今回は、大阪の『ハタ鉱泉株式会社』が復活させたオールガラス製の瓶ラムネのHidden Story。

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取締役の秦尚久さん、そして広報ご担当の倉橋かおりさんにお話を伺いました。

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瓶の上の部分に、ビー玉で栓がしてあって、そのビー玉を瓶の中にポンっと落としてから飲む炭酸飲料【ラムネ】。

その歴史は、江戸時代末期にまで遡ります。アメリカからペリー提督が来航し、江戸幕府の役人にレモネードを振る舞ったのが始まりで、レモネードという言葉が変化してラムネになったと言われています。そんなラムネを昭和の時代から手がけてきたのが、大阪にある『ハタ鉱泉株式会社』です。

「1946年に私の祖父である秦晴一が大阪の都島区で、ラムネの製造業を始めたのがきっかけです。昭和20年代後半の時がピークだったと言われております。」

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昭和20年代の後半、ラムネの生産はピークを迎え、当時は、製造メーカーが2000社以上にものぼりました。しかしその後、外資系の飲料が入ってきて、自動販売機も登場。さらにペットボトルも生まれて、ラムネの需要は減少していきます。

基本的にラムネは牛乳瓶とかビール瓶と一緒で、回収を前提として販売しておりましたので、売れるエリアが限られていました。それを打破するため、1980年代にスーパーさんとかコンビニさんとかにも流通させるためには、もう回収はしていられないので、ワンウェイ瓶という飲み口がプラスチックのラムネを開発しました。それが主に流通し始めたので、一旦オールガラスの瓶はもうどこも作らなくなったという形です。

倉橋さん:1989年に国内でのオールガラス瓶の生産が最後になりまして、この後は台湾の方に生産委託してたんですけれども、それも1990年代になくなってしまって。弊社としては1995年にワンウェイ瓶に切り替わっていったということになりますので、それぐらいまでオールガラスのラムネというのは弊社では生産をしていたということになります。」

以前は、ラムネのガラス瓶は飲んだ後に回収されていました。その後、飲み口の部分をプラスチックにし、回収をおこなわないワンウェイ瓶が開発され、主流となっていきます。そして、ハタ鉱泉では1995年を最後に、オールガラス製の瓶ラムネは製造されなくなりました。

しかし、ここへきて、そのオールガラスのラムネが復活しました。これは、なぜ復活させようと考えたのでしょうか?

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「今のラムネはプラスチックの飲み口のものが主流にはなってきてるんですが、やはり飲み口もガラスですと、同じ中身でも得られる清涼感が全然違いますので。その清涼感を若い世代とか色んな世代の人に飲んでいただきたいと思いまして、そういう原点回帰というところもありました。また、実際、ここ直近ですね、瓶不足というのもありまして、他のラムネ以外のメーカーさんでもペットに切り替えたりとかしているこの昨今の状況の中で、瓶がないないというところで。あえて瓶だけのラムネを作るというところに付加価値を置いたという、その2点ですね。」

久々に製造に取り組んだオールガラス製の瓶ラムネ。製造に際して難しかったのは、どんなことだったのでしょうか?

「まず、瓶の安定生産ができるかどうかっていうところですね。それと、やはり普段のワンウェイ瓶とは形状が異なりますので、1から形を作ってくださいというところで、1から成形をしてもらったというところ、ミリ単位で微調整をしていったというような感じです。特に飲み口の部分、飲み口の内側は、ワンウェイ瓶はプラスチックなので、そこをガラスにするというところにおいては、もう数ミリ単位での微調整が必要だったというところです。」

今年5月、飲み口の部分もガラスで作られたラムネ[HATA PREMIUM]が販売開始。見た目も涼しいガラス瓶が 今再び人気となっています。そんな[HATA PREMIUM]、今後の展開としてはどんなことを考えているのでしょうか?

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「ただ飲むだけではなくて、やっぱりビー玉を落とす楽しみとか飲むだけじゃないそういう楽しみがあるので、心がワクワクしたりだとか、いつもと違う気分になるとか、その辺のところがラムネの魅力なのかなと思っておりまして。HATA PREMIUMに関していえば色んな味のフレーバー展開や、あとは中身もプレミアムにして、もう1個上のプレミアムを作るというところも今は考えております。ただラムネを飲むだけじゃなくて、お酒とのコラボとか、カクテルを作ったりとか、その辺のところを今バーテンダーさんを巻き込んで考えているところではございます。バーテンダーさんに聞くと、ただの炭酸水で割るカクテルもあるんですが、やはり甘みが欲しいので、バーでしたらそれ用のシロップ作って割ってるそうで、"ラムネやったらそのシロップ不要やから手っ取り早くてちょうどいい"というような感じなので、これは割り材としては可能性があるかなと思っております。お客さん自身でビー玉を落としていただくという楽しみもありますので。」

最後に、ラムネメーカーの一家で育った秦尚久さんに、子供の頃のラムネの思い出をうかがいました。

うちの今の社長である父が、よく家にラムネを持って帰ってきては飲むのが楽しみやったという。あと、工場も近いんで、喉乾いたら工場行って飲んでたみたいな感じでしたけど。もう家の近くに自社工場ありましたので、近所の小学生の溜まり場みたいになってましたけど。もう無料でラムネが飲めるんで。もう今はね、ちょっとそういうセキュリティの観点から、そんなことはできませんけど。いい時代でしたね、昔はね。ぱって入れてね、はい。」

オールガラス製の瓶ラムネ[HATA PREMIUM]はハタ鉱泉の公式ウェブサイトで販売されています。