20200228c01.jpgみなさんは、図書館、行きますか?学生時代は通ってたけど、大人になってからは・・・という方もいらっしゃるかもしれません。先日発表されたある調査によると、アメリカ人の一人あたりが年間に図書館に足を運ぶ回数が、映画館のおよそ2倍におよぶ、というデータもあるようです。今朝はアメリカとロシアに回線をつないで、各国の「図書館事情」うかがいます。

●アメリカ・ニューヨーク  中村英雄さん

JK 「図書館事情」を伺う前に、世界中で猛威をふるっている、新型コロナウイルスによる影響について、伺いたいのですが、アメリカ、ニューヨークではどういった状況でしょうか?

中村 ニューヨークもアメリカ全体も安倍総理の「学校閉鎖」令に呆れかえって開いた口が塞がらないという感じです。マスクしている人?なんか一人もいません。マスクしているとかえって怪しまれます。マスクの防御効果は全く評価されていません。株式市場は過敏に反応していますが、市民はもっと冷静です。古くはライム病から始まってSARS、西ナイルウィルス、エボラ熱、と伝染病のプレミアリーグで戦ってきたアメリカです。このくらいのことでビクともしませんよ。

Q1 では、本題に戻りたいんですが・・・アメリカでは一人あたりの図書館の利用回数が映画館の2倍という調査結果が出ているようですが、ニューヨーカーたちは、図書館、たくさん利用されていますか?

A1 はい。答えはイエスですね。

ニューヨークは公共図書館のシステムが非常に充実しているんです。中でも、世界屈指の規模が、「ニューヨークパブリックライブラリー」です。蔵書数は5300万冊以上。うち3500万冊が貸し出し可能。マンハッタンだけで39の分館があって、ブロンクス、スタテン島を合わせると87分館。分館同士の連絡システムが緊密で、インターネットで読みたい本を予約すると、住まいの近所の分館に取り寄せてくれます。返却もどの分館でも受け付けます。ちなみに、マンハッタンの本館は、総大理石造りで格好のロケーションのため、「ゴーストバスターズ」や「デイ・アフター・トゥモロー」など、数多くの映画の舞台にもなりました。

Q2 はい、登場シーン、よく覚えています。例えば、どんな本が人気なのでしょうか?

A2 やはり、こちらでは新聞や雑誌の書評欄というのがまだ結構力を持っていて、そこで推奨されたもの、そして当然ながらネット書店の評価が高いベストセラー書籍は、図書館入荷とともに引っ張りだこになります。本だけでなく、映像、音響の収集も充実しているので、ネットでダウンロードしない人たちは、積極的に図書館で借りています。

Q3 なるほど。本や映像・音楽ソフトの貸し出し・閲覧以外にも公共図書館の役割はありますか?

A3 はい。町の分館は、コミュニティの要求に合わせて様々な催しやアクティビティを提供しています。例えば、僕の住むクィーンズのサニーサイドというエリアは、全米でも最もエスニックダイバーシティの進んだ民族多様性の権化みたいなエリアなのですが、図書館では移民のための英語教室、各種民族グループの音楽演奏会、高齢者向けの名作映画上映会、「スワップ」と呼ばれる不用品無料交換会、パソコン教室、税務相談、など実に色々な催しを行っています。そして、みなさんもそれをよく利用しています。

Q4 ニューヨーク公共図書館の本館には、最近、日本人観光客の訪問が急増しているそうですね?

A4 日本の漫画「バナナフィッシュ」は、NYを舞台にした青春アクションものですが、主人公が、なんと公共図書館本館の有名なローズ閲覧室で、息絶えるんです。その場所っていうのも特定できるくらいリアルな描写で、それが最近はアニメ化された影響もあって、訪れたい日本人ファンがひきもきらないんです。いわゆる「聖地巡礼」というやつですね!ちょっと奇妙な光景ではありますが、図書館では売店のグッズの売り上げが伸びることもあって、密かに「うれしい悲鳴」をあげているらしいです。

ロシア・モスクワ / 柴田顕さん

Q1 日本の文部科学省が過去に発表したデータによると、ロシアは人口10万人あたりの図書館の数が世界1位とのことですが、市民のみなさん、図書館、よく利用されるイメージですか?

A1 ロシア人というのは大の本好きです。街中の本屋にはいつもお客が入っていますし、地下鉄の電車内では多くの人が本を読んで暇をつぶしています。ちなみに紙媒体で読む人より、iPadなどの電子機器を使って読む人の方が多い印象があります。そんな環境なので、当然ロシアには図書館がたくさん建てられています。モスクワだけでも488の図書館があり、さらにロシア全土でいえば3万を超えます。ちなみに東京は23区全域で224の図書館で、日本全体では大学の図書館を含めても4700強だというのですからロシア人の本好きがどれほどのものかよくわかりますね。

Q2 圧倒的な数ですね!ちなみに、どんな方々がよく図書館を利用されているんでしょう??

A2 利用者は幅広く、学生はもちろん中年、壮年の方もよくいらっしゃいますが、男性よりは女性の方が多い印象です。ただ、実はそれでも図書館を利用する方は年々減ってきているのが実情で、それはインターネットが大きく関係しています。日本と違いロシアは著作権に関する規制が甘く、多くの作品がインターネットで読むことができたり、ダウンロードさえできてしまうんです。そのせいで多くの図書館の閉鎖を引き起こしています。ただ、それに対して図書館側も対策を行っており、例えば図書館内にカフェを併設したり、毎月イベントを催したりしています。受験生に焦点を当てたセミナーだったり、体験型のイベント、例えば書道や折り紙のイベントなどを開催したりしています。他にもとある図書館ではカウンセラーが常駐していて、相談に訪れる人もいるそうです。

Q3 なるほど・・・地域コミュニティの交流の場という面ではニューヨークとも共通してますね。さて、図書館の数が多いロシアですから、ちょっと変わった、ユニークな図書館もありそうですが、どうでしょう?

A3 あります。例えば古今東西、様々な映画作品に関する書籍ばかりを揃えた映画図書館や、航空関連の書籍ばかり読める航空図書館、IT関係ならばテクノサイエンス図書館、音楽や演劇、美術など芸術関連の書籍を集めた図書館もあります。珍しいとは違うかもしれませんが、ロシア国立図書館はすごいですよ。所蔵する書籍はなんと4500万冊、敷地はサッカースタジアム9つ分あると言います。

Q4 規模が想像できません!最後に、電子書籍を無料で貸出するタイプの電子図書館は増えていますか?

A4 正直普及は進んでいないと言えるでしょう。実際にサービスをしている図書館はありますが、現状ネットで読める本の方が多いため、わざわざ図書館で借りようと思う人は少ないですね。今後も図書館の閉鎖に歯止めをかけるには、何とか国が著作権を保護する動きに積極的になってほしいと思います。