アメリカのトランプ大統領就任後、矢継ぎ早にオバマ政権からの変革を打ち出す大統領令が次々と出ています。その中でも健康保険制度の「オバマケア」の見直しについて国内の最優先課題としているようです。そんな「健康保険」はあの国ではどうなのでしょうか。世界の「健康保険事情」について、今朝も二つの国にコネクトします。
「病院の医療費と、気軽に病院にかかるかどうか?」という質問です
イギリス・ロンドン 川合亮平さん
「基本は無料ですが、待ち時間が長くめったにかかりません」
アメリカ・ニューヨーク 中村英雄さん
「医療費は高額なので、やはり気軽にはかかれません」
イギリス・ロンドン 川合亮平さん
Q イギリスでの医療保険のシステムはどうなっているのですか。。
A NHS(National Health Service)という制度で税金のシステムがあり、労働者はそれぞれの所得に応じておよそ9%を徴収されます。現状は年間1千4百27億ポンドで、政府の財政の18%を占めます。NHS傘下の医療機関での診察・治療・入院・手術は無料。日本と違うのは出産やガン治療も含めて全て無料というところです。例外で有料なのは、一律£9という処方箋料と、程度に応じて変動する成人の歯科治療ですが、私立の歯科医より割安です。
Q NHSの良いところと悪いところは、どうなのでしょうか
A 良い点はどんな症状に対しても基本的に全部無料だし、支払いが生じる場合についても、どんな人にでも支払える価格設定になっていることで、社会的バックグラウンドに関わらず、万人に開かれた制度であること。財政難といわれて久しいが、社会の中で国民が頼れるシステムとして、これまでしっかり機能していることは、その歴史が証明するところ。。
悪い点ではポストコード・ロッテリー(郵便番号宝くじ)という言葉があり、自分の住んでいる地域によって受けられる医療の質が異なってくる事。設備などの充実度に病院間で格差があり、生死を分ける事もある。国のジレンマは、国民の健康状態の向上と、NHS資金の節約という矛盾する2つのゴールを達成しなければならないこと。資金節約の結果、医療従事者の不足や、ベッド数の不足は社会問題。救急治療や、深刻な病状に関しては、すぐに治療が受けられますが、普通は治療を受けるまで長時間待たなければならないので、(場合によっては数週間〜1ヶ月以上)、風邪引きや熱が出たくらいで病院に行くなんて考えられない!のです。
アメリカ・ニューヨーク 中村英雄さん
Q 基本的な医療保険の考えはどういうことなのでしょうか
A アメリカは日本と違い国民皆保険が行き届いていません。医療保険は個人が、保険会社の商品を買う形になっており、企業などに勤務している人は福利厚生の一環として、かなりいい保険に入れますが多くの人々(いっときは5000万人とも言われた)が'無保険者です。アメリカでは、保険会社が医師のネットワークを持っていて、その中にかかりつけ医師やガンの専門医が入っているのです。一般的に安い保険だと医師の質は低く、その優劣は日本の比ではありません。
Q オバマ大統領の打ち出したオバマケアはどういうものですか
A 公約の一つとして、無保険者の撲滅を掲げたオバマケア。収入に応じて既存の保険プランを示してくれるわけです。アドバイザーは州政府の関連機関。そこで、それなりの保険会社を選ぶと、チャチャッと引き算して「この分は州政府が負担します、月々80ドルだけご負担ください」みたいに自己負担が算出されるのです。ちなみに私の月々の負担額は妻の分も含めて300ドル程度。かつての大手保険会社による医療保険が1000ドル以上だったので本当に助かります。かなりの人間が保険に安く入れるようになりましたが、別の多くの人たち、特にすでに高額な保険料を支払って良い医療を受けている人にとっては、税金の無駄遣いであり、医師が選べない悪い制度となるので、見直しとなるとこれがどうなるのでしょうか。