今回は、累計2100万個も売れている、という大ヒット商品、【チーズデザート6P】の開発者。兵庫県神戸市に本社がある『六甲バター株式会社』、片山和子さんのHidden Story。

まずは、六甲バターとはどんな会社なのか。その歴史を教えていただきます。
「六甲バター株式会社は1948年に創業しまして、創業当初はマーガリンの製造を行っておりましたが、1958年よりプロセスチーズの製造を開始し、Q・B・Bというブランドでチーズ製品の日本全国への販売を行っております。1960年に日本で初めてスティックチーズを開発、1971年には日本で初めて個包装のスライスチーズの開発などを行いまして、現在は家庭用プロセスチーズ国内シェア、ナンバーワンを取らせていただいております。」
そんな六甲バターに、片山さんが入社しようと考えたのはどんな理由からだったのでしょうか?そして、入社試験の面接で、ちょっと大胆な行動に出たそうですが...。
「実は弊社で過去にベイクドチーズケーキという商品を販売しておりまして、わたし学生時代にこのチーズケーキに出会いまして、その味に衝撃を受けまして。このチーズケーキの作り方を学びたいなと思い、それがきっかけで入社試験を受けました。入社試験の時に、最終面接で"会社に入ってやりたいこと"というお題をいただいてプレゼンをしたんですけれども、その際にベイクドチーズケーキを作って焼いていきまして。こういうものが作りたいというところでアピールし、無事に入社することができました。ちょっと賭けではあったんですけれども、ちょうどその面接、私の順番が最後の方で、ちょうど面接官の皆さんのお腹が空いていたからというのもありまして。その後食べていただいたようなんですけれども、その後、運良く会社に入れたというところもあったのかなと思ってます。」
このアピールが功を奏し、片山さんは見事 入社決定!そして、開発部門に配属された片山さん。入社から4年、片山さんが提案した新商品が採用されます。その名は、【ニューヨークチーズケーキ63%】。
「この商品、63パーセントと商品名に入っているんですけれども。こちら、クリームチーズの配合率が商品中63パーセント入っているというものでして、バニラビーンズを散りばめたクリームチーズが63パーセントと濃いチーズケーキなんです。当時、チョコレートの商品で高カカオのチョコレートというものが流行り始めた頃でして、カカオの配合率のパーセントをうたった商品が出ていたんですけれど、たまたま当社の商品企画の担当のものが、クリームチーズでもこのようなパーセントをうたったクリームチーズ高配合のチーズケーキを作れないかというようなヒントをいただいたのがきっかけではあったんですけれども、自分の中で、チーズの量を多く入れるだけではなくて、クリームチーズの魅力をしっかり表現した、ちょっと個性のあるようなものを作りたいという思いでこちらを提案しました。」
【ニューヨークチーズケーキ 63%】は評判も上々。しかし、商品化から半年。衝撃の出来事が起こります。六甲バターが、デザート部門の廃止を決定したのです。
「それまで4年間積み上げてやってきたことが、デザートの商品がなくなるということで、なかなか活かせる場がなくなってしまって落ち込みました。実は転職を考えたりもしてたんですけれども、落ち込んでいる私を見て、当時の工場長がデザートの"仕事を続けたいんだったら、しっかり売れるものを作りなさい"と言ってくださって。ただ、"新しく設備を買うことは難しいけど、今ある機械で作るのであればいいよ"と。その言葉がきっかけで持ち直すことができて、今できることをやろうと思えるようになりました。その後、与えられたテーマをやりながら、こっそりデザートも作ってまして。それをゆくゆくチーズデザートという商品に繋げることができました。」
片山さんは、こっそりチーズを使ったデザートの研究をスタート。これがのちに正式に認められ、開発へ向けての試行錯誤が始まりました。 ただ、使うことができるのは、デザート専門の機械ではなく、チーズを作るための機械でした。
「プロセスチーズの6Pの機械は、まさにプロセスチーズ用に調整された機械ですので素材が柔らかすぎると蓋をする時にチーズの生地がはみ出して、綺麗に包装できないというところがネックでしたので、そこが難しかったところでした。素材を熱々の状態で型に流し込んで包む時に柔らかすぎると、アルミを包んで蓋をする時にはみ出してしまうというところがあります。ある程度の固さをつけて仕上げないといけないんですけれども、固すぎると口どけが悪くなって味が落ちてしまうので、その固さ、ギリギリ製造がしっかりできて、味も担保できるようなギリギリの固さを狙っていくのに苦労しました。配合を約110種類試しまして、その中の厳選した30種類を製造ラインでテストしまして、ベストな配合を作り上げることができました。」
片山さん曰く、110種類の配合から まず30種類の配合を選び、それを一つ一つアナログに試し、がむしゃらにトライした結果、商品が完成しました!ということ。2009年9月、【チーズデザート6P】がついに発売されました。現在は、定番商品が4種類、季節の商品5種類が販売されています。
【チーズデザート6P】の開発者、片山和子さんに最後に伺いました。今後のヴィジョンを教えてください。
「今後のヴィジョンなんですけれども、高い目標ではあるんですけれども、国内認知度100パーセントを目指していきたいなと考えています。現状、形がチーズの包装形態ですので、チーズ売り場での展開がメインでして。これまで営業の者の努力もあって、お客様にご支持をいただけたことで、販売は伸びてはきているんですけれども、なかなかチーズ売り場に立ち寄らなければ手に取っていただけないような商品になっているのがちょっと悩みでして。このチーズデザート6Pの商品が目指している、おいさしとヘルシーさを兼ね備えている、というようなスイーツは、チーズ好きのお客様だけではなくて、スイーツ好きのお客様にも喜んでいただけるかなと考えておりまして。
今後はチーズ売り場の枠を超えて他のデザート売り場などにも展開して、もっと多くのお客様に知っていただいて楽しんでいただきたいなと考えています。」