来週22日から全国一斉に実施する予定だった消費喚起策「Go Toキャンペーン」。一部の自治体や専門家から感染拡大を懸念する声が相次ぎ、政府は、東京発着を対象外とする方針を固めました。

経済対策は必要ですが、感染拡大も抑えなければならない、日本のみならず、世界各地も同じ課題に向き合っています。この時間は、経済活動が再開したイギリス、二度目のロックダウンになってしまったオーストラリアに回線をつないで現地の状況をうかがいます。

イギリス・ロンドン 内山 昇さん

Q1 ロンドンでパブが解禁となったそうですが、これはイギリス国内でも一大ニュースだったのではないでしょうか?

A1 7月4日からロックダウンが緩和され、英国のイングランドのレストラン、パブ、美容院、ホテル等のホスピタリティー業の営業が再開されました。特に、パブは第2次世界大戦中も営業し続けたというくらい「イギリス人にとっては生活文化の一つ」でもあり、不自由からの解放を象徴するポジティブなニュースとして大きく報道されました。久しぶりに家族・友人と会い、パブでビールでのどを潤した人も多かったと思います。

具体的にはレストランであれば「屋内席では2つの別の家族のメンバーまで、屋外であれば家族数の制限はないものの6名まで」と制限され、「テーブルの配置も基本2メートルの社会的距離ルールを保ち、最低でも1メートル強を保つ」、「スタッフはマスクやフェイスシールド着用」、この他、「コンタクトレス(タッチレス)による支払い推奨」等の対策をしています。私も今週月曜日にロックダウン後、初めてパブ・デビューしてきました。室内に入るのが怖いので屋外のテーブル席に座りました。外から見るとコロナ前に戻ったようでした。一方、屋内は人数制限があり、バーカウンターに銀行カウンターのような透明な衝立をつけるなど仰々しく対策されており、気をつけなければといけないとあらためて感じさせられました。しかし、正直言って、2家族迄とか、6人までとか、本当に守られているかは、クエッションマークですね。怖かったですが久々のビールは格別で美味しかったです!

Q2 今後も、経済活動と感染予防を同時に行わなければならないわけですが、国による景気刺激策などはどうなっていますか?

A2 はい、7月15日から来年1月まで景気刺激策として、飲食店、ホテルなどを対象に消費税(VAT)を20%から5%に引き下げが始まりました。8月中の月~水に限り、一人当たり最大10ポンド(約1300円)を上限に、50%をディスカウントし、国が負担するとことになりました(Eat Out to Help Out Scheme)。しかし、消費税の減税は誤解している人が多いので説明しておきますと、イギリスは元々内税方式なので、VATの減税は、レストランが国に支払う20%を5%にしますよということで、消費者に15%すべての還元を促すものではないのです。ちなみにアルコールの20%は変わらないので、パブでビールだけ飲むのであれば変わらないのです。

Q3 そして、気になるのは、日本でも話題になっている観光支援策。イギリスではヨーロッパの一部の国への旅行も解禁され、予約が殺到してるとか?みなさん、不安はないのでしょうか?

A3 皆、長期間、自宅に缶詰めになりストレスが溜まっていたので、国境を超え移動できるようになったのは明るい話題です。最初に予約が殺到し人気なのは、ユーロトンネルというドーバー海峡の海底を通る自動車運搬の専用鉄道路線です。飛行機もフェリーも、他人と空間を共有しなければいけないのですが、自家用車に乗ったままで移動できるのは不安解消につながっているようです。フランスに着いたらフランスやスペインまで車で移動できますし、その後は気をつけて生活すればイギリスと変わりありません。飛行機の国際線の運行も徐々に再開し、休暇旅行で海外旅行する方もいらっしゃいますが、欧州大陸出身の在英の方が会えなかった出身国の家族に会いに行くようなデマンドが高いと思います。ホリデー旅行者は、渡航先で病気になった時の心配もあり、海外に行かず国内旅行を検討する人も多いと聞きます。ちなみに、私は日本に一時帰国し休暇を過ごす予定でした。今回の発表を受け、日本から英国に戻るのには規制がなくなったのですが、日本入国時に2週間自己隔離しなければならないのは変わらず、結局あきらめキャンセルしました。その代わり、今、どこに行こうか考えています。

Q4 最後にイギリスのみなさん、生活様式の変化というのはありましたか?マスク着用率がかなり低いようですが・・・。

A4 コロナ感染拡大は日本も同様ですが、ここイギリスでも人々の生活に多大なる影響を与えたと思います。交通公共機関を使う際は、あれほどマスクの効能を認めなかったイギリス政府も着用義務化(しないと乗車拒否もしくは100ポンドの罰金)をするようになり、7月24日からはスーパーなど店舗内でも義務化されることが今週発表されました。マスクについては、トランプ大統領もジョンソン首相もようやくマスクをつけるようになりました。マスク文化の浸透している日本からすると「え?まだそんなレベルなの」という感じだと思います。

●オーストラリア第二の都市・メルボルン、小林純子さん

Q1 2度目のロックダウンとなってしまったメルボルンですが、現在の状況について教えていただけますか?

A1 新規感染者が増え続けたため、9日に外出規制措置をメルボルン全域と一部郊外まで拡大。今週はじめには新規陽性者数は3桁台へ突入。水曜日は317人を記録。15日には80歳代の男性2名も亡くなり、国内死者総数が113人となった。(ビクトリア州内は29名)9日に発出された外出措置は現時点では少なくとも6週間、8月19日一杯まで続く予定。

Q2 クラスターなど、どういう感染が増えているのでしょうか?PCR検査はどのくらい積極的に実施している?

A2 いわゆるクラスターが所々で生じている状態。特にメルボルンでは海外帰国者らが到着後2週間隔離されているホテルの警備員らを介したクラスターの発生や、公営住宅高層アパートでのクラスターの発生等が最近大きく報道された。家族、同居人、職場での感染が増えて来ている様子。ビクトリア州でのPCR検査は高頻度に行われていて、15日には28,607件、これまでに122万件以上の検査が行われた。

Q3 オーストラリアでは「国内旅行キャンペーン」を6月から行ってきた中での感染拡大ということになりますよね?

A3 5月終わりから6月初めにかけてはやっと州内で宿泊旅行に行ける、次は国内旅行、その次は感染の少ない隣国N Zに 行けると誰しもが期待し始めた頃であった。実際6月に入ってから一部他州への移動・旅行が可能となったものの、ビクトリア州では中旬以降の陽性者増大により、現在ではビクトリア州から他州への入州が一部例外を除き禁止されている状態にある。今年はじめの山火事によってビクトリア州をはじめとして多くの被害を受けた地域を観光で訪れることで地域活性化をはかろうとしていた矢先の新型コロナウイルス。航空業界も壊滅的な損害を受ける中、まずは国内旅行を推進していこうという機運が高まっていただけに今回の感染者数の急増は旅行好きな豪州人にとっても大変残念な出来事。

Q4 ロックダウンについては、厳しい罰則もあるそうですね?

A4 一部の市民がステイアットホーム・オーダーに従わず、自宅でパーティーなどを行うなどして隣人等に通報され捕まり罰金刑を課されるケースが発生している。当地では政府の下したロックダウン・オーダーに従わない場合、高額な罰金刑が科される。ビクトリア警察は個人に対し最高1,652ドル(日本円でおよそ12万円)、企業には最高9,913ドル(およそ74万円)の罰金を科すことかできる。

Q5 日本からすると、かなり慎重な対応のように思いますが、現地のみなさんの反応は?

A5 やはり新型コロナウイルスに対する脅威を感じている。(コロナに)かかりたくない、(無症状者かもしれないので)他人に無意識に移したくないと思っている方が多い。