今回は、ホラー小説『近畿地方のある場所について』のHidden Story。

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作者の背筋さんにお話を伺いました。『近畿地方のある場所について』。この小説は、そもそもは、小説投稿サイト【カクヨム】で連載。その後、単行本化。さらに、文庫本にもなりました。単行本と文庫本で少し内容が異なるんですが、文庫本のストーリーをちょっとだけご紹介しますと

オカルト雑誌の編集者である主人公の友人、

フリーのライターが、失踪。

そのライターが失踪直前まで調べていたのは、、、

〔幼女失踪事件〕〔林間学校での集団ヒステリー〕

〔心霊スポットでの動画配信騒動〕など、

過去の怪奇現象や、謎の多い事件。

そして、それらが実は、【近畿地方のある場所】につながっている。

この小説の作者が、今回お話をうかがった背筋さんです。『近畿地方のある場所について』がデビュー作ということなんですが、そもそも、どんなきっかけで小説を書こうと思ったのでしょうか?

「もともとホラーが大好きだったんですね。映画だったり小説だったり、媒体問わず好きだったんですけど。その中でちょっと自分でも書いてみようかなと思ったのがきっかけで。なので、2023年にデビューなんですけど、その年の初めから書き始めた感じで。本当に思いつきで、みたいなのが正直なところです。そこまで立派な動機があったわけではなくて、友達と飲んでる時に好きなホラー映画の話とかいろいろしていて、なんかふと'じゃあ自分は書けるのかな'と思ったんです。今までは見たり読んだりする側だったんですけど、自分で作る側に回ることはできるのかなと思ったというのがきっかけです。」

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'自分にもホラー小説は書けるのかな'と思い立って小説を書き始めたという背筋さん。

では、『近畿地方のある場所について』 というこの作品はどんな着想を得て 書き始めたのでしょうか?

「ホラーが好きだったっていうのもあって、自分がいろんな場所で聞いたりしたお話から膨らませて書いたっていうところで。それで、元々、関西出身で必然的に近畿地方にまつわるお話が多かったので、ストレートにそういう風な名前をつけた、みたいな感じですね。」

具体的なお話も伺いました。小説の中に出てくる【近畿地方のある場所】についてのお話。その1つに、近畿地方のある場所のダムのエピソードがあります。

「地元の近くではないんですけども、ダムを友達と見に行った時にちょっと怖いなと思ったというのもあって、それをお話の中に入れました。ダムの場所はネガティブキャンペーンになってはいけないので、あんまり言わないようにしてます。ただ、ダムなので人里に近い場所にあるというよりは結構山の中、山道を走った先にあるところで。わりと雰囲気があるというか、あんまり普段なら立ち寄る人もいないような場所だったので、ちょっと怖いなみたいな感じで。で、ダムの近くに神社があって、その廃神社みたいなところに行ったら...なんて言うんでしょうか、ちょっと普通のお参りをしている感じではない人がいた、というのがあって。」

廃神社に、普通のお参りをしている感じではない人。ちなみに、車を使わないと行くのが難しそうな場所なのに駐車していた車は、背筋さんたちの車以外は...なし。

こうしたエピソードがいくつも重ねられていき、どんどん怖くなっていく、『近畿地方のある場所について』。

「もともとは山にまつわる話にしようかなと思ってたんですけど、山だけだとちょっと広がりがないなっていうところで、都市伝説風味な女性の幽霊だったりだとかもどんどん入れていって。だから、書いていくうちに話のジャンルだったりだとか、幅も広がっていったみたいな感じで。そもそも、本当に1つの物語というよりは、掌編をたくさん書く、というところがあったので、そういう意味ではひとりでにバリエーションがついていったというような感じで。話自体も、誰かから聞いたことが元にあったので、ある種そういう意味でリアリティを感じていただけたのかな、という風に思っています。」

'誰かから聞いたことが元にある'という言葉がありました。

これは、怖い話について取材をされているのか、それとも、ご友人などとの集まりでそういう話が出てきたのか。どういう形で集まってきた話なのでしょうか?

「そんなに取材というわけでもなく、普通に飲んだりとか、あと新しい人と知り合いになった時に'ありますか?'という世間話程度で振っていくというようなぐらいなので、あまり怖い話を募集したりだとか、どこか遠方に足を運んでみたいなことはしてないですね。最初は皆さん'ないです'っておっしゃるんですけど、'ないです'と言う方に限って、'そういえば...'って言って、結構怖い話してくださったりすること、多いですよ。」

 ちなみに、こんなことも聞いてみました。背筋さんは、怖い小説を書いていて自分が怖くなることはないのでしょうか?夜中に文章を書いていて、ガタッと音がして、あれ??みたいなことは??

「いや、特にはないですね。自分が作ってる話なので、あまりそれで怖くなったりはしないかな。霊感とかはないので、全然そういうのを感じたり聞いたりとかは自分自身でしたことはないですかね(笑)。」

最後に、背筋さんはホラーの魅力をどんなところに感じてらっしゃるのか?そして、今後の創作活動についてのヴィジョン教えていただきました。

なかなか言語化することが難しいなと思ってはいるんですけど、でもやっぱり非日常を味わえるというところなのかな、とは思ってて。本だったりとか映画で体験して、で、現実世界に幽霊がいるかどうかはわかんないんですけど、見ることはそうそうないので、'よかった、今平穏な日常が送れてて'と思えたりするところが魅力といえば魅力なのかもしれないですけど、なかなか口で説明することが難しいなと。ジェットコースターに乗りたい、というのに似てるのかもしれないですね。そうですね、今後。多分、当面はホラーになると思うんですけど、怖さの中でも色んな怖さがあると思うんで、自分は幽霊しか書かないんだとかそういうのに限らず色んな作風に挑戦していければいいな、っていう風には考えてます。」

『近畿地方のある場所について』

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単行本

文庫本