今週5日、WHO=世界保健機関は、これまでに、世界人口の1割に当たる、およそ7億8千万人が新型コロナウイルスに感染した、との試算を公表しました。

これは、WHOや、アメリカ、ジョンズ・ホプキンズ大学の集計で確認されていた累積感染者数の20倍以上にあたる数字で、検査が不十分なため、実態が把握しきれいていないことが伺えます。

このコーナーでは毎週、新型コロナウイルスにまつわる、各国の最新状況を伺っていますが、今朝は、感染拡大が深刻なヨーロッパからイギリス・ロンドン、そして、東南アジアからフィリピンの首都マニラに回線をつないで、お話を伺います。

●イギリス・ロンドン / 内山 昇さん

累計感染者546,952 死者42,605

Q1 第2波が深刻なイギリスですが、現在の状況はいかがですか?

A1 厳しい外出制限を伴うロックダウンが3月下旬から約2カ月間行われたことにより、8月には新規感染者数は1日500人を下回ることに成功しました。しかし、8月のサマー・ホリデー期間中の旅行や外出。また、9月上旬から全国で学校が6カ月ぶりに再開、そして、職場に戻り始めた人も多く、人の移動が活発化したことにより、9月上旬から新規感染者数が急増、今週は1日約12,000人を超える規模になりました。この背景には検査体制が強化されていることも要因のひとつのようですが、数は第1波の時の2倍以上となっていますし、専門家はこのまま増加傾向が続くと、10月中旬には1日5万人のレベルまで達する可能性があると警告しています。

ロンドンでも一部地域でも増えているのですが、特に増えている地域は、英国中部、北部のマンチェスター、バーミンガム、ニューキャッスル、スコットランドのグラスゴーといった地域です。これらの都市は大学都市として有名で、若者の間での感染者数増加の要因と言われています。

Q2 大学が感染の温床となっていることから、学生寮が封鎖になって、寮から出られない学生もいるとか?

A2 9月は新年度のスタートの月。新入生の歓迎パーティ、6か月振りに出会う友人と出かける機会が多く、一部の大学の寮ではコロナのクラスター感染が発生。感染拡大防止のため、学生寮自体がロックダウンされところも出ています。

中にはオンラインで授業を受けるために入学したのではない、学費を返せと訴える学生もいます。

Q3 先日、ジョンソン首相が新たな対策を発表されましたが、どのようなものでしょうか?

A3 このような状況のため、政府は9月中旬から、屋内外問わず6名未満、2世帯までしか会ってはいけないとする罰金を伴うルールを施行、加えて在宅勤務の推奨、飲食店の営業時間を夜10時30分まで短縮するなど制限を発表しました。しかし、コロナ影響により、20年のイギリスのGDPは約20%下落する見通しで、不況拡大を防ぐために、3月の時のような厳しい全土にわたるロックダウンは避けたいという思惑があり、コロナ対策と経済政策のバランスに苦労しているように思われます。

Q4 イギリスのみなさんの現在の心持ちはいかがでしょうか?

A4 一時、1日1000人近く、合計4万2千人が亡くなった悲劇を目の当たりにしているイギリス国民は、人の命は何よりも大切だと、誰もが痛いほど感じています。しかし、先ほどコメントしましたが、戦後最大の不況、そして、EU離脱(Brexit)を2カ月後に控え、コロナ対策には賛同するものの、生活は大切だと感じています。また、正直言って、コロナ疲れも見えるので、夏に規制を緩和したことへの批判はそれほど出ていません。

10月に入り雨の日が多くなり、暗い冬がやってきています。長期的には、規制を強くしたり、弱めたりという繰り返しが今後も続いていくと思いますが、短期的には多くの人が、せめてクリスマスは親や友人と過ごしたいと願っています。それを実現させるために、ある程度の不自由は受けざるえないかもしれません。

●フィリピン・マニラ在住、現地で日本語新聞を発行する「まにら新聞」の記者、澤田 公伸さん

累計感染者329,637 死者5,925

Q1 累計感染者数が30万人を超えたフィリピンですが、どのような状況か、教えていただけますでしょうか?

A1 マニラ首都圏は3月中旬から5月末まで厳しい防疫措置が実施。現在、厳しさでいうと4段階のうち上から3つ目の一般防疫地域まで引き下げられているが、まだ、レストランの店内飲食や理容室、製造業や公共交通機関などは定員の50%ほどの稼働に制限されている。

フィリピンは現在も毎日、2000~3000人の新規コロナ感染者が出ている状況(8月には6千人を超えることもあった)

感染者はマニラ首都圏が一番多いが、最近はイロイロ市やバコロド市など地方都市でも感染が増えてきている。

Q2 フィリピン国内の経済状況についてはいかがでしょうか?

A2 コロナ禍で中小零細企業などの倒産や休業が相次ぎ、失業率が上昇、マニラの人々の生活はこれまで以上に困窮の度合いが高まっていると言われている。最近の世論調査でもマニラを含め国民の約3割が食事をとりたい時に食べる物がない、という「飢餓状態」を一度でも経験したと答えるなど、生活はかなり厳しいものになりつつある。

経済対策としては、貧困層に対する現金支給(一世帯当たり最大で8000ペソ=2万円弱ほど)や休業した従業員への生活支援手当(やはり最大で8000ペソほど)の支給など。あと、業績が悪化した中小零細企業向けの低利融資事業や失職した教師やジプニー運転手など失業者を濃厚接触者の追跡調査スタッフとして一時雇用することなども実施している。

Q3 フィリピンの観光地の状況はいかがですか?

A3 フィリピンの観光地は西ビサヤ地域の有名観光地で白い砂浜で有名なボラカイ島が10月1日から国内で唯一、全国からの観光客の受け入れを開始したばかり。しかし、首都圏からのボラカイへの旅行者には事前にPCR検査による陰性証明を取得することや、警察署からの旅行許可などを取得する必要があり、手続きが煩雑でまだわずかな観光客しか訪れていない。国内の他の観光地も近郊州からの観光客を若干名ずつ受け入れているのみで、国内観光といえどもまだまだ再開にはほど遠い状況。

Q4 国内観光もままならない状況もあってか、マニラ湾の人工ビーチで大混雑が起こった、というニュースもありましたが・・・

A4 最近、マニラ湾美化事業の一環としてマニラ市の海岸遊歩道沿いの沿岸の一画を、セブ島から持ち込んだ白砂のようなドロマイト砂で覆って、ビーチにする工事を環境天然資源省などが実施。9月中旬に仮オープンさせたが、ビーチを一目見ようと見物客が押し寄せ、まったく社会的距離が取れない「3密」状態に。管轄する警察署の分署の署長が責任を取って免職され、その後、ビーチには自由に入れなくなり、柵で覆われてしまった。この事業については、着工当初から、コロナ禍で別の危急の事業に予算を使うべきだ、とか、ドロマイト砂が健康被害をもたらすとの懸念、セブ島のドロマイト鉱山付近で環境破壊が起きているなどとして批判する声も多かった。