おととい23日は「勤労感謝の日」でした。 今、残業時間が長いわりには、生産性が向上しないという、日本人の「働き方」について問われています。あの国での「残業事情」はいったいどうなのでしょうか?今朝も二つの国、二つの都市にコネクトします。

⚫️フィンランド エスポー 遠藤 悦郎さん

Q 残業が少ないという実態についてはどうなのでしょうか。

A 効率よく就業時間内に仕事を終えるのがよいと考えられているほか、それを前提に世の中のスケジュールが組まれています。一般的な勤務時間はだいたい 8-16時、あるいは9-17時 が基本で、普通のオフィスや作業場は16時以降に電話をかけても誰も出ません。最近は電話が携帯番号のみで仕事との共用という人も多いのですが、定時以降の時間に仕事の電話をかけるのは、相手に失礼とされていて、かかってきてもとりません。もちろんお店やサービス業、シフト勤務などで、勤務時間にとらわれない裁量労働制の雇用形態も以前より増えています。それでも基本的に「人間らしい生活」をすることは重視されているので、さっさと仕事を終わらせて帰りたいし、その権利があり、行使しています。仕事が終わった夕方以降は、自分のスポーツや文化の趣味、家族や友人と過ごす時間にあてます。たとえば小さい子供がいる場合、大半の家庭は共働きなので、父母どちらかの親は保育園へのお迎えに行きます。通常保育園は夕方4:30ごろにはだんだん空っぽなり、5時には閉まってしまいます。

Q 残業についての制度はどうなのでしょうか。

A 業界ごとの労働協約や個別の契約内容によって違いがありますが、法律上の就業時間は、基本が週に40時間(1日8時間x5日)で超えた分は残業になります。残業は雇用者にとっても高くつきます。定時以外の超過勤務の給料の原則は法律で決まっていますが、残業最初2時間分が 給料50%増、それを超えると100%増し、つまり倍額。日曜日休日出勤は終日100%増にしなくてはなりません。出費を抑えたい雇用者にとっても、残業や休日出勤へのブレーキになっているように思います。

(参考:超過勤務の法定上限も4ヶ月で最大138時間、年間250時間)

アメリカ ニューヨーク 中村 英雄さん

Q 残業があることはあるんですね?

A  ブラックな職場も多く、見えないところではかなり不当な残業を強いられているようです。ただ日本の会社のような「他の人がまだ仕事しているから帰宅しない」みたいな意識はありません。サラリーマンを例にとれば、週40時間以上の労働はオーバータイム(時間外労働)でこれには1.2倍以上の時給が支払われる決まりになっています。ただダラダラと職場に残って、残業代を稼ぐのは非倫理的ですし、会社も許しません。「ちょっと一緒に会社のそばで飲食してからまた職場に戻って仕事をする」みたいなことも、絶対にありません。仕事が終わりきらない時は、家に持ち帰る事もあります。通勤電車の中で、年次報告やプレゼン資料と格闘しているビジネスマンをよく見かけますよ。地下鉄でも学校の教師らしき人がよくテストの採点を、帰宅途中の車内でやっています。でも米国では、家族持ちは、家族が第一ですから、下手に残業して遅くなろうものなら夫婦や親子の関係にヒビが入ります。それなので定時に帰宅。残った仕事は家でやる。といった感じですね。スーツ姿のサラリーマンをコンサートなどでは、ほとんど見かけません。先日、高齢者ファンが多いAC/DCのマディソンスクエア公演いった時も、会社の管理職レベルと思しきひとたちもたくさん聞きに来ていましたが、みんな一度帰宅してからAC/DCに着替えて会場に臨みます。オンとオフの境目はくっきりわかれています。

Q 残業手当などについてはどうなのでしょうか。

A  時間外労働手当の話としては、適応されるレベルのポジションが相対的に少なく全体の7%ぐらい。というのも年収2万3660ドル以上の管理職は、時間外手当がつかず、実質的にはないに等しい。それなので誰も残業したがらないのです。来月から法律が変わって、その支給制限対象が「年収で倍以上」まで引き上げられるそうですが、経営が厳しい雇用者にとっては、大きなダメージとなりそうですが、とにかくアメリカ人は残業に対してポジティブな見方を持っていません。過労寝不足で鬱になって病気になるケースはあると思いますが、退職するなり、転職するなり、会社を訴えるなりして、直ちに、その状況から脱出するでしょう。