。この状況を踏まえて、市では、飲食店営業や集会、ブロードウェイ劇場などのエンターテインメントなどに長い間課せられていた規制を5月19日に解除すると発表しています。さらに7月1日を完全復旧の目標として掲げました。

Q2 今回は「銀行の使い勝手事情」を伺いたいんですが、まず、アメリカには通帳がないんですよね?

A2 通帳はありません。口座の出入金記録は、銀行にリクエストすれば「ステートメント」という形で詳細なものが入手できます。ただ、生活の中に「銀行の通帳」という感覚はないですね。その代わり、アメリカでは小切手による支払いが一般的なので、小切手帳に付いているメモ欄が、伝統光熱費や家賃、授業料、ローンの支払い、など日々のお金の動きの記録となっています。通帳不在と小切手は、いずれも米国人独特の現金に対する感覚に由来すると思います。そもそも、この国では大量の現金を持ち歩く習慣がないのです。というか、現金を狙う強盗や窃盗が昔から絶えないため、「現金持参は危険」という意識が根強いです。加えて、偽札の横行などもあり「現金は信じられない」との不信感も高いです。

Q3 その小切手も、コロナ禍で変化があったとか?

A3 小切手でもウィルスが伝染する!との悪評が一気に全米を駆け巡り、銀行口座への直接振込が急速に普及しました。特に、昨年来続いている失業保険やコロナ禍対策支援金の支給が口座への直接振込になったため、一層、小切手が陳腐化してしまいました。また、日々の買い物現場でも現金のやりとりが嫌悪され「コンタクトレス」を謳い文句に、カード支払いやお財布携帯での電子支払いが一気に新ノーマルとなりました。コロナ以前から、うちの娘のようなミレニアル世代を中心にVenmoやSquareのようなスマホ決済は流行ってましたが、コロナの影響で、電子化が浸透したのは間違いありません。大手銀行のアプリでも同じ銀行に口座を持っている人ならスマホでコンタクトレス・小切手レス・マネーレスの支払いができるようになってます。銀行のアプリそのものも進化していて、いまでは携帯一つで、残高照会、振込、支払い、口座間の資金移動...大抵のことはできちゃいます。

Q4 となると、市民のみなさんが銀行の窓口に行くという場面はほとんどない?

A4 銀行の実店舗、もう要らなくね?そんな感じですね。実際、僕が住む街でも大手銀行の支店が通りを挟んで、なぜか2軒あったのですが、コロナ禍中に1店舗閉鎖となりました。人々は何をしに銀行にくるのか?まあ、ATMを使いに来る、ぐらいでしょうか?どうしても現金が必要な際に引き出しのため、または現金収入のある小規模業者などが入金のため、など。日本と違って、アメリカは大手銀行の無人ATMの数が少なく、他行で下ろしたり、街場の怪しいATMを使うと手数料がバカ高いなど問題が多いのです。そこで、自分の口座がある銀行に付随するATMが大事、ということになります。ただ、ATMも進化していて、最近ではスマホの「お財布」で、起動するタイプもあり、カードすら使わなくてよくなりました。自宅に財布を忘れてもスマホでお金がおろせる時代、になったんですね。

●中国・北京 在住 / 斎藤 淳子さん

Q1 まずは中国の新型コロナの状況について少し教えていただけますか?

A1 新規感染者は全国的に一桁台で推移しており、地方で突発的に出ることはありますが、北京ではほぼゼロが約3カ月続いています。5月1日~5日まで、中国でもメーデーの連休だったのですが、国内旅行に出かけた人も多く、日常を取り戻しています。ワクチン接種も大都市を中心に進んでいます。北京市内では2回目接種者数が全人口の約半分弱に当たる1000万人を超えました。5月20日までに1回目の接種を締め切る予定だそうです。

Q2 「銀行の使い勝手事情」ですが、先ほど、アメリカには通帳はない、というお話がありました。中国はどうでしょうか?

A2 通帳はまだあります。主にお年寄りの方などは昔と同じように通帳と身分証明書をもって窓口に並んで、現金を出入金したり、送金したりしています。ただ若い世代の場合、銀行間の送金なども基本的には携帯やパソコンに入れた銀行のアプリで全て済んでしまうので、銀行の窓口に行く機会は少ないです。

Q3 口座を開設するために印鑑は必要ですか?

A3 中国では、口座を開くときは、本人のサインか印鑑かを選べます。ですので、印鑑を利用している人もいます。ただ、紛失や携帯し忘れなどの心配があって、サインより面倒なので、使っている人はお年寄りなど、かなり少数派です。

Q4 そのほか、銀行にまつわることで、日本と大きく違うシステム、慣習などありますか?

A4 銀行の営業時間は、日本より長いです。基本的に郵便局などと同じ朝9時から夕方5,6時まで営業しています。平日はもちろん、週末も営業している支店も多いです。国有銀行6行が中国ではメインで、圧倒的な存在です。ただ、民営銀行もサービスの良さなどでがんばっていて、両方あります。

Q5 中国の国有銀行と言えば、デジタル人民元の推進が話題になっていますよね?

A5 中国のデジタルマネー市場では、銀行以外のテンセントのwechatアリババ系のアリペイの2つがあっという間に市場を制覇してしまいました。そのため、デジタル人民元の発行により、この2社の独占を打ち破り、出遅れた国営銀行を保護していくのではないかという指摘も聴きます。いずれにせよ、デジタル人民元の導入は、かなり間近のようで、近年のホットな話題です。利率はざっくりですが、1年で1~2%と日本より高いです。海外送金は、マネーロンダリング防止や資産の海外流出を恐れているのだと思いますが、すごく厳しくて大変です。送金は1回5000ドル以上は申請を経て、認可を経ないとできません。現金引き出しでも、まず、ドルなどは事前に連絡しておかないと無理ですし、1回に付き1万ドルを超える場合は別途申請が必要です。