2020年、東京オリンピックの開催に合わせて導入が検討された「サマータイム」。結局は考えられるデメリットの多さから、議論は先送りということになりました。さて、そんな「サマータイム」発祥の地・イギリスを含むEUでは市民生活への影響、どうなっているんでしょう。2つの国の通信員に電話をつないでお話を伺います。

「サマータイムは、どう受け止められていますか?」

サマータイムという概念を生んだ国イギリス ロンドン 川合 亮平さん「ありがたい」

ドイツ ミュンヘン シッター由香さん「支持する国民は少ない」

●イギリス ロンドン 川合亮平さん

Q 現在のDaylight Saving Timeについてはどうですか

3月の最終日曜日:1時間進め、10月の最終日曜日:1時間遅らす、というルールが、現行のEU規制によって、EJ加盟の全28カ国に義務付けられています。

Q どうやらサマータイムはイギリスが初めてだったとか

世界で初めてDaylight Saving Timeが導入されたのが1916年のイギリスで、当時、第一次世界大戦に関わっていたその他の国々もほぼ同時に導入。実はDaylight Saving Timeを発明したのはイギリス人です。

建築家のWilliam Willett(ウィリアム・ウィレット)さんが、1905年に英国時計学会が主催したイベントに出席して個人的な着想を得たのがそもそもの発端です。当時、彼のアイデアは誰にも相手にしてもらえなかったんですが、最終的に1916年に実現するまで、ウィリアムさんは諦めず、孤軍奮闘されたと伝えられています。実は、ウィリアムさん、イギリスの大人気バンドのヴォーカリスト、コールドプレイのクリス・マーティンのひい・ひいお爺さんなんです

Q 賛否がある制度の存続、もしくは廃止についてはどうなりそうですか

僕の周囲のイギリス人のDaylight Saving Timeへの反応は、概ね「家じゅうにある時計を、年に2回も変更するのは面倒臭い」というのが多数意見です。ただ、現状の制度を廃止して、"時間を進めたままにする"というアイデアに賛成の人が多いように感じます。そうした方が、1年を通じて日照時間をより有効に使えると考えられています。

●ドイツ ミュンヘン シッター由香さん

Q ヨーロッパもデイライトセイビングを導入していますが、イギリスより、1時間遅れているのですよね?

ドイツでは戦時中に数年サマータイムが試みられた時期があったようですが、本格的な導入は1980年から。何しろ冬が暗くて長いドイツでは日照時間を長く活用できるという目的で導入されたが、サマータイムに対する国民の支持は低い。実際、20年以上住んでいても毎回軽い時差ボケのような感覚に陥るのは免れないし、特にお知らせがあるわけではないので気をつけなければいけない。夏時間は3月最後の日曜日、冬時間は10月最後の日曜日に始まるのだが油断しているとうっかり忘れて遅刻、もしくは1時間早く出社なんてことも。勤務先の空港では夜勤の時サマー、もしくはウィンタータイムのせいでその日は勤務時間が1時間短いとか長いとかで揉めたりすることもしばしば。1年に2回も体内時計を強制的に進めたり遅らせたりすることで起こる睡眠障害や事故の発生率が上がるなど、たった1時間の差がとても大きいという理由からドイツでのサマータイム支持率は2018年の現時点で27%ととても低い。

ちなみにサマータイムは夜中の2時に突然針が進んで3時になりがっかり、ウィンタータイムは3時に2時に逆戻り。こちらはちょっとテンションが上がります。