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開催まで一年をきった「東京2020オリンピック」そしてパラリンピック。開催時期の猛暑による選手の熱中症対策や、東京都内の混雑や渋滞など、心配材料は少なくありません。

ところで、世界の都市のみなさんは「東京2020オリンピック」、あるいは東京をどんな眼差しで見ているのでしょうか?

今朝は、2004年にオリンピックを開催したギリシャ・アテネと2008年に開催した中国・北京に電話をつなぎ、それぞれの国で開催された時の話と合わせて伺います。

ギリシャ・アテネ アナグノストウ直子さん。

ハリー:ギリシャ・アテネのオリンピックは 2004年でした。随分前になるので思い出していただくことになりますが、当時、東京と同じく暑さが問題になっていましたね。どのような暑さ対策をしたのですか?

A 夏のオリンピックはやはり暑さとの戦いが問題ですが、対策と言ってもマラソンなど長時間に渡る競技は時間をずらすぐらいしかできませんね。アテネではマラソンは夕方スタートでしたが、それでも棄権したり体調を崩す選手が多かったです。しかしながら、全体的に見てアテネオリンピックはよい大会だったという印象です。元々の期待値が低かったというのもありますが、会場やインフラ整備が間に合わないと散々言われていたもののギリギリで間に合いましたし、オープニングセレモニーが本当に素晴らしかったので盛り上がりました。経済の面で、オリンピックは後の経済危機の原因となったという意見もありますが、それだけが直接の原因ではなかったと思います。交通網の発達などポジティブな影響も大きかったし、施設については管理しきれず無駄になったのも複数ありますが、現在も使われているものも多いです

(選手村は低所得の人向けの住居になっています)。時期的には、8月というのはギリシャのバカンスシーズンと被り、アテネに人が少なくなりビジネスも観光業以外はスローになる時期なのでよかったと思います。なので、東京の方がその点も含め難しいような気がしますが、ギリシャ人からはネガティブな意見は特に聞きません(なんとかなるだろう、と基本的に楽観的なので)。あと、アテネは街中に野良犬が多いのですが、オリンピック開催中は別の場所に移し保護されていました。

ハリー:ありがとうございます。来年の東京のオリンピックについてはギリシャでは話題になっているのでしょうか?

A 東京オリンピックに出場するギリシャ選手の話題がスポーツニュースで出てるぐらいですかね。あと、リサイクル素材のメダルのニュース、水温・水質に関する懸念が話題になっていましたが。開催国以外では直前にならないとそこまで関心は高くないようです。パラリンピックについては、残念ながら日本は福祉があまり整っているイメージはありませんので......オリンピックを機に改善されればいいなという感じです。

中国・北京 鈴木晶子さん

ハリー 北京でのオリンピックが開催されたのは2008年でした。10年以上前のことなので思い出してもらう必要がありますが、大気汚染がひどかった気がします。どのような対応策を講じたのでしょう?

A 2008年北京五輪から今年で11年、早いものです。中国は3年後の2011年に日本を抜いて、GDP世界2位となるわけですが、その3年前の2008年は経済成長まっただ中という感じでした。

そして、北京五輪は、急激な経済成長の負の産物である大気汚染が世界に注目されるきっかけでもありました。IOCからも大気汚染を指摘され、国をあげて取り組んではいたのですが、五輪イヤーの春に、北京アメリカ大使館が北京のPM2.5の数値をTwitterで発表しはじめたことで、危機感が更に明確になりました。

その対策として、工場の操業制限や操業停止、車両のナンバー規制で車の走行の制限などを行ない、開催期間中はだいぶ改善されました。市民は突然の改善に驚きながらも、「五輪が終わったら元通りなんだろうな」とは思っていました。※マラソンの金メダルの最有力候補だったハイレ・ゲブレセラシェ選手がマラソンを欠場し、1万メートルに切り替えたのですが、「北京市の大気の状況は想像以上によく、欠場を後悔している」と述べたほどです。

実際、その通りで、五輪が終わると、工場や車の走行の制限が解除され、大気汚染は更に悪化。2015年ごろが最悪でした。ただ五輪を契機に大気汚染、環境汚染の認識が人々に広まり、国も全力をあげて取り組みだしたことで、数年前から北京など大都市では大気汚染の改善を肌で感じられます。

ハリー: オリンピックが開催されたことで、日々の暮らし環境が改善されたとはすばらしい。

来年オリンピックを控えた東京の問題など伝わっていますか?あるいは、中国から近い東京にやってくる中国の皆さんも多いと思います。どんな眼差しで東京オリンピックを見ているのでしょう?

A ここ数年の日本旅行熱が来年の五輪イヤーは更に盛り上がりそうですね。東京五輪への期待といえば、まずはアニメですね。(先ほどリオの方が話された通り?)リオ五輪の閉会式の安倍首相扮するマリオ、ドラえもん、キティちゃんなどの登場は、中国でも大きな話題となりました。日本のアニメ、ゲームファンは中国にもたくさんいて、日本のアニメやゲーム好きから日本が好きになり、日本語を学ぶ人も少なくないんです。ドラえもん、コナン、ポケモン、ワンピースは中国でも大人気。そんなキャラクターたちが東京五輪でどんなふうに登場するか、楽しみにしている人は少なくありません。

あと、新国立競技場も注目です。東京オリンピックのシンボルだからというのはもちろん、設計したのが隈研吾さんだからです。隈研吾さんは中国でエリア開発や、総合ビルやホテル総合ビルやホテルなどの設計を数多く手掛けており、とても有名なのです。中国は五輪に熱心な国なので、どの競技も注目していますが、特にこれとなると、やはり卓球です。卓球は中国の国技で、これまで圧倒的な強さで他国を寄せ付けなかったのですが、近年、日本の台頭が謙虚となり、日本脅威論がささやかれる時期もありました。最近はまた中国は絶対王者としての貫禄を取り戻していますが、東京五輪でどのような結果になるか―――熱い注目が集まっています。