日本時間2月4日に行われた、プロアメリカンフットボールの決勝戦「スーパーボウル」。このテレビ中継の視聴者数は毎年1憶人以上にのぼり、コマーシャルの広告料は世界で最も高額と言われています。今年は、日本の楽天もコマーシャルを打ったことが話題になっていますが、今朝はそんな「テレビコマーシャル事情」をチェック。テレビ市場の大きなアメリカ、そして中国に電話をつなぎ、お話を聞きます。

アメリカ ニューヨーク 中村英雄さん

JK 中村さんは、テレビCM観てますか?

A :それがあまり観てないんです。

JK えええ!?のっけからぁ。困りますよ!

A :すみません!でも、その観ない理由と最近のアメリカのテレビCM事情はお話しできます。

JK テレビ離れが進むニューヨーク。そんな中でテレビCMは、まだ健在なのでしょうか?

A :統計を調べてみました。2010年(9年前)と2020年(推定)の10年間で、アメリカ企業の広告費のうちわけ推移を見ると、テレビ媒体が占める割合が2010年の38.4%(当時は一位)から2020年には32.9%まで減少しています。14%減です。かわりにデジタルは2010年の17.1%から2020年の44.9%まで実に262%も増加しています。テレビデジタルの割合が逆転したのは2017年のことで、この傾向は今後も続くと観られます。(eMarket調べ)。

JK 統計上も明らかにテレビCMの重要性が低下しているわけですね。

A : はい。そんな中で、どんな企業のテレビCMが多いかというと、ダントツで薬品とバストイレ関連が一位。そのあとに家庭用品、家具、電化製品のカテゴリー、第3位がギフト、趣味、玩具、4位が一般商品、5位にアパレル、6位が車や旅行関連という順番になっています。

JK テレビ広告業界の収入も激減しているのですか?

A :それが興味深いことに、それは上がっているんです。2018年には710億ドルもあって、2022年にはそれが749億ドルに増加するとの予測もあります。

JK どこにお金を使っているのでしょうか?

A : 難しいですね。ひとつはあとに述べますが、例のスーパーボールの生放送中CM払って、法外な制作費をかけた「スーパー」な立派なエンターテイメント作品を作っていますので、そこにはお金がかかっている。もうひとつ、面白いのは、広告費の伸び率データを見ると、ローカル局CMで11.3%全国ネットでは2.8%と明らかな差があることです。

JK つまり、ローカル視聴者に向けたローカルなビジネスの宣伝広告が中心ということですね。

A : はい。テレビCMは、中高年層ターゲットとローカル、この2つに生き残りをかけているような気がします。

JK でもその一方で, さきほどの「スーパー」なテレビCM気になるんですが...

A :やはりスーパーといえば先日の「スーパーボウル」。このアメリカで最大のスポーツイベントの生放送で放送されるコマーシャルクリップはテレビCMの最高峰ばかり。なんといってもテレビ局が請求するCM料金だけでも30秒で500万ドル(5億円超)ですから全てが破格です。普段はテレビを観ない視聴者層(コード・カッターを含めて)もこの日ばかりはテレビの前に釘付けですから、かならずこれらの「スーパー」は観ます。そして翌日の職場や学校での話題になる。

JK 今年はどんな企業のCMが話題になりました?

A :この時ばかりは、中高年者層ローカルのセオリーはいったん外して、今、儲かっている会社が一堂に会するので、見ものなのですが、実に様々ですね。みんな工夫を凝らしている。たとえば、テニスのセレナ・ウィリアムズの半生を振り返りながら「自分でやらなきゃ何も始まらない」というメッセージを発信するデート・アプリの会社。ビールのバド・ライトは、商標をバド・ナイト(バドの騎士)ともじって、ゲーム・オブ・スローンの世界をパロっていました。一方、紙おむつのパンパースも人気歌手ジョン・レジェンドが、むくつけき男性コーラスと一緒にオムツ替えするという奇抜なアイデア(男性の子育てが既に一般的になっている証左でもあるのですが)で勝負。有名人や有名スポーツ選手を惜しげなく起用するCMが多い中、携帯キャリアのTモバイルは、チャットの更新画面だけの広告を提唱。外食のバーガーキングは、ポップ・アートのアンディ・ウォーホルがバーガーを食べるだけの前衛映像を再利用して「Eat Like Andy」と銘打ちました。

JK アメリカの中村英雄さん、ありがとうございました。

中国 上海の松田奈月さん

JK 松田さんはテレビご覧になっていますか?

A :

JK 中国ではどんなテレビコマーシャルが多いのでしょう?

A :多い業種としては、飲料、医薬品、食品、化粧品、化粧品、アルコール、サービス業、自動車など交通となっていて、特に飲料・医薬品・食品が市場を牽引しています。中国では日本以上に若者のテレビ離れが進んでいるため、ファミリー向けや中高年者向けがテレビCMが中心となり、飲料・食品・日用品が変わらず強いです。また医薬品CMも欠かせません。ただし、中国の広告法で、医薬品CMでイメージキャラクターが勧めたりという行為は禁じられているので、タレントを採用しない比較的固めの内容、もしくは効能ではなく家族のあたたかさをアピールような内容がよく見られます。(日本のように、タレントさんが「(薬を)早く飲んでね」と勧めるような内容は禁止されています)お酒のコマーシャルも多いのですが、同じく広告法により、アルコールを飲むシーンを出すことが禁止されているので、こちらもイメージ的なCMがメインになっています。(ほかに日本とは違うCM規制では、外国語が出たら必ず中国語字幕を出さないといけないという決まりがあるため、CMのイメージソングが英語だった場合、コマーシャルの内容と関係なくても、歌詞の翻訳が必ず画面に出ることになっています)

JK タレントさんを起用してはいけないということですか?

A :若者向けの商品である炭酸飲料やファーストフードなどのコマーシャルでは、旬の人気タレントが贅沢に起用されています。スポンサー企業は、従来の業種だけでなく、最近勢いのあるデジタルメディアもテレビCMを派手に展開しています。新しいSNSサービスや、日本でも話題のTikTokなどは、テレビCMだけでなく、人気番組の冠スポンサーになって、番組コンテンツとの提携をはかったりしています。今年は、2月5日が春節でしたが、その前日のいわゆる大晦日に中央テレビで放送される紅白歌合戦のような大型番組『春節晩会』での広告スタイルも話題になりました。この番組は5時間ほどの番組なのですが、間に放送されるCMはあまりの過熱ぶりに数年前から公共広告のみに。

JK 中国 上海の松田奈月さん、ありがとうございました。