今朝は、超高層ビルが抱える問題をチェックします。先日の台風19号では、河川の氾濫により、川沿いのタワーマンションが浸水。停電・断水などが続きました。被災されたみなさん、改めてお見舞い申し上げます。

改めて、都市での災害対策が見直されようとしていますが、摩天楼に囲まれた世界の都市ではどうなのでしょう?けさは、アメリカ ニューヨークとドバイに電話をつなぎます。

アメリカ ニューヨーク 中村英雄さん。

JK 20世紀初頭からの超高層ビルが今もたちならぶニューヨークです。エンパイアステートビル、ロックフェラービルなど、建設から90年近くたつビルも多いですよね。よく持っていると感心します。災害対策など、ニューヨークのみなさんは何の心配もしていないのですか?

高層ビルの災害対策に関しては、風洞実験など厳しい法令に従った構造上検査はありますが、そもそも天災の少ない街なので、そこそこのハリケーンが来たぐらいでは、マンションの価格は下がりません。もっとも12年のハリケン「サンディ」の時には沿岸部を中心にかなりの水害や浸水が発生しまして、その影響はいまだに残っているのですが、大多数の市民は忘れています。実際に、マンションを買うときに天災対策に気を回すユーザーは少ないでしょう。それよりもテロや犯罪の方に目を光らせます。

日本の方には本当に、本当に申し訳ないのですが、ニューヨークはそのサンディ以降、全く気象状態が安定していて、このところめちゃくちゃ高層なビルが雨後の筍のように建っているのです。おそらく専門家の間では、細かい研究や調査が行われているのでしょうが、市民レベルまでそれは伝わって来ません。

もちろん老朽化した高層ビルのメンテナンス(特に外壁工事)は、毎日必ずどこかで行われています。これをやらないとビルが途端に痛み、その価値すら低減してしまうのです。外壁工事が始まると、落下物防止用のトンネルのようなものがビルのぐるりを囲みます。専門用語で「スキャホールディング」というのですが、今は建築業界が空前の好景気なので街中至るところで、このスキャホールディングが組まれていて景観はだいぶ損なわれていますね。それだけ一生懸命メンテナンスはしているということですが、目につくところではこんなところでしょうか?

アラブ首長国連邦 ドバイの寺本健一さん

JK 寺本さんは、ドバイで建築家として設計に関わっているプロ。アラブ首長国連邦のドバイは超高層ビルのイメージしかないのですが、こうしたビルはどのくらい建設されているのですか?

ここのところ、ドバイの経済は失速気味とも聞いいていますが、 2020年にドバイ万博 を控えていることもあって、多くの超高層ビル建設現場がありますし、都心部の開発に限らず、郊外の低層住宅なども旺盛に建設されています。

JK ドバイは台風、地震もあまりないと聞きますが、災害への対策は超高層ビルでどうなっているのでしょう?

ドバイの建築も国際基準に従って設計されていますので、災害への対策がおざなりになっている、ということはないと思います。

そもそも、東京に比較すると、 ドバイは、台風や地震のような、いわゆる天災が殆どない地域ですので、設計の条件が東京とは異なっていて、例えば大きな地震の多い日本と、地震の少ないドバイとでは、構造設計の計算の結果が大きく異なるので、結果的にドバイの建築の方が構造に関わる部材が少なく設計されている、という事は言えます。

一方で、例えば、ドバイは東京に比べて非常に日射が強くて、気温の高い地域ですので、超高層建築に使われるガラスの性能は、東京に比べると非常に高性能なガラスが、基準法上、要求されたりしています。