今回は、東京・三鷹市にあるお菓子屋さん、フランス菓子を中心にさまざまな種類のお菓子を製造・販売されている、『ka ha na -菓 葉 絆-』のHidden Story。

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『ka ha na -菓 葉 絆-』の店主は、根本理絵さん。京都のご出身で、お菓子の専門学校を卒業後、結婚式場で勤務。その後、大阪にある名ベーカリー『ル・シュクレ・クール』のオーナーが開いたパティスリーに入り、25歳でシェフ・パティシエを務めることになります。

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そして、2014年。今度は、東京・西麻布にある、ミシュランの星付きフレンチレストラン『レフェルヴェソンス』へ。

「お菓子屋さんとはスピード感が全然違って、アイスクリームとかも出てきますし。一瞬で溶けちゃう、一瞬でダメになっちゃうような、すぐにお客さんのところに持っていって、すぐに食べてほしいみたいな。そのために、この一皿をみんなでワッと盛ってすぐ客席に持っていくみたいな感じで、お菓子とは全く提供の仕方が違うというか。最初は全然ついていけてなくて、スピード感も違って、ちょっと向いてないのかも、みたいには思ったりもしたし。ただ、本当に新しい世界で。使ってる食材が見たこともない、聞いたこともないようなものがすごくたくさんあったんですよね。刺激があって、こんなものも食材に使えるんだとか、これってこんなふうにお菓子にできるんだとか。しんどいながらもここにたい、というか、ここにいないといけないみたいな。勉強したいと思ってるんだったら、私はここにいないといけないみたいな。そういう感覚ではありましたね。」

根本さんは、『レフェルヴェソンス』でもシェフ・パティシエを任せられ、およそ3年間 腕をふるいます。そして、ご結婚、ご出産をはさみつつ、2018年からは調布にあるレストラン『Maruta』でデザートメニューの開発やシェフパティシエを務められました。

「食材も地産地消じゃないんですけど、身近にあるものを使ったり、食材とされてないようなものを使って料理をしてみたり、お菓子を作ってみたり。ちょっと変わったレストランなんですけど、'育休中で、もし時間あるならレシピ作ってもらえませんか'というような依頼を受けたのが始まりで、家も近かったんですよね。家が近かったので、それこそ赤ちゃんを連れてレストランに行って、スタッフの子にお菓子教えて帰るということをしていて。それと、Marutaで働かせてもらった理由がもう1つあって。すごい広いお店なんですけど、営業日がわりと少なかったんですね。で、平日の厨房をちょっとだけ使わせてほしいというのをお願いして。そこで自分のお菓子を作って売ろうかなと思ってオンラインの販売をし始めたのが、Marutaの厨房を使わせてもらったのがきっかけで。」

根本さんは、自身のブランド『LieR.oyatsu』を立ち上げ。そして2023年、ブランド名を『ka ha na -菓 葉 絆-』に改め、その翌年には、三鷹に実店舗をオープンされました。

「どんなお菓子を作りたいのかなって考えた時に、今までのレストランで出会ってきた食材だったり、自然の恵みみたいな、自然からもらえる食材みたいなところに着目して。お菓子もそういう自然とのつながりがあることで作られているというか、自然とつながるお菓子というのをコンセプトにしてるんですけれども。

ka ha na -菓 葉 絆-は、お菓子の菓に、葉っぱっていう漢字。それとほぼ当て字なんですけど、naっていうのが絆という字で作ってるんですけれども、元々、《花》という言葉を入れたかったんです。お菓子にも、お花の香りだったり、お花の要素を使うのが好きだったので。あと、Maruta時代に色んな葉っぱを使ってお菓子を作ったりとかをしていたのがあって、自然とのつながりみたいなところを表現したいなっていうところで、ka ha na -菓 葉 絆-っていう、葉っぱ、絆みたいな、当て字で作ったんですけど。」

コンセプトは、自然とのつながりを表現したお菓子。実際、どんなラインナップのお菓子があるのかというと...

三鷹で、この土地に合わせてというか、あまりガチガチのフランス菓子にはしたくなくて、もうちょっと親しみやすいプリンとかシュークリームとかチーズケーキとかいったものも作っていて。

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ファーブルトン

焼き菓子はもう最近ではわりと馴染みがあると思うんですけど、カヌレとかフィナンシェとか、マドレーヌとか、ファーブルトンとかガトーバスクとか、結構フランス菓子っぽいものも置いてて。どれも焼きたてが美味しい、できたてが美味しいというのを感じてもらえるお店がいいなと思ってたので、そのまま、袋とかに詰めずに、カヌレもフィナンシェも全部裸で並べて、そのまま紙袋に入れて販売しているというような形ですね。

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あと、ケーキもあります。ショートケーキとか、タルトとかミルクレープとか、結構ジャンル問わず作ってます。作りたいお菓子がすごいいっぱいあるので、どんどんどんどん種類が増えちゃって、販売のスタッフの方が'ちょっと今日場所がなくて置ききれないです'ぐらいになっちゃってるんで。でもカヌレとかはラインナップから外せないし、フィナンシェも外せないしとかで、結構どんどん増えてっちゃってますね。」

根本さんからも【外せないお菓子】として名前の挙がったフィナンシェ。その美味しさの秘密はどこにあるのでしょうか?

20250926h03.jpgフィナンシェ

「フィナンシェの味の決め手はこがしバターかなって思ってるんですけど、こがしバターの具合で全然味が変わるので、どれぐらいの色にこがして止めて入れるかというのと、あとは表面のサクッとした感じと、中のしっとりした感じ。そのしっとり感が続くように、粉の配合とか混ぜ方だったりも考えて作ってます。やっぱり、毎日本当に同じところで止めてるかっていうと、もしかしたらちょっとしたズレがあると思うんですけど、でもそれもちょっと面白いお菓子で、今日はこがし具合がもう絶妙だったからすごい美味しくできたなって。もちろん毎日同じ美味しいものを販売しないといけないというのは前提として、ただ、日々表情が変わるっていう部分が面白いんじゃないかなって思ってて。フィナンシェひとつにしても、今日はこがし具合が完璧だったからすごいおいしそうに焼けたとか。お客さんはそれも気づかないぐらいの微々たる差なんだと思うんですけど、スタッフ間でそういう話をするのも楽しいですね。'今日のファーブルトンめちゃくちゃおいしそうやんな'みたいな話をして、'なんか変えた?'みたいなことをスタッフの子に聞いたら、'ちょっと今日はバターをこの辺に入れてみました'とか'いつもこうしてるんですけど、こうしてみました'みたいな。'あ、だから今日綺麗にあがったんや'みたいな。そういう会話も楽しいなって思います。」

最後に、今後のヴィジョンについて『ka ha na -菓 葉 絆-』の店主、根本理絵さんに教えていただきました。

「お菓子屋さんとしてすごく有名になるとか、レベルの高いお菓子屋さんを目指すとか、そういうことは実はあまりなくて。どちらかというと、ここにずっとあって、みんなが嬉しいなって、地域の人もだしスタッフもだし、自分もこの場所があってよかったなって思えるような場所作りみたいなのができたらいいなというのがあるかなと考えていて。なんかそれは、このお菓子屋さんがあることによって、休みの日にすぐ近くにおいしいケーキ屋さんがあるからケーキを買いに行けるとか、まずそれはお客さんにとってのひとつのいい場所・嬉しい場所というか、さらにそのスタッフの子たちにとっても成長できる。ここのお店にいるとこんなことが学べるとか、11人が成長したり、次のステップに向かえるようなお店になったらいいなというのが、目標というか、最近考えてることですね。」

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