きのうは「国際博物館の日」でした。博物館といえば、研究・収集・展示・保存・管理などを行う、資格認定された「学芸員」がとても重要な役割を担っています。しかし、日本ではその理解があまり進んでいないのか先日、地方創生大臣の学芸員批判が物議をかもしました。さてあの国での「学芸員」はどんな存在なのでしょうか。今朝も、二つの国にコネクトします。

⚫️「学芸員はどんな身分なのですか」という質問です

フランス・パリ ドゥヴィアンヌ園子さん

「国家試験があり公務員です」

中国・北京 All About北京ガイド 鈴木晶子さん

「とくに資格はありませんがその存在はメジャーです」

⚫️ フランス・パリ ドゥヴィアンヌ園子さん

Q 地位が高く数も少ない気がしますが?

A フランスでは博物館の学芸員をConservateur コンセルヴァトールと呼んでいて『保存する係りの人』というそのものずばりの言葉。国立博物館を始め、公立のミュージアムが仕事場です。コンセルヴァトールの資格(年間50人)を与えているのは国立文化遺産学院(INP)という組織で文化省の管轄です。

Q どうやったら資格を取得できるのでしょうか?

A 美術や考古学などの専門の勉強を済ませた後この試験を受け、合格したら自分の専門分野での研修があり、配置された博物館所蔵品を徹底的に勉強し研究を続けるのです。その保存技術や修理技術も会得し、所蔵品を紹介する展覧会プランや広報活動にも尽力します。要するに所蔵品の保存と紹介をする責任者です。学芸員資格試験は公務員なので、フランス国籍の学生に限られますが、国立文化遺産学院では留学生を受け入れる研修プログラムもあり、学芸員の国際交流もはかっています。

⚫️ 中国・北京 鈴木晶子さん

Q 芸術同様、長い歴史がありそうなのですが

A 中国でキュレーター「策展人(ツージャンレン)」はメジャーですが、80年代ぐらいまでは、英語のcuratorは"博物館館長"と訳されてくらいで、当てはまる仕事がありませんでした。ちなみに今の「策展人」という中国語を生みだしたのは台湾の方で、その登場は中国現代アートの発展と大きく関係しています。中国の現代アートは、中国が改革開放政策を始めた激動の時代に育った60年代生まれが中心となって生み出していて、国内よりも海外でまず大きく評価されたのですが、その背景には世界の著名なキュレーターの活躍がありました。それが中国で真にキュレーターの存在を定着させるきっかけだったのです。

Q キュレーターになるための資格がないということですが

A 当初、中央美術学院(最高峰の芸術大学)など著名な芸術大学を卒業し、イギリスやイタリアに留学した人が、名乗ればキュレーターになれた、という時代もありました。今もみなさん著名なキュレーターの下について仕事経験を積むなどしてキュレーターになっています。こういうと中国でキュレーターになるのは安易なようにも聞こえますが、実はその逆です。職人のように師匠について、コツコツ実力と実績を積むしかないので、若手が一人前のキュレーターとなるのは非常に厳しい状況です。 そして中国の著名なキュレーターのほとんどが、芸術系の大学の教授や美術館館長、美術評論家を兼任していて、美術界で活躍しています。今後は以前問題になったニセモノの展示を排除し、国家レベルでの文化遺産や芸術品の保護や管理に力を入れていくはずで、そういった面でのキュレーターの活躍も増えていくでしょう。