今回は、前回に引き続き 久保田利伸さんのHidden Story。40年にわたるキャリアの中から、いくつかのトピックに絞ってお話を伺います。

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まずは、86年ファーストアルバム『SHAKE IT PARADISE』に収録された人気のナンバー、【Missing】について。

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「この曲なんかデビュー前に作りましたから、単純に何も考えてない曲作り。曲なんかはここでもう言っちゃってもいいなと思うんですが、こたつに入りながらフォークギター。友達から借りたまんまのフォークギターみたいなやつで、ちゃらんちゃらんって曲を作って。で、いつものパターンで、それは鼻歌っぽかった。そこにその時の青春の恋ですか、青春の青い恋心が言葉として乗っかっている。あまり工夫せずに、というものですね。とっても人気のある曲なんですが、そのなんかピュアな感じがいいんでしょうね。」

その後、89年にリリースされたベストアルバム『THE BADDEST』が120万枚を超えるセールスを記録するなど、絶大な人気を獲得した久保田利伸さん。やがて、アメリカ ニューヨークで音楽制作をスタートするようになります。そして、1995年。Toshi Kubotaとして、全米デビュー。

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「一番意外だったのは黒人の人たちですよね。日本人がソウル、R&Bをやる。僕はただ好きでやるんですけども、でも例えば黒人インタビュアーとかでも"なんでToshiはジャパニーズなのに私たちのソウルミュージックを、私達の音楽をやるんだ?"って。それ、怒ってるっていうんじゃなくて、不思議みたいな感じで。でもそんなイメージがあって、ちょっとあんまりストレートにはこう進んでいかないなと思っているようなところに、the RootsQuestlove、ドラムの彼が、僕とちょっと親交があったんですけども"またお前そんなこと言われてるな"って言って。そういうインタビューの人とか、公の場所で、そういう人たちに向かって"とにかく聞け"と、ただ聞けと。"先入観、古くね?お前ら。"みたいな。そういう風なことをクエストラブみたいなやつが言ってくれて、そういえば僕に1番初めに影響を与えたスティービー・ワンダーも"Music is universal language"って言ってたな。まさにそういうことじゃん。」

この曲のことも伺いました。96年にリリースされて大ヒット!テレビドラマ《ロングバケーション》の主題歌だった、久保田利伸 with ナオミ・キャンベル、【LA・LA・LA LOVE SONG】。<ナオミ・キャンベルさんとの出会いは、エレベーターの中>というエピソードが知られていますが...実際はどんな出会いだったんでしょうか?

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「これ、そうですね、エレベーターの中ですね。ニューヨークのダウンタウンエリアのマンションに住んでたんですが、同じマンションにナオミ・キャンベルも住んでいるんだと。ある日エレベーターで出会って。で、そのときは知らなかったんですけど、だいたいエレベーターで1回だけじゃなくて何回も出会うってことは、生活時間帯が同じなんですね、きっとね。食事の時間とか、遊んで帰ってくる時間とか。だからよく会うのかなと思ってたんですが、このビルにナオミ・キャンベルいるんだ、おもしれえなって思っていて。で、【LA・LA・LA LOVE SONG】も番組から依頼をいただいて作ってた曲なんですが、その時に"女性の声を入れてほしい"と。デュエットしなくてもいいから女性の声を入れてほしいと。思い出した、あの時はね、"マービン・ゲイとダイアナ・ロスのデュエットみたいなもんでもいい"と。ちょっと古いなって思いながら、でも僕よりにソウル用語使ってくれたのかなみたいに思いながら、でもデュエットしたくないなって思って。うーん、ちょっと声を入れたいな、女の人の声をって思った時に、そうだ、ナオミだ。面白いかもしんないって。で、その1、2年くらい前にナオミ・キャンベルが、彼女は歌唄いじゃないんですけど、クインシー・ジョーンズのアルバムで、ナオミ・キャンベルがちょっとスキャットしてる、ちょっとセリフ言ってるっていうのがあったんですよ。そのイメージもあって、あのくらいの参加の仕方ってのはしてくれるのかなって。」

た思いついたのはいいんですが、その後どうやって、ナオミさんにアプローチしたのでしょうか?

「ナオミ・キャンベルの事務所...あの時の事務所っていうか、あいつ弁護士しかいなかったかな。向こうはそうなんですけど...にお話をしてもらって。でも返事がないなと思ったら、またエレベーターでもう1回会って。"あ、Toshi、あんたね、時々見る日本人、あんたね"って。"あんた私に曲頼んだでしょ。頼んだでしょ。やるわよ"っていう感じでノリで。たまたま上手く話もいったんですけども、覚えててくれて。」

そしてもう1曲、97年リリースのナンバー。<星の合図に 君が色づく>という歌詞が心に響く名曲、【Cymbals】についても 教えていただきました。

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「例えば【Cymbals】なんかで思い出すのは、絵を描きますね。全ての曲においてそういう作業をするわけじゃないんですが、例えば【Cymbals】なんていうのはよく覚えてるんですけど、一枚の紙に鉛筆で、窓、部屋の中にいる自分、それから窓から見える外の景色っていう、そんな簡単なスケッチ的な絵を描いて。で、具体的にイメージできるものは、ちょっと椅子も描いて、テーブルの端っこも描いて、窓の外側の星空も描いたかどうか、摩天楼を描いたか、ビルを描いたか。なんか、そんな絵を描いて、その絵を見ながら歌詞を作っていくことってあります。【Cymbals】なんかもそうですね。

2週にわたって、久保田利伸さんの言葉ご紹介してきましたが、最後に、今後のことを伺いました。久保田さんが、これからの活動につい思い描いているのは、どんなことなのでしょうか?

「まあね、40周年。40年を過ぎて、まだ曲が歌えるとか曲を出していけるって環境、これはありがたい。まずそれだけでありがたいんですが、だからここからはさらにさらにありがてえなぁと、感謝だなって気持ちが曲の中に乗っていくと思うんですよ。その中で、時代のこともあるんでしょうかね、人の心が結果あったまるみたいな、そういうものをどんどんどんどん作っていきたい、歌っていきたい。心の温度を上げていくような、そういうものを。アップテンポでもスローでも、そういうものを歌っていきたい、作っていきたいですね。」

久保田利伸