今年話題になった言葉に贈られる「新語・流行語大賞」が発表され、ラグビー日本代表のスローガンとなった「ONE TEAM」が選ばれました。流行語はその年の社会を映すものと言えるでしょう。世界各地ではどんな言葉が大きなインパクトを与えたのでしょう?今朝は、デモが続く香港、ラグビーワールドカップの優勝国となった南アフリカに電話をつなぎます。

香港 フ・ハクソンさん。

香港では市民によるかつてない規模のデモンストレーションで社会が不安定になっていますが、今年、どんな言葉が大きな影響をもたらしたのでしょう?

何といっても春から逃亡犯条例に明け暮れた1年でした。これへの抗議活動が香港では 反送中という形で盛り上がり100万人規模の抗議活動となり、この逃亡犯条例こそ立法化断念から9月初旬にやっと立法化が撤回されましたが、すでに抗議活動は逃亡犯条例に限らず、香港の一国二制度を守るための 逆権(反逆) 運動へと拡大しました。スローガンも当初は 香港人加油(頑張れ) だったのが10月初には香港人反抗 となり11月にこの抗議活動で初めての死者が出ると香港人報復 になっています。このスローガンに香港人の抗議活動に関する見方の大きな変化がわかります。

そうした抗議活動を通じて広く、強く叫ばれたのが光復香港! 時代革命! です。この8文字が今年の香港で最も注目された言葉、これを流行語と言っていいかと思います。光復は「復興」の意味で、台湾に逃げた国民党の蒋介石が「光復大陸」、共産党政権となった大陸を復興する!というスローガンで使っていた言葉ですが、今回、この「香港を復興する」ということで、その復興が何を意味するのか、一国二制度が崩れ始めたという認識で、そのスタート時点に還って見直しするようなイメージなのか、香港はすでに中国の一部ですが1997年以前のイギリス統治時代の香港のシステム、良き政治風土、伝統への回帰なのか、この言葉の意味するところは思う人それぞれで明確に固まってはいないのですが、現状に反抗して何か再建するという意味で、この「光復香港!」が叫ばれています。

また「時代革命!」は、21世紀に入り中東などカラード革命があり、今もまた香港だけではなく世界各地でさまざまな民衆の対権力での大規模な抗議活動が続いています。

香港の今年の運動も世界的なそうした動きのなかで、この時代に、とくに若者に期待される大きな社会変動の反乱、大改革が必要なのだ、という認識です。

これも、世界各地で勃発する抗議行動の目的はさまざまで、過去の近代市民革命や共産主義革命と違い、一つのイデオロギーに固定されたものがなく、漠然とはしているのですが今の、この渦中にある市民たちにとって、いちばんしっくりとする言葉といえるのでしょう。

南アフリカ ヨハネスブルグ 在住 ロビン・リンさん

南アフリカのラグビーチームは、日本にも大きな感動をもたらしてくれました。そんな南アフリカですが、社会全般はあまり喜ばしい話題がなかったのですよね。

南アフリカでは流行語大賞はありませんが、「今年のことば」というのが毎年10月16日国際辞書の日に発表されます。

今年選ばれたのは「Zondo Commission(ゾンドコミッション)」。

簡単に説明すると、前南アフリカ大統領であるズマ氏を含め、腐敗した政治家や公的部門の幹部を調査するため発足された国家捕獲調査委員会で、連日のように腐敗の当事者をテレビ生中継で公開調査されて、国民の高い関心となっています。その委員会を率いるゾンド議長の苗字にちなんで、Zondo Commission.政府の汚職や腐敗に加え、経済の低迷、記録的な失業率、外国人排斥運動やジェンダーにもとづく暴力問題など、あまりにもネガティブなことが多い一年だったことから、国民全体が「虹の国」に住んでいるという希望を失いかけていました。

そんな中、「スプリングボクス」の愛称をもつ南ア代表チームは「Stronger Together」をスローガンに掲げてラグビーW杯で優勝を成し遂げた。

映画にもなるほどラグビーは南アフリカにとって一国の命運を左右する力を備わっているだけに南アフリカはみんなの心が団結すれば強い国になる証を再度証明した優勝だと思います。

タイミング的には「今年のことば」には選ばれなかったが、「Stronger Together」は今年の南アフリカにはとてつもなく大切な言葉になったと思います。